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品質管理の玉手箱(12)

現場力

 “現場力”という言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃると思いますが、この言葉が注目され始めた契機となったのは、2004年2月に東洋経済新報社から出版された“現場力を鍛える-「強い現場」をつくる7つの条件”と言うタイトルの一冊のビジネス書でした。

 当時、日本は「失われた10年」と呼ばれる長期経済停滞期の真っ只中にあり、抜本的な社会経済構造の再編成が求められる中、生き残りのために目先のことだけに専念することを強いられた多くの企業では、戦後復興期から高度経済成長期にかけて培ってきた世界に誇る“現場力”を著しく低下させる事態に陥っていました。そんな時代に出版された前著の中で、著者の遠藤勇氏は、“現場力”の高い企業を

「現場のみんなが当事者意識を持つ
「現場のみんなが考える
「現場のみんなが情報を共有する
「現場のみんなが意見をぶつけ合う
「現場のみんなが汗をかく
「現場のみんなが努力を続ける
 こうした一見「当たり前のことを当たり前にやっている」企業…

 であると、非常に分かり易い言葉で説明しています。

 その上で、当時相次いで発生していた企業の不祥事や重大事故(雪印乳業の食中毒事件、日本ハムの牛肉偽装事件、ブリジストンのタイヤ工場火災など)を、「思考停止状態=物事を深く考えなくなってしまった現場」の典型的な症例と指摘し、「”現場力”こそが日本経済再興の鍵」と訴えましたが、あれから20年が経過した現在でも、マスコミはあいも変わらず企業の不祥事を報道し続け、企業のお偉方はカメラの前で頭を下げ続け、情報ネットワーク技術のさらなる進化と社会的責任に対する意識の向上などを背景として、状況はますます悪化する一方で、もはや、日本の産業界から”現場力”は見る影も無くなってしまっています。

 これは、近年の日本社会を取り巻く様々な要因が重なりあった結果ではありますが、そうした要因の中でも最も大きな要因は、遠藤氏が"現場力"の高い企業の要件の第一に掲げた「当事者意識の低下、欠落」と言って良いでしょう。

 では、”当事者意識”とは何を指すのでしょうか?


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