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品質管理の玉手箱(2)

TQCのはじまり

 突然「日本型TQCとTQMは異なるものだ!」などと言われても、そもそも、「TQCって何?」と言う方も決して少なくないのが現状だと思います。

 なぜなら、ISO 9001規格の2000年改定で"TQM(Total Quality Management)"と言う用語が国際標準として公認されたことで、我が国でも、「TQCをTQMに置き換える」活動が積極的に進められたことで、今や、"TQC"は過去の用語となりつつあるからです。

 しかし、"TQC"が、日本の戦後復興と高度経済成長の支えとなり、世界一と絶賛される日本品質(Japan Quality)を作り上げたことは紛れもない歴史的事実であり、安易に世の中の潮流に乗って「過去のもの」として忘れ去って良いものではありません。
 そこで、ここからは、かつて頑丈な屋台骨として「品質大国ニッポン」を支え続けた"TQC"について、おさらいしてみたいと思います。

 "TQC"の歴史を遡ると、当時米国GE(General Electric)社で品質管理部長だったA.V.ファイゲンバウム博士が1961年に発表した「Total Quality Control」が、"TQC"の始まりと言われています。

 もっとも、この著書の中では、直接的に”TQC”と言う用語(略語)は使われていませんが、この中でファイゲンバウム博士が提唱した"Total Quality Control(総合的品質管理)の概念"は次のようなものでした。

 「完全に顧客に十分満足してもらい、かつ、最も経済的に品質水準の製品を生産し販売していくために、組織の各部門が行う品質の開発、維持、向上に関する努力を1つにまとめる効果的システム」

  ここで注目すべきは、最後の「1つにまとめる効果的システム」の一文です。

 つまり、"TQC"とは「個々の品質管理活動を統合し管理(Management)する仕組み」であるとしている点で、これは正に、現在の"TQM(Total Quality Management)"の概念に通ずるもので、その視点から見れば「"TQC"と"TQM"は同じもの」といえなくもありません。

 しかし、重要なのは、日本では、この当初の概念とは異なる概念で"TQC"を発展させ運用してきたからこそ、世界的成功を収めることができたと言うことです。

 日本の産業界が、当初の概念通り「管理(Management)のツール」としてのみ"TQC"を運用していたとすれば、おそらく、日本経済の驚異的発展はなかったか、あるいは、大幅に遅れていたことでしょう。

 では、当初の"TQC"と日本の"TQC"は、何が違っていたのでしょうか?

  次回は、日本における"TQC"の歴史と、その特徴について眺めてみましょう。

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