ネゴトワ・ネティエ

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日本が半導体復権に拘らなくてはならない理由

なぜ最先端を目指すのか 世界的な半導体製造請負のTSMC熊本進出や北海道に先端半導体生産を目指すラピダス設立など何かと「半導体」が意識される昨今ですが、なぜそこまでするのかとの疑問も聞かれるようになりました。 日本の半導体産業はトランジスタラジオの成功に始まり電卓競争などを経て1990年代にかけて半導体世界シェアの中で大きな存在感を持ち「電子立国」を自認していた時代もありましたが日米半導体協定や円高誘導政策、水平分業化と激しい国際競争にさらされると次第に競争力を失い、今

    • 日米半導体摩擦の背景

      以前に日米半導体協定とその影響という記事で日米半導体協定についておおまかに解説しました。 しかし自由貿易主義を標榜するアメリカがいかにして保護主義的な協定を推し進め、また日本側がどう対応したのかについてはあやふやでした。 米中半導体戦争と言われる昨今、次のアメリカ大統領選の結果次第では大きく流れが変わるかもしれない節目に際し、今回改めて日米半導体協定の状況を掘り下げた資料を元に、当時の流れを振り返ってみたいと思います。 ・アメリカの半導体産業の特徴 半導体発祥の地、アメ

      • 反知性主義とは

        「反知性主義」という言葉に出くわすことがあります。 「論理的に思考する知性を否定して直感を優先し、勉強を怠る事を正当化する」活動と思われがちですが、元々は知識を独占し王侯貴族に取り入って特権階級に居座る司祭などから権力を奪い取ろうという権力闘争だったといわれています。 現代においてはSNSの普及で様々な考えに接することができるようになった反面、同じような傾向がお勧めされてくる機能によって接する情報・知識が偏ることが容易に起きるようになりました。 陰謀論者や「インフルエン

        • 中国経済の特徴

          奔放財政により破綻すると言われて久しい中国の経済状況ですが、その度に幾度も危機を乗り越えて来ています。 日本では習近平主席が学生時代に地方に「下放」され毛沢東語録しか学んでいない低学歴とまことしやかに言われ、そんな経済も分からないくせに強権を発動して弄り回しているからもう経済政策に失敗し崩壊は時間の問題と見られがちですが各分野の「指導小組」が補佐しており経済問題についても経済ブレーンが示唆を与えていると言われています。 中国経済とはどのようになっているのかは統計データの期

        日本が半導体復権に拘らなくてはならない理由

          誰とでも話す事は可能か?

          「ネット社会」においては会話で意思疎通ができない事が恒常的になって来ました。 これはネット特有の匿名性によるところが大きいとされており、ネット利用を実名登録制にして実名顔出しにすれば抑制されるのではないかとされています。 しかしどう影響するか不明な上、委縮してネット利用者自体が減少し言論空間としては今よりも制限されたものになるという研究もあります。 そもそも制裁を恐れて表現しなくなるだけでは本心を隠しているだけに過ぎず、また多様な考えに接っする気付きの機会も失われてしまうで

          誰とでも話す事は可能か?

          スパイチップとは

          SNS上で台湾半導体製造TSMCが米軍の戦闘機で使う半導体の製造を請け負いスパイチップを仕込んで、それが原因で墜落事故を起こしているという言説を見かけました。 半導体の製造自体が高度に複雑で外部に公開されないノウハウの集合であり「良く分からない」のでこのような誤解も広まるのだと思います。 1993年に公開された劇場版アニメ映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」では自衛隊の指揮通信システムがハッキングされ制御を失った戦闘機が東京に迫る中、当該機に対する撃墜命令

          AIブームは「バブル」か?

          アメリカの株式市場ではS&P500やNASDAQ、ダウ平均などが史上最高値を更新し、日本でも日経平均株価がバブル崩壊後の史上最高値を更新して史上初の4万円台をつけ話題になりました。 その原動力となっているのは「生成AIブーム」からなるテック系、中でも高性能データセンターに必要不可欠なNVIDIAやSupermicroなどの半導体関連銘柄の急騰によるところが大きく、あまりに短期間での急成長に株高のブーム到来と歓迎すると同時にそろそろ「天井」を迎えるのでは?とラリーを薄氷を踏む

          AIブームは「バブル」か?

          X(旧Twitter)のコミュニティノートに参加して思った事

          先月よりX(旧Twitter)のコミュニティノートへの参加申請が承認されたのでコミュニティノートの活動を始めました。 コミュニティノートとはX社が運用しているSNSのアカウント保有者のうち、参加資格を得た有志が日々投稿されるポストについて誤解を招く表現や誤情報に匿名で追加情報を付与する活動を指します。 それ以前からポスト(以前はツイートと呼称)に返信や引用を使って指摘することは可能でしたが、ブロック機能によって表示されなくなることから、インフルエンサーによる囲い込みが進み

          X(旧Twitter)のコミュニティノートに参加して思った事

          SNSでデマ、フェイクニュースが広まる仕組み

          今年は年明け早々に令和6年能登半島地震、翌2日に羽田空港でJAL機と海保機の衝突事故と大きな出来事が相次ぎました。 被害を被った方々に想いを馳せる一方、対応に奔走している人達を差し置いて「何故◯◯をやらないんだ」「政府の対応は遅すぎる」といった怒りの声がSNSを中心に巻き起こり、担当所轄の責任者や岸田首相が説明に追われるというシーンが連日報じられ、国も噂に惑わされないようにと正しい情報の取り扱いを呼び掛けるに至りました。 政府への批判や疑問にはもっともなものもありましたが

          SNSでデマ、フェイクニュースが広まる仕組み

          Kirin9006Cの考察

          2023年、Huaweiの新型スマホMate 60 ProにSMICの7nmチップが搭載されアメリカの制裁下でどうやって実現したのか様々な憶測を呼びました。 その直後くらいから「次は5nm」と実しやかにささやかれていましたが12月にHuaweiはQingyun L540ノートブックを発売し、そのプロセッサが5nm Kirin 9006Cと報じられ、中国半導体産業が7nmに次いで5nmも遂に技術を確立したかと騒然としました。 過去には台湾のTSMCも2018年頃、DUVリソ

          台湾アイデンティティとは

          2024年1月13日に台湾総統選挙が実施されます。 安全保障や親日的な国民性で語られることが多い台湾ですが、ときより中国側への機密漏洩などの不祥事も取りざたされ、親日・親米のイメージとのかい離に困惑させられる事もあります。 日本の台湾統治時代に台湾の治水事業に生涯をささげた日本人技師八田與一を顕彰する銅像を国民党の弾圧から隠し続けた村人の話が日台友好の美談として伝わるかと思えば、その銅像を破壊した事をSNSで喧伝した活動家の存在など、日本としての台湾とのかつての関りも複雑

          台湾アイデンティティとは

          経産省 半導体・デジタル産業戦略の現状と今後(R5.11.29)の雑感

          2023年11月29日に開催された第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議の開催資料が公開されています。 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0010/0010.html 「資料3」は189頁もあるので要旨のみ書き出してみました。 以降はそれぞれの項目の詳細な現況報告や分析、今後の方針が続きます。 どの産業分野においても国際競争が激化する中で、

          経産省 半導体・デジタル産業戦略の現状と今後(R5.11.29)の雑感

          計算機の変遷

          今日、照明のスイッチリモコンや手放せないスマホ、自動車やインフラの制御を司る制御装置に至るまで情報処理装置なしには私たちの生活は成り立ちません。 人はどのようにして情報を処理する計算機を道具化してきたのでしょうか。 古の計算道具 人類が数や計算という抽象概念を獲得した経緯は記録がない時代に遡り推測するしかありませんが、猟果を公平に分配する必要があったり、家畜の管理上必要であったり、定住農業を発展させると暦の関係から指折り数えていた規模を越えるあたりから10進数が発達し、

          TSMC創業者 モリス・チャン

          世界的な半導体不足から何かと注目を集めるようになった半導体産業。 他社ブランド製品の製造だけを請け負う台湾のTSMCはそれまでは縁の下の力持ち的存在で一部の人に知られる程度でしたが、Appleの最新型iPhoneのプロセッサ製造を手掛ける同社の急成長ぶりや日本の熊本に進出するなど国内でも脚光を浴びるようになりました。 台湾の人から「護国神山」とまで言われる世界有数の大企業TSMCを築いたモリス・チャンとはどのような人物なのでしょうか。 それまで戒厳令解除後の報道規制撤廃後に

          TSMC創業者 モリス・チャン

          Huawei Kirin9000s噂のアップデート

          Huaweiが中国製を謳うKirin9000sチップを使用しているとされる5G世代スマホMate60Proに続き、MatePad Pro 13.2"という同社フラッグシップ級タブレットの製品発表があり、中華圏では期待が高まっているようです。 Huawei、580gの世界最薄最軽量タブレット「MatePad Pro 13.2」 プロセッサについての言及は無かったとの事で、やはりアメリカの先端半導体輸出規制を意識しているものと思われます。 Kirin9000sチップについて

          Huawei Kirin9000s噂のアップデート

          中華5Gスマホ Kirin9000sの謎

          9月初旬、中国の通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ、Huawei)の新型スマートフォン「Mate 60 Pro」に5G通信を可能にする7nmの半導体チップが使われていると報じられ各方面が騒然としました。 日本はアメリカの輸出管理規制に従い7月に中国に課している輸出管理の規制対象に新たに23品目を加えたばかりでしたが、中国がどうやってこの新世代の半導体チップを製品化することが出来たのかと憶測を呼びました。 アメリカの半導体対中輸出規制 アメリカはオバマ政権後期から対決

          中華5Gスマホ Kirin9000sの謎