DXファームとかいうギャグ:45才で転職した時のこと
DXファーム(苦笑)とかいうものに巻き込まれた身として「よくよく気を付けてね」とだけ言おうとしたら、思いのほか長文になってしまった。
僕は好んでDXファームとやらに行ったのではない。いわゆるIT商社(ITベンダとは呼べない)のコンサル子会社でデータサイエンティストなりデータサイエンスまわりのコンサルをしていたのが、組織改編で部門ごと移ったのだ。その「変革創出企業」を自称するDXファームとやらで頑張ってみたものの、部門の人員の約2/3が流出する組織崩壊に耐えられず僕自身も2年弱で転職した。
今頃に書いたのは、もう少し頑張ると残った中堅も、デザイン系のキーマンも退職したと聞き「あぁ本当に終わったんだな」と感慨に耽るGW、繁忙が常であった昔の癖で休みを余らせていたから。
一言で言えば、そのDXファームにはダイバーシティがなかった。いや彼らの名誉もあるので正確に言う。属性のダイバーシティの取り組みは始まっていた。IT商社から経営を任された戦略コンサルタント様方と管理部門は女性役員を採用してD&Iの外部アピールに余念がなかった。
但しDX人材の職務・役割に関する多様性は配慮されなかった。DXを実現するために集められていたデザイナー、データサイエンティスト、システムアーキテクト、セキュリティ系などなどを全て同質な「コンサルタント」とする仕組みはDX人材の活躍を妨げた。いや、これも正確に言う。コンサルタント様だけが価値を訴求できる人材とされ、DX人材は下級社員扱い、それを避けるため「コンサルタント」でいると無用な作業に忙殺された。
全社スキル管理で「『戦略コンサル』として○○できるか」と問うたり、one of themでしかないBIツールを扱えるだけで「優れたデータサイエンティスト」と宣うコンサル部門だけが優遇されたり、一方でDX人材の評価制度が雑だったり、そのガラスの天井があからさまだったり(そのためDX人材もコンサルタントでいないと人事評価上不利だったのが前述の背景)。プロジェクトへの人員アサインのルールやマネジメントも、同質の人材やプロジェクトばかりなら効率的だったかもだが、実態は現場の自由度を奪う管理コストばかり。単純に運用というか担当HRマネージャが低レベル過ぎて全社から忌嫌われてたのもあるが、経営陣の戦略コンサルタント様方はそもそも人材・スキルの多様性について理解できてないww。
加えて管理のために多種導入した社内ITツールがエラーばかりでまともに動かない。人事ルールは何の説明もないまましれっと現場に悪い方に変更され、質問に対する回答も意味不明などなど思い出せるものだけでも酷いもの、転職手続きで現職の人事・管理系の真っ当さには感動したものだ(もちろん完璧ではないが、現職の方が良いと確信を持って言える1つ)。
これでは経営側からも運用側からも変革されることは期待できない。そのDXファームにおける優先順位、いや、コアコンピテンシーや事業そのものを戦略コンサルタント様方は理解していなかったのか。それでも今もなお彼らは、人を起点に変革を発想、価値を創出などと意味不明な供述を繰り返しており、流石に愛想が尽きたのだった。
恐らく会社・事業、ビジネスを作るロードマップか、その前提のビジネスモデルがおかしかったのだろう。戦略コンサルタント様方の能力なぞそんなものなのかもww
合意形成のほどはともかく、戦略コンサルタント様方は、自分が経験してきた大規模戦略コンサル案件のような規模・金額の案件が、目視で概要まで確認できる程度の件数ある状態を想定していたのだろう。そうでないと当時の制度や仕組みの酷さは説明つかない。
だが実態は、その制度や仕組みが足枷にしかならないほど、規模の大小や内容の多様さ、様々な案件が多数ある状況。それはそうだ。例えばデータ利活用の分野で言えば、社内に蓄積されるデータが業務に活かせるかわからないトライアル段階で大規模戦略コンサル案件並みのフィーを払う客は少数だ。仮に客のCXOなり役員にアプローチしていても、最初から大きく獲れるのはレアケースだ(僕自身、前職の客の1つは調達担当役員がカウンターでPoC/トライアルとしては十分な金額だったが、DXファーム内では不評…)。
リーンスタートアップ、顧客のDX活動を小さく始めて大きく育てる、それに寄り添う中で客にとって不可欠な存在になるオプションはとれなかった。これも正しく言えば、リスクをとろうとしたDX人材やコンサルタント、チームはいたが、想定通りの商談が少ないと戦略コンサルタント様方や管理部門による締め付けと作業負荷に疲れ果て、取り組みを止めたか、ファームを辞めたか、その両方(キーマンか辞めて活動が消え、顧客も離反。僕もそのうちの1人)。
真っ当にDXコンサルしてるファームの多くは、デジタル部隊を別会社にするなどDX人材を別制度で柔軟に動けるようにしたり、むしろデジタル部隊を軸に組織を編成したりしている。そうした外部事例が既にあるにも関わらず、ロードマップやビジネスモデルを考える前提のas-isやto-beを考えない、想像力や傾聴力、調査力に乏しい戦略コンサルタント様方のDX提案など推して知るべしだ。実際に未だに黒字化できてないし、見切られたのか親会社側にコンサル部門ができちゃったりww
仮に自社のas-isやto-beを適切に把握していたなら、as-isからto-beに一足飛びで進まないことはわかるはずで、to-beに至るまでのロードマップをコンサルタントなら当然に設計するはず。そして各ステップに応じて制度やITを徐々に構築・導入していくはず。
しかし戦略コンサルタント様方のフワフワな想定を実現するための制度やITだけ作って、強制的に現状に当てはめるから現場の負荷が大きく、管理を効率化するルールで現場はがんじがらめになっていた。そもそもas-isもto-beも理解してなかったのだろう。ロードマップもビジネスモデルも存在したか怪しい、そもそも見たこともない。
外コンでエラい人たちだったらしいが、それは戦略コンサルとして致命的ww(世の中で俗に言われる使えないコンサルが何を指すか身にしみてわかった_| ̄|○)。
結局彼らは単にブームでDXを担ぎつつ、自分たちに心地よい居場所となりうるフツーのコンサルファームを作りたかったのだろう。だから社内のDX人材が大量脱走し、未だ赤字経営のままでも平然としてられるww
もしかしたら、戦略コンサルタント様方や管理部門も被害者かもしれない。IT商社あがりでしかないコンサル子会社の役員が、シンクタンク系とIT系、戦略系のファームの違いも理解できないまま、IT商社の経営陣との仲良しこよしだけで低能な「びじねす判断」をした話も聞こえていた。彼はそれを手柄に関連子会社社長を歴任、良いご身分だ。ずっとIT商社の中にだけいた、他の組織を机上ですら知らない輩が改革だのイノベーションだのDXだのと議論してできた組織という時点で無理があったのか。
僕の本懐はデータサイエンティストであり、新卒入社時は研究開発部門の研究員だった。データサイエンスが、またその人材・組織がビジネスで活かされることを今でも目指している。
データサイエンスやその人材・組織を理解し、それなりの年次・役職の自分が、コンサルタントなりプロマネとして振る舞うべきという責務は自認していた。サービスを企画・開発し、発信し、提案~実施することには遣り甲斐も感じていた。
ただ、そうした分野、人材・部隊、役割が認められない、情報発信もサービス企画・開発も強い制約を受ける中で、個人の努力と根性だけでは限界がある自称DXファームで、明らかにデータ利活用を理解できてない無能コンサルのDX提案(笑)の尻拭いに疲弊していくばかりだった。
まして、データサイエンティストとITコンサルタントの違いすら理解できないオツムの弱い輩に、コンサルタントとしてのスキルだの覚悟だの役割だのとぬかされるのは思い出しても反吐が出る♪
DX・データサイエンスを、そうした人材・部隊が活きる場所をと頑張ってきたつもりだった。それがふと後ろを振り返ると、守るべきDX人材もデータサイエンティストも皆んな逃げ出していて、外コンで通用しなかった三流コンサルか、真っ当なSEになれなかったのをITコンサルと誤魔化してる輩ばかりと気づいた時、僕は自分の中にある譲れないものに気づかされた。頑張って数年いれば給料が1.3~1.5倍にはなっただろうが、自分の志を捨て、頭数合わせ採用の勘違いコンサルの尻拭いに残り人生を使いたくなかった。
以前のコンサル子会社でデータサイエンティストの立場を確立するまでもいろいろあった。ビッグデータブームが来るまでは社内でも十分な理解は得られず、評価も低く抑えられていた。 自分のために世界がある訳ではないので100%満たされた状況を望みはしないけど、ゼロどころかマイナスから諸々もう一度作り直すことに残る会社員人生のほぼ全てかけるなど絶望しかない。いや、そもそも理解できない人たちに低評価をされて居場所が無くなっているシナリオの方が現実的か。
若い時はデータサイエンスへの理解が乏しい場所が大半だったけど、今は絶望よりマシな場所は幾つもある。現職から声がかかったとき、45歳という一般に転職困難と言われる年齢にも関わらず、そのDXファームもどきに残る理由を全く思い付かなかったことを今でも鮮明に覚えてる。現職も課題はあるけど、前よりマシだから頑張れる。
今はDXコンサルを標榜するファームが少なからず出現している。今のファームで行き詰まりを感じてるコンサルタントが選択肢として考えるのだろうが、そのDXファームのビジネスモデルと要員・スキルの構成が整合しているかはよく見た方が良い。また、その要員がスキルを発揮できる環境か、DXファームは概して発展途上な企業なのだけど、それならas-isやto-beの認識、ロードマップの有無など確認することをお勧めする。as-isなど入社しないとわからない情報もあるが、入社後に聞いた話と違うぞと脳内ですぐ警報が鳴るメリットは大きい。
加えて経営陣が外コン出身でDXを抽象論・観念論で語ってたら警戒しよう。
戦略コンサル出身だからといって、会社をうまく経営できる訳ではない(良く言って傍目八目の助言と自ら経営することの違い、大半は下記)。
外コンのコンサルタントが全員すごいのではない、外コンの看板でうまいことやれただけのやつも相当数いる(特に外コンのマネージャー以下は単なるパワポワーカーと思うべし)。
外資企業ならすごい訳じゃない、すごい外資企業が残ってるだけ(=生存バイアス)。
日本企業はDXを実現すべきという総論、そのために尽力したい志は同意する。自身を成長させるプランやプロセス、ゴール設定も尊重する。僕も今でもそうだから。
但し僕の好きなfootballerの1人は、そうしたプロ意識の第1条にこう述べている、「従うべき人を選べ」と。
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