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トルコ中央銀行の利下げ、その後に起こること
12/26はトルコ中央銀行による政策金利発表の日です。これまで、noteでトルコ経済の基礎認識を執筆してきた私ですが、トルコ経済が再び、混迷する入口に差し掛かっている、その理由を説明したいと思います。
政策金利を50%に上げた後、トルコ経済にはこんな症状が見られます。
・インフレ率が徐々に低下し、直近は47.09%、実質金利が2.91%ものプラス状態で、かなりの金融引き締め的。
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・第1四半期に5.7%だったGDP成長率が、第2四半期から低下し、第3四半期は2.1%まで急落。GDP潜在成長率と考えられている3.0%をも2四半期連続で下回っており、経済は急速に悪化中。
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・失業率が8.5%で底打ちした後、微妙に悪化中。先行して名目賃金上昇率は115.4%から74.7%へと急落中。
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で、恐らくですが、12/26に最低でも5%の利下げを行ってくるでしょう。問題はこの後です。経済の急回復が見込める材料が見当たらない中、インフレ率が(1)下がり続けるか、(2)下げ止まるか、(3)反発するか。
この(1)から(3)までのうち、最悪のシナリオが(3)です。順に説明していきます。
まず(1)から。
景気が後退していますので、一般的には、政策金利を下げた後もインフレ率が下がる可能性は十分にあります。
しかし、トルコ経済の場合、そうはならないでしょう。なぜなら、経常収支が黒字になろうとも、実質金利がプラスになろうとも、安くなり続けてきた通貨トルコリラです。リラ高要因があっても安くなり続けるのは、トルコのファンダメンタルズが総合的に悪いためです。今後も続くこの基調は、インフレ率の押し上げ要因、そして、最低賃金アップ率50%の政策もインフレ率を押し上げる要因です。だから、(1)が発生する可能性は低いと考えられます。
次に(2)。
(1)よりも(2)の可能性の方が高いでしょう。理由は(1)で説明したとおり、インフレ率の押し上げ要因が粘着質だからです。
最後に(3)。
一番可能性が高いのはコレ、いわゆるスタグフレーションです。インフレのクセがキツ過ぎるトルコ経済です。景気下落もなんのその、通貨の価値下落が政策金利の下げによって加速することにより、インフレ率が再び上昇する可能性があると考えられます。
ということで、もしかすると、政策金利を50%に上げた時よりも、トルコ経済の状態は悪くなり、通貨の下落スピードが速まり、トルコのレーティングにも再度、下押し圧力が掛かってくる可能性があります。
こうした事態を招いたときのために、外貨やゴールドをせっせと貯めこんできたトルコ政府ですが、その切り崩しを余儀なくされていくと、更に通貨の下落スピードが増す、ということも考えられます。
現在、ドル円は円安が再燃し、来年にかけてもそのトレンドが続くでしょうから、リラ円が4円を割る場面がすぐにくるとは考えにくい。ですが、ドルリラが40リラ/ドル(現在よりも1割減価)、ドル円が160円/ドルとなった場合には、リラ円の理論値は4円となります。これまでのリラの減価スピードを考えると、半年後にはそんな状況になっている可能性も考えられます。
ということで、スワップポイント狙いでリラ円ロングを保有している皆様、難しい分かれ道の入り口、それが12/26の政策金利下げです。