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Episode 1 シマリスのマリとエゾリスのゾリス

「ゾリス!また私のドングリを食べたわね!」

「マリ、少しくらいなら、いいだろ」

「いつも私が埋めるのを見ているんでしよ!」

「見てないよ!」

「うそ!」

シマリスのマリと、エゾリスのゾリスが、また揉めている。

似たもの同士のせいか、互いに譲らず、なかなか決着がつかない。

二匹は、ほぼ同時に叫ぶ。

「しまぁっちいー!」

まどろみを掻き消す大きな声。

しまっちは、たまらず目を覚ます(昼間は勘弁してほしいなぁ…)

そう呟きながらも、半開きの眼で二羽のもとへ飛ぶ。

「子リスちゃんたち、今日は、何の事で揉めているんだい?」

だれが見ても眠そうな顔のまま訊ねる。

「聞いて聞いて しまっち!」

マリが口火を切る。

「どうしたの?マリ」

「あのね、ゾリスったら私が埋めたドングリを片っ端から掘り出して食べちゃうのよ」

マリの話に被せるような勢いでゾリスも声を張上げる。

「マリのケチンボ!100個も埋めたくせに!」

「やっぱり見てたのね、ゾリス!一体、何個たべたのよ!」

「もう食べないよ。だってお腹いっぱいだもの」

「悔しい!返して私のドングリ!」

「しまっち。悪いのはゾリスでしょ」

「そうかな…」

「そうでしょ。だって全部私のドングリだもの!」

「マリ…ドングリは誰のものでもないよ」

「違うもん!私のだもの」

「…マリは埋めたドングリの場所を全部覚えてるかい?」

「えっと…それは無理」

「忘れたドングリは、どうなると思う」

「わかんない」

「芽を出して、長い時間かけて大きな木になるんだ」

「木になって、どうなるの」

「たくさんドングリの実をつけるのさ」

「じゃあ、埋めたとこ、いっぱい忘れたら、いっぱいドングリできるの?」

「あはは。そんなことはないけどね」

「ところでマリは、なぜドングリを埋めるの? 越冬の蓄えじゃないの?」

「ううん。冬はほとんど寝てるし、そんなに沢山は食べないもん。埋めるのが楽しいから」

「ゾリスはどうしてマリが埋めたドングリばかりを食べるの?」

「掘り出すのが楽しいからさ。それに、マリが怒るのも面白いし」

「そいつは困ったもんだな」

「じゃあ、マリが埋めるドングリは、ゾリスが集めておいで。マリはそれを好きなだけ埋めるとよいよ」

「やだっ!」二羽は同時に声をあげた。

もう、しまっちはお手上げだ。

「マリ、ゾリス…君たちのドングリのことで、ボクに出来ることは何もないよ」

「争いごとを解決する方法は自分たちで考えるんだ」

この面倒な子どもたちは、また同時に叫んだ。

「しまっちのケチンボー‼️」

やれやれ ……仲の良い連中だ。……ボクは昼寝のつづきをするよ。

しまっちはそう呟きながら、低空飛行で森の中へと帰っていった。

                      おしまい。

                                      

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