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026)20年間ワークアウトを続けている僕が続かないダイエットはなぜそうなるのかを考えてみる

ひとことで言うと、野菜や果物が健康的な食物かどうかは、肥料や農薬でなく土壌の質による、という話。

有機農法による農産物は、食べた人の健康に資すると考えられていて、確かにそうではあるけれども、有機(化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない)なら何でも健康的な食物になるかといえば、そうでもないということらしい。

 夏になると農産物直売所やスーパーマーケットには季節の野菜や果物が並ぶが、有機(オーガニック)農産物の値段の高さには驚かされる。そして、有機農産物なら一般的な野菜や果物(慣行農産物)より栄養豊富なのだろうか、という疑問が浮かぶ。その答えは、ひと言でいえば「イエス」だが、詳細な答えは意外に複雑だ。

 実は、米国農務省(USDA)の有機食品に関する規定は、その作物を食べて得られる健康上のメリットを重視しているわけではない(編注:日本も同様)。重要なのは有機農産物の栽培方法で、主として堆肥や家畜の糞を使用して土壌を保護し、化学的に合成された物質は使用しないことになっている(ただし、自然な方法で害虫を抑えられない場合は農薬の使用も認められる)。

 一方で、消費者が有機農産物を購入する主な動機は、有機農産物は健康的という概念だ。そこで、その真偽を見極めることが重要だと、科学者のジュリア・ボードリー氏は話す。ボードリー氏は、フランスの独立機関である国立農業・食品・環境研究所でこの問題を研究してきた。

 こうした研究の結果は、数十年間にわたって混乱をもたらしてきた。特に初期の研究では、有機農産物と慣行農産物との間に栄養の差はほとんど確認できないとされた。一方で、有機農産物の方がはるかに優れているという説もあった。米ワシントン大学の土壌科学者、デビッド・モンゴメリー氏によれば、この差はおそらく有機農法の多様性などを反映しているのと、評価する栄養素の違いが特に大きいという。「実際に研究者が測定し比較した対象が異なっているのです」(参考記事:「有機野菜はやはり「おいしくて健康的」、英米の研究で」

 モンゴメリー氏が分析した結果、健康な土壌で栽培された有機農産物は慣行農産物よりも農薬の残留量が少なく、抗酸化物質に富むフラボノイドやカロテノイドなどのファイトケミカル(植物中の化学物質)が豊富であるという結論に達した。

「その差を懸念すべきかどうかという議論はあるでしょうが、作物の残留農薬はゼロがベストで、ファイトケミカルは多い方がベストだと私は考えています」とモンゴメリー氏は言う。

 もちろん、どんな果物や野菜にもメリットはある。十分な量を摂取すれば心臓の状態を保ったりがんの発病リスクを減らしたりとさまざまな点で効果があるとされてきた。しかしながら、平均的な米国人の場合、野菜は1日の摂取推奨量の10%、果物は12%しか食べていないのが現状だ。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/060900290/?P=1

まず一般的なイメージとして、有機農法による農産物は栄養が豊富というイメージがあるが、有機栽培は化学的肥料や農薬を使用しないというもので、栄養が豊富である事を必ずしも保証はしないようだ。

 健康上のメリットに関する初期の研究結果は混乱をもたらしたが、こうした研究の対象はビタミンやミネラル、主要栄養素(炭水化物、たんぱく質など)に限定されていた。これは、こうした栄養素の1日の摂取推奨量を米政府が定めていたからだとモンゴメリー氏は話している。(参考記事:「野菜や果物の栄養分は数十年前に比べて低下、知っておきたいこと」

 過去の論文200本を検証した2012年のレビュー論文では、有機農産物と慣行農産物で、ビタミンAやC、カルシウムと鉄を含むミネラルの含有量に有意な違いはなかった。

 過去の論文では、ファイトケミカルはあまり注目されていなかった。農産物に豊富に含まれるファイトケミカルは炎症を抑え、免疫を強化し、健康を増進する物質だが、摂取推奨量は示されていない。

 このファイトケミカルに着目した研究では、有機農産物には、カロテノイドをはじめとするファイトケミカルが12%も多く含まれていることが明らかになった。また、慣行農産物を3週間、その後に有機農産物を3週間摂取した試験では、有機農産物を食べた後に尿中のフラボノイドが増加していた。

 植物は害虫や病気から身を守るためにこうした物質を増加させるので、この研究結果は理に適っているとモンゴメリー氏は言う。化学合成物質で保護される慣行農産物は、ファイトケミカルを増やす必要がないのだ。

 ボードリー氏の観察研究では、有機農産物を最も多く摂取した人は、乳がんやその他のがん、2型糖尿病の罹患率が最低だったことが確認されているが、ファイトケミカルの増加もその要因の1つかもしれない。しかし、一部の研究者は、この観察研究を批判している。有機農産物を常に食べている人々は他の人たちと多くの面で違いがあるというのがその理由だ。たとえば、こうした人々は一般に裕福で学歴が高く、健康のために定期的に運動をする傾向がある。

 だが、ボードリー氏は、研究の際にそうしたあらゆる要素も慎重に考慮したと話している。それでも、このような研究でその因果関係を解き明かすことはできない。研究者たちが別の論文で述べているように、有機農産物の摂取が罹患率の低下につながると結論づけるためには、直接的な試験を実施する必要があるだろう。(参考記事:「病気のリスクを下げる食事とその仕組み、健康で長生きするために」

 有機農産物には化学合成肥料や農薬がほとんど使用されていない。こうした点も、ボードリー氏の研究で明らかになった良好な健康状態に関与しているようだ。2012年のレビュー論文では、慣行農産物の残留農薬が有機農産物より30%多いことが確認され、別の論文では、有機農産物の金属カドミウムが慣行農産物より48%少ないという結果が出ている。金属カドミウムは、人間の肝臓や腎臓に蓄積する恐れがある有害物質だ。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/060900290/?P=2

とはいえ、有機農法が体に悪いということは無いし、細かいところを抜きにして大雑把に言えば、有機農法は健康に良いという結論で良さそう。

「最も健康的な食物を求めるなら、有機農産物という表示だけでなく、その作物がどのように栽培されたかを知る必要があります」。米カリフォルニア州立大学チコ校にある環境再生型農業・レジリエントシステムセンターの共同設立者、ティム・ラサール氏は、このように話している。

 注目すべきポイントの1つは土壌の質だ。米バーモント州で有機農業に長年携わり、「リアル・オーガニック・プロジェクト」の共同事務局長も務めるデイブ・チャップマン氏は、健全な土壌の微生物の多様性を私たちの腸のマイクロバイオーム(微生物叢(そう):ある環境中に共生する微生物のまとまり)にたとえる。「体内のマイクロバイオームが健康でなければ、私たちも健康ではありません」とチャップマン氏は言う。「土壌も同じです」

 ラサール氏は、最良の土壌で育った野菜や果物を入手したいなら、有機農産物として認証されているかどうかに関わらず、環境再生型農業(リジェネラティブ農業)で栽培された農産物を探すべきだと話す。環境再生型農業では土壌の質が重要だ。有機農業と違って農薬や除草剤の使用に制限はないものの、こうした生態系であれば農薬や除草剤の必要性は低下するという。

 環境再生型農業には、次の3つの基本原則がある。地表近くに生息する微生物を守るため、植えつけ前に畑を耕さない(不耕起栽培)、根が土壌にさまざまな物質を与えられるように、休閑期には複数の被覆植物で土壌を覆う(土壌被覆)、そして、畑を休ませず、年間を通じてなるべく長期間農産物を栽培(輪作)するというものだ。

 こうした農法によって、地下の菌類のネットワークやミミズなどの生息数が増加し、結果的に農産物の栄養価を高めることができる。2004年に学術誌「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション」に掲載された論文によれば、この方法で改善された土壌でブロッコリーやカリフラワーを栽培すると、作物中のファイトケミカルが10倍に増加するという。

 今年の夏、最も健康的でおいしい野菜や果物を手に入れたいのなら、地元の直売所に足を運ぶことをラサール氏は勧めている。そして、農薬使用の有無だけでなく、畑の土を耕したか、休閑期の農地をどのように管理しているかを生産者に尋ねてみよう。

 一方、米イリノイ工科大学栄養研究センター長のブリット・バートンフリーマン氏は、有機農産物が重視されるあまり、人々が果物や野菜を十分に食べなくなるかもしれないと懸念している。

 バートンフリーマン氏が低所得者層の510人を対象に調査したところ、大半の人は、有機農産物を買いたいが高価なので買えないと答えた。中には、農薬の話を聞いて農産物を買う気が失せたと言う人もいた。「販売側が発するメッセージが農産物の摂取にどのような影響を及ぼすか、販売側がもっと明確に理解しておく必要があります」

「有機農産物を購入する経済的余裕がある人は、高額な支払いをする価値があるかどうか自分で判断する必要があります」とモンゴメリー氏は言う。「でも、できる限り健康的な食事をしたいのなら、健康で肥沃な土壌で育った新鮮な食材を多く取り入れる食生活が一番でしょうね」

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/060900290/?P=3

そして、いちばん言いたいことは、健康的な農産物を見分けるためには、「有機」にこだわるよりも「土壌」にこだわった方が良いよってことなんだろうなと思う。
なるほどなと思うが、「有機であれば健康!」というイメージは根強いし、「有機」みたいなキャッチーなキーワードに対抗するような気の利いたキーワードが今のところ土壌の質に関するものではまだ発見されていないので、しばらくは「有機」に関する神話のようなものは続くんだろうなと思う。

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