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「どうしてあんなミスをしたんだ、と思いながらベッドに入る毎日だ」

<ショウファー>

私は、ショウファー。高級リムジンの雇われドライバーだ。

お金持ちの顧客とは、くらべようがないが、危険手当てを含め、日当1千ドル超の収入がある。でないと、出来心で、彼らや彼女たちを襲うやつが出るとも限らないからだろう。

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きょうのクルマは、FBIご用達の大統領警備に使われるGMキャデラック・エスカレイド2021。
420馬力、8気筒、オートマチック10段トランスミッション、レギュ ラー・ガソリンで走る。車内スピーカーは、36個ある。ハンドルの真ん中に小さなマイクが装着されていて、後部座席の顧客に大きな声で
話さなくても聞こえるようになっている

うちの会社では、顧客のパーソナル・データは、事前にドライバーに届くことになっている。”我々は、人を移動させる輸送業ではない。神経を働かせる、感情労働のサービス業だ”という会社の方針による。

きょうの顧客は、俳優のトム・ハンクス[1956年生まれ。アカデミー賞の最優秀男優賞を「フィラデルフィア」と「フォレスト・ガンプ」で受賞。2型糖尿病で、避ける食品は、牛肉、ソーセージなど加工肉、甘い飲み物など]

会社のデータは、この程度。ま、あまり役に立たない。

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しかし、会社のデータよりくわしいプロフィールが、いまはネットで調べられる。

ハンクスは、両親の離婚を経験し、親戚宅を転々とし、10歳の時、10度居住場所を変えた、つらい過去があるそうだ。

また、舞台俳優を目指した経歴を見ても、苦労人らしい。気むづかしいとか、話しづらさは、なさそうだ。

最良の愛を感じたのは「あなたがどんなに苦しんでいようが、どんなに困っていようが、あなたが座る食卓は、いつもここに用意してあるよ」と親戚に言われたときだったと言う。

ハンクス少年は、苦労している。

ハンクスは言う「ヒーローとは、自分から進んで、まったくわからない世界へ足を踏み入れる人」。

人の勇気をたたえ、ロマンのある人だと思った。

”きょうは、いい日だった”と、ふつうの人はベッドに入るだろう。

僕は”どうして、あんなミスをしたんだ”と、ぶつぶつ言いながらベッドに入る日が多い”と、ハンクスは言う。

つねに反省を忘れない、このような人に、悪い人はいない。

努力も惜しまない。ゲイの弁護士役を演じたときは、17キロ減量。遭難したフェデックス社員役では、1年かけて25キロ減量。逆に、アイスクリームを食べて、15キロ肥満も果したそうだ。

「2001年宇宙の旅」の映画を、劇場で22回も観ている。熱心で愉快な人は、ハンクス以外に知らない。


玄関からミスター・トム・ハンクスが、車内で目を通すのだろうか、書類を持って出てきた。

きょうベッドに入るとき「きょうは、いい1日だった」と言える日になる予感がする。












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