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愉しき思い出【2】
あれは小学校5年生頃のことだったろうか。そうであれば、昭和60(1985)年頃の話である。体育の授業でいまだに忘れられない出来事があった。
校庭の鉄棒で逆上がりの練習をしていた。
今はどうか知らないが、私が小学生だった頃は、前回りから始めた。足をついてできるようになったら連続前回りにレベルアップしていく。
逆上がりも同じである。
その日の体育の授業では、まずは復習を兼ねて一人ひとり、先生の前で足をついて逆上がりを行った。大体この程度なら、大方の児童がついていける。
先生は一人ひとりできることを確認し終えると、今度は連続逆上がりの手本を見せた。
児童は体育座りをしながら、その様子を見ていた。
「難易度が高い」
私はそう思った。
先生は一通り手本を見せ終えると、児童に対して、順番に前に出て行うよう指示を出した。
このレベルになると、児童によって得手不得手が顕著に分かれる。割合は少ないが、難無くやってのける生徒もいた。得意げに終えて、先生も満足そうな様子だ。
刻々と順番が近づく。一喜一憂する児童。順番が近づくにつれて緊張感が増していく。
ついに、私の番が来た。
その瞬間、なぜだか知らぬが尿意を催した。
正確には、すでに催していたのだろう。意識が挑戦中の児童に向かっていたため、順番が来て自覚したのだ。
「トイレに行かせてほしい」
仮にそう訴えたなら、全体の流れを止めることになる。また、そういうことにかけては残酷で容赦のない児童のことだ。その場で爆笑の渦が巻き起こり、後々まで笑いの種にされるに決まっている。
引くに引けぬ。
覚悟を決めて鉄棒へ向かった。
地面を蹴って1回目。
難無くできた。問題はそこからである。
逆上がりをした瞬間、鉄棒が下腹部を圧迫した。
それもあり、逆上がりはしたものの、一回転を終えて足をついてしまった。
体育の時間が終わりそうな時刻だった。
今すぐにでも校舎へ走ってトイレに入りたい。
だが、事情を知らない先生は、無慈悲に続けるよう命じた。
2回目、足をつく。
もっともっとと先生が急かす。
3回目、また足をつく。
4回目、5回目…
その都度、膀胱が圧迫され、もはや爆発寸前だった。顔面蒼白、脂汗がにじみ出た。
そこからの記憶は空白だ。
安堵したことだけは覚えている。
からかわれた記憶はない。
休み時間になり、無事、トイレに行けたのだろう。
(終)
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