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【ヨーロッパ東部・セルビア】ボイボディナ自治州について(特徴と今回訪れた理由)

今回セルビアでは、首都ベオグラードのほか、セルビア北部ボイボディナ(Vojvodina)自治州の3つの街キキンダ(Kikinda)、スボティツァ(Subotica)、ノビサド(Novi Sad)に行きました。

⭐︎1月4日、記事を公開。地図と各都市の基礎情報(面積、人口)は、後日追記します。



夕方のキキンダ中心部。
手前がカトリック教会、奥に小さく見えるのが正教会です。

ボイボディナ自治州の特徴①: 民族的な多様性

ボイボディナ自治州の特徴として、まず挙げられるのは、民族的な多様性です。

「日本の四国ほどの面積に、28の民族が居住することとなった。」

柴宜弘・山崎信一編『セルビアを知るための60章』2016年、163ページ

という説明は、具体的でイメージしやすいですよね。

なぜ、この地域に多くの民族が住んでいるのでしょうか?
背景として、この地域を支配していたハプスブルク帝国が、オスマン・トルコ帝国の侵略を防ぐため、17世紀以降に様々な周辺民族を入植させたという経緯があります。

20世紀になり、第二次世界大戦を経て、1945年にユーゴスラビア連邦人民共和国が成立します(現在のセルビア、モンテネグロ、クロアチア、スロヴェニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア)。その際に、この地域は「自治州」となりました。
自治州の公用語として、セルビア語やハンガリー語など6つの言語が使用されています。さらに、新聞やテレビ局ではロマ語などを加えた、10言語という多言語が使用されています。

ボイボディナ自治州の特徴②: 平地であること

ボイボディナ自治州の特徴として次に挙げられるのは、平地であることです。
首都ベオグラードからボイボディナの各都市、あるいはボイボディナの都市間をバスで移動すると、道路の両脇に広大な平地が広がっており、「見渡す限り、まったいら!」という眺めが続きます。

ベオグラードからキキンダに向かうバスの車窓からの眺め。

個人的には、広々として道がまっすぐな感じが「北海道に似ているな」と思います(北海道には山がありますが)。

今回訪れた理由

セルビア第二の都市・ノビサドの旧市街。
首都ベオグラードから、バスで約1時間半のアクセスです。

筆者は約10年前に、ノビサド大学がセルビア語・文化を学ぶ外国人向けに開講していたサマースクールに参加し、ノビサドに3週間滞在しました。
滞在中、市内を観光したり、サマースクール中の遠足で周辺の街にも行ったのですが、「ボイボディナの多様性」については、正直なところ、よく分かりませんでした。というのも、当時の私には、地元の人の容姿(肌や髪の色)や建物は、視覚的にとても均質に映ったからです。
もし、言語に関する知識があれば、外で聞こえてくる人々の会話が、複数の言語によって行われていることが分かったのかもしれませんが、当時は(そして今も)そんな聴き取り能力はなく…
勉強不足で滞在してしまったな、という後悔もあり、もう一度現地に行って、「多様性」を知りたい、と思っていました。

そして、今回旅行に行くことを決めて。名前の響きが印象的で興味を持ったキキンダ、ハンガリー国境に近接するセルビア最北の街・スボティツァ、そして、再訪したい場所があったノビサドを巡る計画を立てました。

ハンガリー国境に近い街・スボティツァ。
珍しいアールヌーボー様式のシナゴーグ(ユダヤ教寺院)があります。
スボティツァ中心部。

【参考文献】

柴宜弘・山崎信一編『セルビアを知るための60章』2016年
柴宜弘『ユーゴスラヴィア現代史』2021年