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裁判員裁判:殺人未遂その2 嫁姑問題

今回の裁判は、嫁が姑の胸や頭を出刃包丁で刺し、殺害しようとした事件である。
この内容には、一部暴力的な描写があり、苦手な方は気を付けて頂きたい。

被告女性は、嫁52歳(事件当時)。
身長150㎝ちょとの小柄で、声もアニメに出てくるような萌え声で可愛らしい。
初婚で中年期に結婚する。
子供は居ない。
精神科の病歴あり。
結婚2年目で精神障害を発症する。
症状は、不安感、発熱、不眠、発作性頻脈などである。
そのため川崎病院に入院をしていた。
退院後も通院歴あり。
精神科に通っていたことは、姑には黙っていた。
姑には友達が多く、自分が精神病だと広められ無いためであった。

被害者の姑は80歳(事件当時)。
日本舞踊の師範である。
数年前に夫と死別している。
そして大の猫好きである。


結婚当初は、旦那と2人暮らしであった。
しかし、旦那がリストラになり生活が困窮する。
旦那の提案で、家賃を浮かすため、自分の母親と同居するよう説得してきた。
嫁は最初から、同居には反対であった。
理由は、姑が大の猫好きであり、室内には猫が多頭飼いされていた。
嫁は残念ながら、姑とは反対に、大の猫嫌いであったからだ。
それでも旦那に押切られる形で、渋々に同居を承知したのである。


同居するにあたり、玄関と台所は一緒だが、2世帯住宅にリホームをした。
夫婦は2階に住居を構えることになり、嫁の嫌いな猫が上がって来れないよう、入念なリホームを施した。
(リホーム代金は誰が支払ったか不明)
リホーム完成の数日後。
嫁は2階に鍵を取付けた。
検察から、なぜ鍵を付けたのか聞かれると
『姑が猫の毛を付けたまま2階に上がって来たことと、姑から何かされるかもと、不安感があったから』と述べた。

同居してすぐ、予想どうり小さないざこざが始まる。
共有スペースの台所で、猫用の皿にチクワの山盛りを目にした嫁は
『ここで餌をやるのは、やめて下さい』と注意した。
注意後は、台所で餌をやることは無かった。


同居の月日が経つにつれ、2階に猫が上がって来なくても、排泄の悪臭や、服にまとわり付く毛に不満を募らせていく。
結局、共同スペースでは猫が陣取り、片付けてもすぐにゴミ溜めになった。

嫁は猫の多さに頭を抱え、少しでも減らそうと里親に出したり、自分のお金で去勢もした。
その努力の甲斐があり、家猫が8匹になった。
(最初に何匹いたかは不明。数え切れない程いたそうだ)

しかし、ある日。
姑が外猫6匹に、餌を与えているのを見掛け、自分は嫁イビリに合っていると思うようになる。

猫のこと以外にも、庭の草刈りに業者を頼んだら、一画だけ草刈りがされていない場所があった。
業者に訪ねると、姑から刈らないよう言われたと答えた。
そのことも嫁イビリだと受けとる。
後で分かったことだが、その一画は雑草では無く、植物だったことが判明。
お互いが、言葉足らずであったことが伺える。

また、自分の郵便物を勝手に、3回開けられたことがあるそうだ。
プライバシーも無いのかと、不満が蓄積されていく。

そして同居前は、旦那と2人だけで、よくドライブに行っていた。
同居してからは、姑も加わるようになった。
3人でのドライブが恒例になり、旦那と姑の会話に、気を使って入れないのが、何より気に食わなかった。
2人だけで、ドライブに行きたいと、旦那にお願いしたが、うやむやにされるだけであった。

同居にほとほと疲れ、旦那に姑と別居したい伝えると、生活にかかる金額を紙に書かれ『これだけいるので別居は出来ない』と言われ、反論することが出来なかった。

この頃に、嫁が友達にメールした内容が法廷で読み上げられる。
【旦那が働かなくなった。
自分が働こうかと思ったが体調が悪くて出来ない。
腰痛で歩けなくて家事が出来なくなった。
旦那が冷たくなった】
と送っている。

その内、姑が自分達を離婚させようとしていると思いだす。
旦那と姑の会話を聞いてそう感じたという。
また、旦那から1度だけ
『別れよう』と言われ、より強くそう感じることになる。


他人事だから言える戯言ではあるが、旦那は2人の間で右往左往していたとしても、家の中で1人他人である嫁への配慮が、もう少しあっても良かったかも知れない


同居4年目。
嫁は、次第に奇行が目立ちだす。
2階に姑が上がって来れないよう、扉をガムテープで入念に目張りをする。
それは盗撮と盗聴されていると思い込んだためだ。
そして、タンスの上に包丁とバールを隠す。
いつか2人が共謀して、襲われると思っての奇行だ。


同居5年目。
嫁は姑と話し合いをした。
猫の排泄の悪臭のこと。
猫のせいで共同スペースがゴミ溜めになっていること。
外猫に餌やりをやめて欲しいことを伝えた。
姑は『猫は50匹おってもええ。山からなんぼうでも下りてくるんじゃ』と、取り合ってはくれなかった。

その日の深夜。
嫁は17cmの出刃包丁を握り締め、1階に寝ている姑の部屋に侵入する。
寝ていた姑の胸ぐらを掴み、出刃包丁を頬に当て『ゆうこと聞け!!』と大声で怒鳴った。
その声に旦那が気が付き、止めに入りことなきを得る。
この行動は、姑に強いところを見せたかったからだと述べている。
次の日、旦那には怒られたが、姑は一切なにも言わなかった。


その騒動から、約6ヶ月後。
嫁は体調が悪く2階で寝ていた。
1階に下りると、姑の機嫌が良いことに気が付く。
旦那に訪ねると、ドライブに行って来たと聞かされる。
姑の楽しそうな様子を見て嫉妬し、自分の体調を心配もしてくれず、家で1人取り残されことに腹が立った。

同日の夜。
旦那と現金5千円の事で揉める。
食費か預金の話であったが、旦那が管理すると言って5千円を取り上げられた。
このことで、自分のことを信用していないのだと落ち込む。

日付が変わり、深夜3時50分。
1階から大きな物音がしたので、何事かと思い嫁は下に見に行った。
1階には姑が立っていて
『猫が暴れたんじゃ。はよ~寝られぇ』と言った。
この口調は、非常にキツかったと嫁は語る。

注)暴力的な描写あり↓

言われた通り、嫁は2階に戻る。
本人いわく、布団には入らず、どういう訳かパジャマの上にジャージの上下を着た。
どういう訳か、刃渡り17cmの出刃包丁を握りしめた。
どういう訳か、姑が居る1階の寝室に向かったと述べる。

部屋に入ると、姑はベッドで仰向けに寝ていたが、気配に気が付き、すぐに目を開いた。
その瞬間『死ねーー!』と大声をあげ、姑に馬乗りになり、出刃包丁を順手で持ち腹部を刺した。
2回目からは確実に殺すため、出刃包丁の刃を逆手に変え更に刺す。
この傷は、肺にまで達した。
腹部に3回目が刺された時、姑がうずくまると今度は、頭部を数回にわたり突き刺す。
姑はベッドから転がり落ち、ベッドの下に逃げようとした。
隠れようとする姑の足首を掴み引きずり出す。
姑は逃げ切れず、体を丸め頭部を両手で覆った。
それでも嫁は容赦なく、更に頭部めがけて出刃包丁を振り下ろした。

旦那が騒ぎを聞きつけ、姑の寝室に駆けつける。
その場の大惨事に驚きながらも、出刃包丁を持った嫁の両手首を掴み『包丁を放せ!!』と叫んだ。


『嫌じゃーー!放したら、あんたに刺されるーー!』

押し問答の据え、やっとの思いで嫁から包丁を奪った。

そして旦那は、パニックだったのか、救急車では無く警察を呼んだ。
駆け付けた警察を旦那が寝室に案内する。

駆け付けた警察の証言。
『被害者(姑)は、仰向けに倒れ全身血塗れで、目を見開いたまま虫の息でした。
特に右側の頭部からは大量の血が流れていました。
○○さん(旦那)が指を刺しながら
「彼女が嫁で、彼女(姑)を刺しました」と説明しました。
被告(嫁)を、その場で現行犯逮捕しました』
検察から逮捕時の嫁の様子を聞くと
『その時、被告(嫁)は
「なに?はよぉ、薬のませてぇ」と意味不明なことを言っていました』

警察が救急車を呼び、姑は病院に搬送された。
胸部、頭部、庇った腕を合わせ、17ヵ所の刺し傷であった。

※刺し傷のみ(裂傷は除外)

かなりの重傷を負いながら、ましてや、か弱い80歳の高齢者であるが、姑は奇跡的に命をとり止めたのである。

弁護人との本人尋問では、お互い憎しみ合っていたこと。
猫の事でストレスが溜まり、ゴミ溜めの部屋の片付けを旦那も協力してくれなかったこと。
体が弱く1人暮らしが出来なかったこと。
旦那の事が好きで、別れたくなかったこと等が語られた。
そして、事件後は良く眠れるという。


検察から犯行について質問。

検察
『どおして姑を消そうとしたのですか?』


『分かりません』

検察
『逆手の記憶はあるんですよね?
手を変えたのは何故ですか?』


『刺しにくかったから……』

検察
『その時、○○さん(姑)は暴れましたか?』


『……はい』

検察
『何か言ってましたか?』


『……はい』

検察
『何を言ってましたか?』


『……覚えていません』

検察
『あなたは何回、刺したか覚えてますか?』


『……2回くらい……』

一同驚愕する。
傍聴席からも、ざわめきがおこる。
それというのも、犯罪の凶悪性を強調さすため、裁判中に『刺し傷17回』と繰返し語られていた。
その効果もあって、誰もがそう記憶していたからである。


検察、語気強く
『2回ですか?』


『服の上だったし、そんなに刺してない』

検察側も弁護人も慌てだす。
本人の意識では、やはり2回くらいのなのである。
検察は資料を持ち出し、嫁の前に広げて見せる。
『胸に3回、頭に3回、腕に11回刺してます』

資料を突き出されても、嫁はそんなことを言われてもって感じである。
刺した回数を認識さすには、時間がかかると判断したか、検察は話を変える。

検察
『何故、頭を刺したのですか?』


『頭をベッドの下に隠そうとしたから』

検察
『ベッドから○○さん(姑)が逃げた時、もうやめようとは思わなかったのですか?』


『…………』

検察
『追い掛けてまで刺してますよね?』


『…………』

検察
『力保持の為に、なぜ包丁だったのですか?』


『……自分でも分かりません』

検察
『分からないんですか?』

嫁、ここで含み笑いしながら
『脅す為です』

検察
『いつ殺そうと思ったのですか?』


『……分かりません』

検察
『刺している時に何を思いましたか?』

嫁、また含み笑いをしながら
『旦那が何故こないのかな~……来ないな~と思って……』


過度のストレスで、その場の緊張から含み笑いをする者もいるが、傍から見て嫁の含み笑いには、背筋が寒くなるものがあった。


最終陳述。
弁護人は、精神鑑定を持ちいり、被告はパニック障害、適応障害、過敏妄想障害を抱えている。
そして、この過敏妄想障害こそが事故の引き金になり、追い詰められた結果である。
よって殺意は無かったとする。


検察側は、被害者の命は助かったものの、これからも通院を余儀なくされている。
被告には明白な動機があり、17回刺したことから十分に殺意があったとする。
よって求刑6年とした。


どの裁判でも言えることだが、被告の弁護に、やたらと精神疾患を盾に使うのは、如何のものかと思う。
本人に善悪の区別が分かるなら、取って付けたような精神疾患を禁止にして欲しいものだ。
更に言わせてもらうなら、身内関の犯罪は非常に軽いと感じることがある。


判決
懲役2年6ヶ月


軽い、軽すぎる
嫁だけが全て悪いとは言い切れないが、なんともスッキリしない判決であった

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