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[SS]月が綺麗ですね 第1052幕

小さな病院で、男の子と女の子が生まれた。

男の子の名前は ケン。
女の子の名前は ハル。
病院の新生児室で、隣同士のベットに寝ていた。

ケンの家とハルの家は隣同士。ケンとハルの両親は、同じ街に同時期に引っ越してきて、年も近かったからか、とても仲が良かった。

ケンとハルは、幼稚園も小学校も中学校も高校も一緒で、お互いの家の部屋にも良く行き来するし、学校への登下校も当然一緒に行く。いわゆる、仲の良い幼馴染の関係にあたる。

ケンには高校で出会い大親友の リョウがいる。
ハルには小学校からの大親友である ミクがいる。
実はリョウとミクは恋人同士でもある。

高校2年になったある日、リョウがケンに話しかけてきた。

「ケン、お前いつまでハルと幼馴染の関係でいるんだ? ハルのこと好きなんだろ? 早く告らないと、ハルを他のやつに取られちゃうぞ。 ハル、可愛んだから。 この前、サッカー部のキャプテンに告られてたぞ」

「俺もその噂聞いてるよ。 今更、何て言って告れば良いんだ? ずっと幼馴染だったんだから」

「実はな、ミクから聞いたんだけど、『月が綺麗ですね』って告るんだってよ」

「何だ。その『月が綺麗ですね』って?」

「大文豪の夏目漱石が、松山で英語教師をしていた頃に、『I love you』の和訳を『月が綺麗ですね』とでも訳しておけって言ったという逸話があるんだ。 だから、『I love you』の代わりに『月が綺麗ですね』というのが流行ったって話だぞ。 本好きのハルのことだ。 こんな逸話は知ってるはずだって、ミクが言うんだ。 この言葉で告ってみろよ」

「そうなのか? じゃあやってみるよ」

そんな会話が交わされた数日後の放課後、いつものように学校からチャリで家に帰るケンとハル。

「ハル、丘の上の公園にちょっと寄って行かないか?」

「良いよ。珍しいね。寄り道なんて」

丘の上の公園からは、街全体が良く見渡せた。
あたりは、少し暗くなり始めてきたが、月が姿を見せていた。

「ハ ハ ハル・・・ち ち ちょっと話があるんだけど」

「どうしたの。そんなに緊張して・・・」

「ハ ハ ハル つ つ 月が綺麗ですね?」

「えっ、何?・・・・・アハハハ。そうゆうこと? 誰かに入れ知恵されたんでしょ。 はい、綺麗ね。 まあ、今日は三日月だけどね。 せめて満月の日に告白して欲しかったわ。 でも、嬉しい。 私も大好きよ」

二人の瞳が交差する。
月に照らされた二つの影は、いつしか一つに重なり合い、その影はスッと闇に溶け込み消えていった・・・
I love you・・・そして、only you・・・。   お し ま い 🤣

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では また次のnoteで お会いしましょう。

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