「おかえりモネ」〜亮と未知の優しい関係
亮と未知の関係を読み解くにあたり、菅波と百音も同様の関係を築いていることが前提となります。
登米で同時期に出会った「菅波とモネ」は偶然にも2人で「自助グループ(同じような傷を負う者がグループとなり、感情を共有しながら心の傷を癒していく治療)」が成り立ち、トラウマ回復のニコイチとして「心の洗濯」をしていました。(→「菅波とモネ」はこちらのnoteにまとめています)
これまでの話を辿ると、亮と未知もまた同じようにニコイチでトラウマ回復の自助グループ活動をしているように受け取れ、それらがわかる場面を細かく読み解いて整理してみました。
(冗長なので、●がついたインデックスだけでもこのnoteの内容は伝わるかも)
●亮と未知の優しい関係
阪神淡路や東日本の大震災後、数年経ってから「燃え尽き症候群」について新聞などでよく取り上げられていました。震災当初は目の前のやらなきゃいけないことに追われてがむしゃらに頑張っていたけど、状況が落ち着きホッと一息肩の荷をおろすことができたとき、極度に張っていた糸が緩んででる心身症。実際、震災数年後に多く見受けられたそうです。
(52話↓)でモネが言うように、未知も震災を挟んで2本の糸を張っているように見えました。亮も新次のことをはじめ多くの糸を張っていたことは想像に易いかと思います。この時点で2016年。震災から5年です。
百音「りょーちんとみーちゃんって、なんか似てると思うのね」
「いや似てるからいいってわけじゃないんだけど、あの2人は…あの2人はちょっと頑張りすぎてるから。もしも2人が一緒にいること気持ちが楽になんならまあそれはいいなと思うけど…」(手をぴーんと張るような仕草)(52話)
診断名をつけるほどではないにせよ、未知と亮もこれに似た心の傷が2016年に表面に出てきたと捉えてよさそうで、2016年から2019年にかけて2人はその心の傷をニコイチとなり治療してきたと考えられます。
99話で三生と悠人からみて「ビミョー」と感じた2人の関係は、2016-2019年にかけてお互いを支え合い癒してきた「優しい関係」だったといえそうです。
ここでいう「糸が切れる」とは「心の傷が表面に溢れ出す」ことを指します。あるいは、「心の荷物を抱え切れなくなった状態」です。
ーーこの頑張りすぎて糸が切れる(心の傷が表面化する)タイミングは大きく次の2つに分けられるそうです。
①努力に見合う結果が得られなかった場合
②大きな目標達成により次に打ち込めるものがなくなった場合
(以下①②対応します)
(一般的な症状は、無気力や思いやりのない態度が出がちになるそうです)
一旦未知と亮に分けて、2人が背負って頑張りすぎてきたものを読み解いていきます。
未知の「頑張っていた糸」
ーー未知の頑張っていた糸は簡単にまとめると次の2本です。
①水産への強い思い
②お姉ちゃんの分もしっかりしなきゃと言う思い
└「家族を不安にさせない」「亮を支える」含む
特に①「水産への熱い想い」は幼少期から一貫した思いであり仕事に行き詰まるまで、いい成績が取れたり、TVに出たり、合格したり、採用されたり、とても順調に評価されています。
2016年に、この頑張りすぎた糸に影響を与える出来事が立て続けに起こり、2本の糸が切れることになります。
未知の心の傷が溢れ出すまで
⬛️未知の頑張りすぎた糸が切れるまで〜12週
未知の2本の糸が最初に切れそうになった様子が次の会話から読み取れました。
ー(56話・57話↓)②「家族を不安にさせないように私がしっかりしなきゃ!」と頑張りすぎていた糸が緩むことで心に影響が出る瞬間です。未知にとって「私がしっかりしなくても大丈夫そうな状況になった」ことは発症する原因の「大きな目標が達成された瞬間」だと言えます。
2016年台風の情報をモネが龍己に説明し、モネの情報を元に家族がバタバタと動き出す。未知は肩を落として水産試験場に向かう。その様子を耕治が心配する場面。
亜哉子「モネがすこーし、立ち止まっちゃってた時があったでしょ?あの時未知、自分がしっかりしなきゃって思ったと思うのね。それですごく頑張ってくれてる」「でも、モネが動き出して、未知も自分のこと、いろいろ考えるようになったんじゃないのかな」(56話)
(龍己)「こないだの台風ん時ありがとな」「モネのおかげでみんな、助かったよ!ハハっ」(57話)
ー(58話↓)では①幼少期からの牡蠣と水産への一貫した熱い想いの努力に見合う結果が得られず行き詰まってることがわかります。(未知は小中高と順調すぎるほどの実績を叩き出して高い評価を得てきているので、初めての行き詰まりかと)
亜哉子「いい結果が出ない?」
未知「うん。でもまだ半年だし。研究職なんて簡単に結果出ないのが普通だから」亜哉子「うわ~かっこいい」未知「何よ。ありがと」亜哉子「でもそうよね。ノーベル賞取ってるような偉~い先生も普通に30年ぐらい、研究してるもんね」未知「え~30年はやだな」
亜哉子「好きなのよね、だから、続けられる」
未知「お母さん前に言ったよね。好きなことしなさいって」亜哉子「うん」未知「好きなことなのかな」(58話)
ー(59話↓)で未知は、亮がモネにメールしたことを知ります。震災後ここまでモネと亮が個人的に連絡をとることはなかったはずです。それまで未知が②私がお姉ちゃんの代わりに地元で亮を支えなければと頑張っていた糸が緩み心の傷が溢れはじめる瞬間です。
(電話)未知「りょーちん、お姉ちゃんには知らせるんだ。そっか。まあそうだよね」百音「いやでも、それだけだったよ」
未知「お姉ちゃん、ずるい。…あっ、いや今のうそ。ごめん、最近焦っちゃって。仕事で結果出せてなくてさ。お姉ちゃん羨ましくて、ついあたっちゃった。ごめんね、もいう寝なきゃだよね。じゃあおやすみ」
⬛️未知の頑張りすぎた糸が切れるまで〜16週
未知は16週の出来事で心の荷物が溢れ出し抱えきれない状態になっていきます。その様子を順に読み解いていきます。
ー(76話↓)での2つのシーンからは、自分では姉の代わりになれないという現実を悟ります。亮の頑張りを見てきた様子から、いかに未知が姉の代わりに亮を支えようと踏ん張ってきたかもわかります。
(電話)亮「俺、もう全部やめてもいいかな。俺やっぱモネしか言える相手いない」
百音「みーちゃんだいじょう…」
未知「何で。りょーちん、ずっと頑張ってきたじゃん。高校卒業して、すぐ漁師になって。新次さんの代わりにずっとずっと頑張ってきたじゃん!なのに何で・・・。何でいつまでも、しんどい思いしなきゃなんないの。もう、気持ちボロボロだよ。逃げたいんだよ本当は。でも逃げらんないじゃん!何でお姉ちゃんなの」服投げる(回想)亮「かわいいね。たまにはいいじゃない。そういう格好も」(76回)
未知「りょーちんが来てもらいたいのは、お姉ちゃんだから」
明日美「みーちゃんさ、そんなの分かってるよ。こういう時りょーちんが本音言うのはモネだよ。昔からそうじゃん。何だろうね、そういう関係。むかついた時期もあったけど。モネ、行ってきてよ。私とか行くとさ、りょーちん逆に笑ってさっさとバス乗っちゃうかも。あいつは、ね、かっこつけるからね。私やみーちゃんには」(76回)
未知は頑張っていたことに対して次の現実を突きつけられ、糸が一旦切れた(心の傷が溢れでた)のではないでしょうか。
--未知が抱えきれず溢れ出した心の傷
①水産への熱い思いが努力に見合う結果に結びつかない限界値超え
②お姉ちゃんの代わりに「家族を不安にさせない」と頑張っていたが、姉はもう家族を不安にさせていないということ
②亮にとって未知はお姉ちゃんの代わりにはなれないということ
●未知が切れた糸を紡ぎ直そうとする決意表明
ここからは、未知が切れた2つの糸を紡ぎ直そうとする決意を表明します。
ーー切れた2本の糸は、
①水産への強い思い
②お姉ちゃんの分もしっかりしなきゃと言う思い
└「家族を不安にさせない」「亮を支える」含む
ー(79話↓)未知のトランクから溢れたのは、2本の糸を引っ張っていたもので、それを紡ぎ直す決意を語るシーンです。
未知「だって、築地ってやっぱすごいんだもん。面白いのいっぱいあった。缶詰とか、魚肉の加工品とか、海草のお菓子とか、新商品の開発の参考になる。ああ・・・駄目だ」(トランクが閉まらない)
百音「みーちゃん本当頭の中魚でいっぱい」
未知「笑わないで。好きでやってるの」百音「ごめん」未知「好きでやってるから。だから、もう大丈夫。シワになる・・・」服のシワを伸ばし畳み直す「私は、私のやりたいようにやる。りょーちんのことも。…何あれ。りょーちん、誰のことも好きにならないとか・・・。そんなこと、本当に思ってんだったら、りょーちん、つらすぎる。なのに・・・。お姉ちゃんは、正しいけど冷たいよ。」
「私がそばにいる」(79話)
ーー紡ぎ直そうとしている糸は、
①実を結ばないけどやっぱり水産のことが大好きで私は好きでやってるんだという熱い思い
そして、服のシワを伸ばして畳見直した以降のセリフで、
②今度はお姉ちゃんの代わりではなく「未知として亮を支える」決意
この日から未知はお姉ちゃんの代わりではなく、未知として亮を支えています。
亮の「頑張っていた糸」
亮が震災後から頑張りすぎていたのは、誰の目からも明らかです。
ーー亮の頑張りすぎていた糸は次の2本かと
❶本当の自分を封じ込めること(最も被害の大きかった可哀想な人としてのレッテルを生きること。父親にも亮自身をみてほしいということ)
❷(美波の代わりに)新次を支えること。新次の代わりに頑張ること。
特に❶については、父親にも自分自身をみてもらいたい。周りからもレッテルではなく、1人の人間として認知してほしい。という強い想いが幼馴染たちとの会話から読み取れました。ただ、彼は自分自身を生きることを諦めているようにも見えます。
頑張りすぎて切れそうになっていた糸を「もうちょっと頑張れる」と繋ぎ止め支えていたのは、幼少期から本音を話せる特別な「モネの存在」もあったようです。亮の心の中に住むモネ。
亮もまた未知と同じように12週と15・16週で、これまで頑張りすぎな糸が切れて、心の傷が溢れ出しています。
亮の心の傷が溢れ出すまで
まず、亮は❷の新次を支えようと頑張りすぎた糸が12週で緩む事で心の傷が溢れるきっかけとなり、
⬛️亮の頑張りすぎた糸が切れるまで〜12週
12週は、新次が船に乗り嬉しくて亮がモネにメールをしました。上記❷(美波の代わりに)新次を支えること。新次の代わりに頑張ることの糸が目標達成することにより緩むことで心の傷が溢れるきっかけになる瞬間だと思われます。
(メール)亮「親父が船、乗った。耕治さんが親父をつれ出してくれた。島の船、台風から避難させるのを手伝ってくれって、家まで来て頼んでくれた。島の船も全部避難できた。ホントよかった」(57話)
亮は❷新次を支えようと頑張りすぎていた事に明るい兆しがみえ、その糸が緩む事で心の傷が溢れ出そうとしていました。
⬛️亮の頑張りすぎた糸が切れるまで〜15・16週
15.16週では立て続けに起こる出来事で、心の傷を抱えきれなくなり溢れ出してきます。
東京に行く前、亮は2つの衝撃を受け不安に襲われています。不安に押しつぶされそうになったから、モネに会いに東京に向かったともいえます。
ーー亮が東京に抱えていった衝撃と不安
1)亮の知らないモネがテレビに映っている。さらに東京の医者と付き合っていることを知る
2)美波の死亡届けの話が上がる。新次のことが不安になる。
亮が東京の汐見湯前に突如現れた15週。汐見湯前でモネと再開するシーン直前に、コップに結露ができる実験シーンの回想が挟まれました。
この描写はトラウマ(心の傷)が溢れ出している表現です。→(詳しくはこちらのnote)登米での菅波とモネも同じように溢れていました。亮もまた自分の心の傷が抱え切れなくなって溢れ出している状態で東京に来ています。
ーー(74話↓)再会し、他愛のない会話を通して遠い存在に感じてしまったテレビのモネは偽りで、目の前にいるモネが亮が知っている身近なモネだと一旦安心した亮。
亮「いや~ごめんまだ見てないんだわ」
百音「見なくていいよ。ちょっと、キャラ変えてるし」
亮「ああいや、キャラ変えてんだ。へえ~見よ~っと」
百音「いいよ! 駄目駄目駄目」亮「フフフ、楽しみ増えた。へえ~」(74話)
それも束の間、翌朝、菅波と鉢合わせ。
モネが遠い存在へと再び突き放されています。
菅波「初めまして、菅波です」
百音「ああこちらは、あの…」
亮「俺いいよ。ごめんね、大事な日に。じゃあスーちゃん、またね」
追い討ちをかけるように同じこの日のお昼頃、新次がお酒を飲んで暴れていると警察から亮に連絡が入ります。
ここで亮は東京にくるきっかけとなった2点の不安が現実となります。
ーー現実となった不安
1)亮が知らない東京医者の彼氏の存在を認識してしまう→モネが遠い存在に。モネの中に自分が存在しないことを確認
2)新次がお酒を飲み暴れる→亮の存在をみない父。父の中に自分が存在しないことを確認
結果、亮は完全に「❶自分の存在意義を見失った」のではないでしょうか
ーーなぜ自分が生きているのかわからなくなったーー
その夜、失踪…この時、亮は本当に生死の淵を彷徨っていたことが読み取れます。ここからは、亮がこちら側(生きること)に繋ぎ止められ、生きる力・活力を取り戻していく様子を読み解いていきます。
亮の切れた糸が紡がれていく様子
自分の存在意義を見失った亮は、失踪します。
生死の淵を彷徨った亮は、モネの電話で命を繋がれました。
亮が生きる力を取り戻すまでの流れを辿りなおしていきます。
ーー(76話)亮の頑張りすぎた糸は命を奪いそうになりますが、モネの電話でこちら側(生きること)に繋ぎ止められました。そしてモネの存在を感じる象徴である朝日とともに、亮は再び動き出すエネルギーが得られます。
(電話)亮「俺、もう全部やめてもいいかな。俺やっぱモネしか言える相手いない」
その後、喫茶店でモネと再開します。モネと話しモネの存在を近くに感じるとで、こちら側(生きること)にもう一歩引き寄せられた。(東京の医者の彼氏がいたとしても)モネの存在そのものが彼に生きる意味を与えています。
喫茶店での亮の会話からも、この喫茶店が「生きる気力を失いただただ時が過ぎるのを待っている人たちの場」だとわかります。
亮「ここってさ、ちょっとでも寝ると、寝ないで下さいってすぐ注意されんの」「でも、何時間いてもそれは何も言われないんだよ。だから何か、みんな我慢大会みたいになっててさ、ちょっと連帯感生まれちゃったりしてんの」「東京って変なとこな」百音「そうだね」(77話)
ーー生きる気力を取り戻す喫茶店での会話では、亮がひとりで頑張ってきた糸❶❷を言語化できたこと。それをモネに認めてもらえたことが大きく作用し、こちら側(生きること)に亮をグッと引き寄せられました。亮が「亮の存在意義」を確認するための会話だったともいえます。
亮「でも、何かいいな」「一瞬仲間みたいになるけど、❶基本誰も興味ないじゃん。俺が、どこの誰とか。楽でいい」
百音「ごめん聞いた。島でのこと」「やめてもいいと思うよ」
(回想)亮「俺もう全部やめてもいいかな」
亮「だせえ。自分でそっちの道選んどいて今更そういうこと言うやつうぜえわ。❷おやじの代わりに俺がって。中学生だった息子が頑張る。いい話だよな」
百音「それは違う」「りょーちんは頑張ってきたよ、ずっと」(77話)
ーーその後、汐見湯のリビング。
モネの「こういう話ずっと聞きたかった」という言葉を受けて、自分が抱えきれないほど抱えてきたものをさらに具体的に言語化できます。
汐見湯リビングで三生の苦悩を聞く
百音「ううん。こういう話、ずっと聞きたかった気がする」
:
亮「話しても地獄。話さなくても地獄なんだよね。俺が話したら、みんな話せるようになんのかな」「もう大人だし。心を一つに、とか、そんなの無理だし。結局誰も何も言えないし、祈ってもUFOは来ない。俺ももう改造はされない。一生、ずっとこのまんま。でもそれはしょうがない」(78話)
亮は❶本当の自分を封じ込めること(最も被害の大きかった可哀想な人としてのレッテルを生きること)を頑張り続けているけど、その努力に見合う結果はどう頑張っても得られそうにない(と思い込んでいる)して、今後もその呪縛を受け入れたまま生き続けなければいけないという亮の苦悩。
これを受けて、三生が寄り添ってくれたこと、みんなが笑顔で包んでくれたことが、亮の「生きる気力」を一歩さらに積み上げたようでした。
亮「やっぱ、食えばよかったな、オムライス」「腹減った」(78話)
(黄色いオムライスは「太陽エネルギー」の代わりになる活力の象徴です)
((78話)亮とモネの「これで救われる」前後の読解は、まとめるのにちょっとパワーがいるので追って追記します)
ただ「救われる?」の直前に亮は新次にメールしています。
新次「船乗らなくて悪かったって。でもおやじもいいかげんにしろって」
亮はようやく父に本音を話せたシーンです。(79話)
亮が新次に向き合え、一方、新次も亮と向き合わなきゃいけないとの気づきがあった。これ以降、新次は亮本人をみてあげることができている=自分の存在意義を感じることができたのではないでしょうか。(救われる?時点では留守電で亮はまだ虚しさを突きつけられていますが…)
●亮まとめ
ーー亮の頑張っていた糸
❶本当の自分を封じ込めること(最も被害の大きかった可哀想な人としてのレッテルを生きること。父親にも亮自身をみてほしいということ)
❷(美波の代わりに)新次を支えること。新次の代わりに頑張ること。
亮の頑張りすぎた糸は亮の命を奪いそうになりますが、モネの電話が彼の意識をこちら側(生きること)に繋ぎ止めました。そしてモネの存在を感じる象徴である朝日とともに、亮は再び動き出すエネルギーを受け取っています。喫茶店でモネと話しモネの存在を近くに感じるとで、こちら側(生きること)にもう一歩引き寄せられた。東京の医者の彼氏がいたとしても、モネの存在そのものが彼に生きる意味を与えます。
モネが気持ちを聞きたかったと知ることで、亮は「話すも地獄」としながらも抱える苦悩を言語化し話すことができた。それを幼馴染も受け止め寄り添い「亮自身の存在」を認めてくれた。結果、オムライス食べたい!と思えるほどの生きる力・活力に一歩繋がっています。
こうして少しだけ前進し、生きる気力が湧いた直後だからこそ、新次が電話に出なかったことで存在意義への不安が再び揺らぎ、その直後にコインランドリーに入ってきたモネに縋った。モネ側はそれを受け入れられる体制になかった。
ただ、生きることを諦めそうになった亮に生きる気力が湧いたことは事実です。ここからが心の復興のスタートに立ったといえるのだと思います。
父に「親父もいい加減にしろ」と本音を伝えることができ、新次はもっと亮自身をみようと気づけました。亮は気仙沼に戻った後、自分の存在意義を見失うことはなくなりそうです。
●未知はモネと「シンクロ」している〜亮と未知の「ビミョー」だけど優しい関係
亮と未知は2016年に心の傷が表面化しました。
その始まりにあたる12週にあえて差し込まれているモネと未知のシンクロシーンがあります。
↓まずは前振り
耕治「案外、影響受けてんだな、お互いに」(56話)
↓シンクロして悩むシーン
東京百音「人の役に立ちたいとか結局自分のため…」
(机に顔を伏せる)「う~ん…」
亀島未知「う~ん…」(机に顔を伏せる)(58話)
思い出すのは、8週での亮のセリフ。
亮「ハハ、シンクロしてんな」
亮「ハハっおもしれぇ」
心身症回復までのストーリーの姉妹シンクロ。
2016年ーー奇しくも未知18歳。モネが登米に行ったのも18歳。
モネは心の傷を抱えて登米にいき、同じく心の傷を抱えた菅波とニコイチで「心の洗濯」を始めます。偶然にもトラウマ回復の自助グループの成立です。
では未知の「心の洗濯」をニコイチでする相手は?
亮もまた数年にわたって同じように地元で頑張んばり続け、同じタイミングで頑張りの糸が切れ心の傷が溢れ出しました。
何より未知は16週終わりに、今度はお姉ちゃんの代わりではなく、未知として亮を支える決意をしています。
2016年16週をあとに、未知と亮もまた2人で「自助グループ活動」が成り立ち、トラウマ回復のニコイチとなり「心の洗濯」をはじめたと捉えてもよさそうです。
「亮と未知」も「菅波と百音」と同様、自助グループ活動のペアですので、側から見ていると恋愛とは一線を画した「ビミョーな関係」に見えるのだと思います。
〈その他シンクロメモ〉
・父電話に出ないモネ(1週)
母電話に出ない未知(15週)
・初盆布団/音楽の話で寝るモネ(3週)
東京布団/島がいい+試験場の話で寝る未知(15週)
・「違う」未知(94話)
・「違う」百音(94話)
(94話で姉妹間で抱いていた傷は足並み揃った模様)
:
次の心の問題に向きあい、それぞれの自助グループ解除に向けて2人ともまたシンクロした動きをしそうです。