「おかえりモネ」〜モネにとっての太陽
おかえりモネは「水の循環」のお話です。
龍己「その山の葉っぱさんたちが、海の栄養になんのさ。山は海とつながってるんだ。なんも関係ねえように見えるもんが、何かの役に立つっていうことは、世の中にいっぱいあるんだよ」百音「じゃあみんな誰かの役に立てんの?」
何度も何度も繰り返される「水の循環」を説明するセリフから、「そこにいるだけでみんな誰かの役に立っている」ことが、この物語で最も伝えたいことのひとつだと感じています。
その「水の循環」で、大切な役割を担っているのが「太陽」です。そして、太陽は「そこにいるだけで誰かを動かすエネルギーを与える存在」です。
この物語にとってとても大切なことなので、モネもテキストにマーカーを引いています↓。(声に出して唱え、さらに復唱しています)
太陽のように「そこにいるだけでみんな誰かの役に立っている」こと
このメッセージを伝えるために「おかえりモネ」全話通して「色」を仕込んでいると別noteでまとめました。そのnoteで、「そこにいるだけでみんな誰かの役に立っている」を表現するのに全話通して【黄色】を用いていると書いてきましたが、
ーーこの物語の主人公であるモネ自身を強く突き動かすエネルギーの表現だけは【本物の太陽】の映像を用いてそうです。
その存在がエネルギーとなり、モネの前向きな力に繋がる強い〈衝動〉を起こす。
ーーこれは、この物語での〈愛〉そのものだといえそうです。
そして、太陽が映った場面から、モネが突き動かされた理由を見ていくと自ずと相手役が「りょーちん」だと浮き彫りになります。
モネは「何もできなかった」「無力で何の役にも立たない自分は亮の近くにいる資格がない」と思い込んでいるので、自分を亮から遠ざけつつも潜在的に無意識に亮の存在=太陽に動かされ循環し亮の元に戻っていく。そんな物語だと思います。(↓このnoteが前提となります)
モネが「太陽」からエネルギーをもらう場面〜登米・東京
ちょっとあやふやな部分もありますが記憶が確かそうな場面をピックアップしていきます。
●3週初盆>気象予報の勉強をする「内発的動機付け」となる太陽《☀︎①》
明日美たちが風に飛ばされた帽子を追ってはけた後、亮とモネは2人で日の出《☀︎①》をみながら話します。「海風陸風」ついて亮の口から聞き、亮のいる海もモネの住む山も「空で繋がってる」ことを実感します。
《☀︎①》海からの風を感じる2人
亮「海風、回ってきたなあ。雲多いけど、この分だと今日は一日降らないかな」
百音「海風! 海風…。これだ…」「ううん。えっ、何で雨降らないって分かんの?昨日月にかさかかってたよ?天気悪くなるんじゃない?」
亮「うん、でも、亀山に雲ないし。漁師は風向きと天気、必須だから」
このシーンの詳細は
次のnoteの目次「2.気象予報士への《内発的動機付け》〜初盆浜辺で亮と日の出をみる場面」に記載しています。
4週ラスト、船で本土に向かうシーンで朝岡セリフの回想が入ります。これは初盆帰省でモネが気づいたことのまとめです。
朝岡「山は水を介して空とつながっています。海もそうです。永浦さんは、海で育って海のことを知っている人ですし、山のことも知ろうとしている。なら、空のことも知るべきです」
百音「全部つながってる…」
牡蠣ナレ(やっと見つけたんだね、よかったね。)
亮と気象予報の結びつきに気づき、気象予報の勉強をする「内発的動機付け」となりモネは翌週から「勉強はじめました(第5週タイトル)」。亮の存在《☀︎①》がモネは空と水を知ることに本腰を入れるエネルギーになっています。
● 5週「勉強はじめました」(23.24話)>勉強を後押しする太陽《☀︎②》
5週最初のバス停のシーン。
百音「何か困ってんなら…。何もできないけど、メールとか、電話とか、聞くから」(背を向けたままの亮)
聞くから…といいつつモネは全く聞けそうにないオーラを出していました。「何もできない」から話を聞いてあげる資格がないと思っているモネ。「何かできる」力のある自分になれば聞いてあげられる。これが「気象予報」を勉強する背中を押します。力強い海風のように。
(3週)亮の存在によって勉強する前向きなエネルギーを得たモネは、(5週はじめに)亮の海風に背中を押されバスで登米の山に登っていきます。
ーー「蒸発は主に太陽エネルギーによって起こります」
登米では菅波先生からの学習サポートを受けてモネは「気象予報士」を目指し「勉強はじめました」。
・熊谷「山の雲は、下から来んだ」
百音「雲は下から…?」(のぞきこむ百音)
百音「下…」(23話)
・知識は武器ですと知る(24話)
・モネは洗濯を干しながら手元のテキストに書いている文言を読み上げます。
「蒸発は主に太陽エネルギーによって起こります」
青空を見る《☀︎②》
・モネ「蒸発・・・太陽」と呟き、笑顔で駆け出す
牡蠣ナレ(何だかさっぱり分からないけど、どうやら勉強が役に立ちそうね)(24話)
ーー復唱された台詞
雲は下から→蒸発した水は海からやってくる
《☀︎②》蒸発・太陽→その力を与えるのは太陽エネルギー
ここで亮の住む海とモネの今いる山は、空で繋がっているとの気づきを山でも実感します。
「無力で何もできなかった」と思い込んでいるモネは、「強くて人の役に立てる力をもちたい」という気持ちが強くなります。
バス停で「何もできない」から話を聞いてあげる資格がないと思ったモネは、「何かできる」力を持つ自分になれば聞いてあげられると感じています。
そんなモネにとって「知識は武器です」という言葉は、「気象予報の勉強をすれば自分も強い人間になれるかも」と思える言葉だったはずです。
「雲は下からやってくる」という熊さんからの教えで、山でも亮の存在を感じることができたモネ。《☀︎②》の太陽は、「亮の役に立てる人間になる」ために知識を学ぼう!と前に進む力を与えたエネルギーです。(モネの「誰かの役に立ちたい」「何もできなかった」という思いはこちらのnoteにまとめています)
ーーその後に入った牡蠣ナレの「勉強が役に立ちそう」は気象予報の勉強が次の2つの役に立つことをさしています。
①森林組合で今抱えている問題、木材乾燥の役に立つことと
②気象予報の勉強をはじめることが、モネが自信を取り戻していくことに繋がり、ハッピーエンドへの近道をたどること
《☀︎②》の太陽(=亮)の存在をうけて、蒸発するエネルギーを得た水(=モネ)。この後モネは前向きな力を発揮し、ビニールハウス乾燥のアイデアを思いつき大活躍しています。
●「3.気象予報士合格直前の《覚悟》を決めた8週」の後半に「太陽」が入ってそうなんだけど、思い出せないので気づき次第追記します。。
●82話>モネが振り返った故郷の太陽《☀︎③》《☀︎④》
2016年11月(16週)菅波に縋ったモネ。この時点でモネは亮を救えなかった。まだモネには救える力がなかった。無力だった。(亮側からみた16週はこちらのnote)。
亮のことはモネの中でさらに封じ込めて菅波と歩み始めた数ヶ月ですが、モネの心のバランスも整い始めた2017年3月、社内新規事業プレゼンが行われます。
そこで、野坂は阪神淡路で「被災した思いからの夢を形にした」新規事業をプレゼンをします。そのプレゼンのフォローを突如頼まれたモネ。野坂のこの事業への思いを汲んで前に出て自分の実体験を語ります。皆の前で実体験を語る=過去を振り返ることとなり、そこでモネは前向きに過去を語ること(過去の記憶を取り出すこと)が初めてできたのではないでしょうか。
百音「あの私の祖父は漁師でカキの養殖業をやっているんですが海の仕事の人なのに、昔から山に木を植えてたんです」…
(回想)龍己「その山の葉っぱさんたちが海の栄養になんのさ。山は海とつながってるんだ。何も関係ねえように見えるもんが何かの役に立つっていうことは、世の中にいっぱいあるんだよ」《☀︎③》
百音「海の水も山や森や木がバランスを取ってくれているんだって山にいた時に学びました。世界の全ての根源は水であると言ったのは、ギリシャの七賢人のタレスさんですが・・・。あっ、いや・・・朝岡さんも、言ってました。気象は全部水でつながってるって。だから、その山に木を植えることも気象の仕事と無関係ではないと思います」
《☀︎③》の太陽は、野坂が「被災した思いからの夢を形にした」新規事業内容の山に木を植えることが気象の仕事と無関係でないように、モネも気象の仕事は海とも繋がっていることを思い出した。モネの仕事が亮の役に立つ力があると改めて紐付けられていく瞬間です。
百音「それに、たった一度の大雨で、町が壊れてしまうのは悲しいです。」《☀︎④》「守れるなら守りたいと思います」
野坂「守れます!あの私はそれを目指します!」
「大切な人の大切なものを失う姿を見たくない」という思いから《☀︎④》の太陽=亮の存在がモネの中で強いエネルギーを湧き起こします。それらを「守れるなら守りたい」と思わせます。
亮のそばに行くためにはまず、モネが「役に立つ力のある人間」にならなければならない。モネの思考回路はまだここです。
ーーここからモネは「役に立つ力のある人間」になるために、2019年9月の「全国津々浦々計画」に向かって動き始めます。そしてそのエネルギーとなったのが上記《☀︎③》《☀︎④》の太陽=亮の存在です。
●88-90話 台風12号報道>「守りたい」「目の前の笑顔がみたい」故郷への想いを強める太陽《☀︎⑤》《☀︎⑥》《強い☀︎⑦》
2019年9月の台風12号。今までに経験したことのない大型台風が発生し、モネは自分がえた力で「誰かの命を守る行動」に駆り立てられます。
朝岡「本格的に雨が降りだすのが14日夜。あと2日あります。リードタイムは有効に使いましょう」「報道お願いします」
百音莉子内田「行ってきます」
《ビル反射☀︎⑤》
報道局に向かう(88話)
台風上陸2日前
百音「どう伝えるか・・・ですよね」
高村「永浦さん、その辺アイデア出してくれない?」…
百音「分かりました。少しでも多くの人に避難行動を取ってもらえるように考えます」
高村「雨が降り始めるまであと1日」内田「リードタイムか」
《☀︎⑥》
百音「少し先の未来?」「これから先、どうなるか…」
汐見湯にみんなに2階に避難するように伝え、台風シミュレーターを使った報道をすることで避難行動に結びつく報道ができる(88話)
気象予報士の資格をとって誰かの役に立つ力をつけたモネ。
亮のために「役に立てる人間になりたい」と思い続けた力を発揮するタイミングでもあります。それを支えた亮の存在が《ビル反射☀︎⑤》《☀︎⑥》の太陽となって、命を守る呼びかけ(避難行動を促す報道)を行うモネの行動を起こすエネルギーとなりました。
ネット配信で1000→2000→3000と閲覧数が伸びている様子を見守るモネ。
台風一過《強い☀︎⑦》
朝岡「あっ、久々に聞きましたねそれ。永浦さんがやろうとしてる、「あなたの町の気象予報士」も、似てるんじゃないですか? 一人一人と向き合うという意味で」「もし本気でやるつもりなら応援しますよ」
(回想)龍己「モネのおがげでみんな助かったよ」
(回想)鮫島「永浦さんも、一緒にいてくれて本当にありがとう」
百音「私は、成果を求めてるのかもしれません。私は目の前にいる人たちが、よかったって、笑顔になるのが見たい。自分が役に立ったって思いたい。結局、あなたのおかげで助かりましたって、言われたいだけなんだと思います」
:
(回想)百音「天気予報は、全国の人のため。それも分かります。でも、私がこの仕事で守りたいのは、この幼なじみみたいな、自分の大切な人たちなんです。」
百音「ああ・・・。考えてること全然変わってない」
朝岡「だとしたら、それが本当にあなたのやりたいことです。いいじゃないですか。これからは、人の顔が見える距離感で仕事をすることが、より求められるようになると思いますよ」
避難行動を適切に伝えることで命を守る仕事ができたことは、モネの「人の役に立てる」力がついた自信に繋がりました。
ーーモネの意識の変化をたどると次の流れになります
・亮のそばに行くために「人の役に立つ力のある人間」になる必要があると思い込んでいる(→別note)
↓
・台風12号の避難行動を呼びかけ気象の予報で「命を守れた」「人の役に立てる力をもてた」
↓
・モネの中で彼の近くにいる資格がないと思っていた事を乗り越えた
↓
《強い☀︎⑦》
↓
+ホルン(力なんてなくてもいい)
+竜巻後の帰省(何もできなくても受け入れられる明るい現場)
・地元へ戻る許可を自分に出せた
↓
・次は地元で仕事をしてみんなの役に立てれば、亮の役に立てる力があるって事になるかも
台風後、「目の前の笑顔がみたい」と言えたことは、地元に戻ってもいいと自分で思えた事です。
モネの根底にずっと敷かれていた亮への思いが《強い☀︎⑦》の太陽となって彼女を押し動かし、この後地元へ向かわせるエネルギーとなっています。
モネの「何もできなかった」「守りたい」「目の前の笑顔がみたい」 の対象は亮であり、①〜⑦はモネの潜在下にある【亮の存在】に繋がります。
亮がモネの原動力です。
モネが「太陽」からエネルギーをもらう場面〜気仙沼
99話で「綺麗事にしか聞こえない…今はそう思ってる」と亮がいった次の話で、子どもの秋祭りの中止を進言しアワビの開口日を予測し、結果どちらの予報も的中します。
その(100話)鮑漁の日の朝日《強い☀︎⑧》。
これはやっぱりモネの中の亮の存在によるエネルギーだと思います。
アワビ開口&風予想で地元の役に立てた自信が、亮に認めてもらえる手応えにつながったからモネの中で感じることができた亮の存在。
「地元の役に立てた!自分も人の役に立てる力がついた。亮のそばにいる資格がある」とモネの心の距離は亮に近づいていきます(モネは無自覚)
高橋さんの「助けたい何とかしたい」「がんばってね」は、モネ自身が自分で感じた潜在的な決意の台詞でもあり、そこに繋がったエネルギーはやはり亮に認めてもらいたいという思いです。
99話で亮が放った「綺麗事にしか聞こえない…今はそう思ってる」は、モネ自信もそう思ってる事であり、登米から一歩一歩進めてきたモネの「役に立つ事」への原動力にもなっています。
この直後に宇田川の「海にのぼる太陽」の絵が事務所に飾られます。
今まで波があって細切れで突発的に出てた前向きな力を、絵の太陽から継続的に受けていけそうです。そして登米東京編を踏まえると、この太陽は亮からのエネルギーだと私は思います。
亮が「太陽」からエネルギーをもらう場面
ちなみに逆ver.モネの存在が亮の力になっている太陽は、
●初盆日の出《☀︎❶》
●76話)亮「もう全部やめていいかな」の後の日の出《☀︎❷》
特に❷は亮の命を繋ぎとめた尊い太陽かと。
そのことについては、↓こちらのnoteにまとめてます。