「おかえりモネ」心の洗濯②〜『コップの実験』は溢れ出した心の傷
トラウマを抱えて登米に来たモネと菅波は偶然が重なり「トラウマ回復のニコイチ」として自助グループ活動(同じような傷を負う者がグループとなり、感情を共有しながら心の傷を癒していく治療)を行っています。(→詳しくはこちらのnote)
菅波とモネは2人で過ごす時間そのものが、2人の「心の洗濯」になっています。ここではその『コップの実験』シーンをピックアップして整理していきたいと思います。
「心の洗濯」=「トラウマ回復」≒「心の復興」 です。
『飽和水蒸気量』は抱えられる心の容量の比喩
菅波先生とモネが夜のカフェで始めた勉強会。
ーーこの勉強会にも2つの意味があります。
1.気象予報士の基礎知識の勉強
2.菅波とモネのトラウマ回復のための自助グループ活動
1.の勉強は画面から受けた情報のそのままです。
2.の活動は、それぞれ比喩表現が多用されています。
2.のひとつが『雲ができるしくみ』を学ぶコップの実験です。
この実験シーンでは「空気が冷やされると、水や氷が現れる」が強調されています。4回説明を繰り返した上、「このことだけ考えましょう」「このイメージを叩き込んでください」との強調まで入っています。
菅波「まずは、雨が降る仕組み、空気は冷やされると、水や氷が現れる。この一つのことだけを考えましょう。ほかは考えないでください。」
「空気には、目に見えていないだけで水蒸気が含まれています。この、全ての空気がそうです。この空気が取り込める水分の量は、気温、つまり温度によって決まっています。温度が高いと、水蒸気をたくさん含むことができて、低いと、ちょっとしか含むことができません」
百音「なぜ・・・」
菅波「ここで「なぜ」はやめておきましょう。これは、飽和水蒸気量といって、厳密に理解するのがとてつもなく難しい現象なんです」
「それで、空気が冷やされると、溶けていられなくなった分の水が水滴となって現れる。それが雨です」(グラスに氷を入れる)
菅波「見ていてください」(しばらく経つとグラスの表面に水滴)
菅波「これが、雨です」
「9月は気温が高いので、空気は水分を多く含むことができます。今日は雨が降ったので、恐らく空気中の水分は多い。そこに冷えたグラスを置くとグラスと接した空気が冷やされて温度が下がり、水分を含んでいられなくなって、その分が水滴となって現れます」
「雨が降るのもこの仕組みです。空気は冷やされると、水や氷が現れる。まずはこのイメージを、頭にたたき込んでください。」(23話)
ここまで不自然に強調していると言うことは、単なる「雲ができる仕組みを説明している」だけでなく「物語のキーになってくる内容」だと捉えることが自然です。
上記、実験は次のように捉えることができます。
空気が冷やされる(心の状態が悪くなる)と溶けていられなくなった分の水(傷)が水滴(トラウマ=治療が必要な心の傷)となって表れる
ーー菅波先生は、コップを覗き込みじっくり観察後、「雲ができるのはまた次回」と区切りました。
「空気は冷やされると、水や氷が現れる」=心の許容量がいっぱいになり「心の傷が溢れている」ことを2人で共有することまでが、この時点でとても重要なことだったと言えます。
この勉強会で、「2.菅波とモネのトラウマ回復のための自助グループ活動」が成立していると受け取れます。
このあとコップを洗うシーンが入ります。2人でその傷を洗い流すことを示唆しているようです。
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亮が汐見湯に突然現れる直前、このコップの実験の回想が挟まれます。
「空気が冷やされる(心の状態が悪くなる)と溶けていられなくなった分の水(傷)が水滴(トラウマ=治療が必要な心の傷)となって表れる」
登米での菅波先生とモネと同じように、亮の心の傷も抱え切れなくなって溢れている状態を表していたといえます。
(↑tweet内、暗喩ではなく比喩ですね)
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▼「菅波とモネ」の2人が「心の洗濯」をしている経緯はこちら
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