「おかえりモネ」〜菅波とモネの優しい関係とは〜登米編
登米でのモネは次の2軸で動いています。
①「心の復興」を進める
②「気象予報士の資格試験取得まで」
このnoteでは【①「心の復興」を進める】ことについて、整理していきたいと思います。
整理していくと、菅波とモネは「心が復興」するまでの間お互いが欠かせない存在であり、それは運命的な優しい関係といえます。
モネはどんな子か?
亮との関係を壊した「水」をモネは受け入れられないでいることが、別noteのインデックス「モネのトラウマは「水害」で整理し、見えてきました。
とにかく、モネは1話から心に何かを抱えている描写が続きます。
登場人物がモネを語るセリフを集めていくと、登米に来る前のモネは心を閉ざし続けていたようです。
上tweetに続いて
・龍己が電話越しのモネの笑い声に驚き安心してた事
・(笑わなくなってた。暗くなった的なことを言ってたような…)
・未知が必要以上に頑張ってた事、それを亜哉子もモネがあんなだったから…と言っていたこと など
不登校・引きこもりは言い過ぎかもしれませんが、かなり塞ぎ込んでいたことは明らかです。
これらを踏まえたこの物語の前提として、モネが震災でPTSDを発症し、その回復過程を見守る物語だとするとしっくりくるところが多々あります。
そこに、思春期のこころの発達「自分探し」が絡み合い、恋愛感情や姉妹・親子関係、友人関係がややこしく作用しているようです。
ドラマ上の人物を勝手に診断し、ましてや素人が病名をあてはめる行為を私は好みませんが、「おかえりモネ」を読み解くにあたりトラウマ回復過程を追う際、専門資料と照らし合わせる病名が必要なので、あえてPTSDと書きます。そして、登米ではその心の傷を癒し回復していく過程が描かれていると思います。
実際、阪神淡路や東日本の震災後、PTSDが今後の課題として頻繁に取り上げられています。
震災後モネはPTSDを発症していたと仮定し、専門資料を元に整理すると次の通りとなります。
【モネプロファイル(PTSD視点)】
・中学時代→元気・活動的・頑張り屋・吹奏楽部部長
・思春期15歳→震災・仲間との体験共有分断(PTSD発症)→
・高校時代→不登校or引きこもり(PTSD精神麻痺症状)
・高校卒業→島を出る(PTSD回避症状→いろいろ逃げる)
・18歳→登米北上川移流霧など涙(PTSD再体験症状)
・18〜20歳→菅波先生との自助グループ/森林組合で自己肯定感育成(これ以降PTSD回復プロセスに沿ってる)
(資料1:東京大学大学院教育学研究科附属心理相談室公開講座資料「回復する力とは何か」)
とにかく、モネは深い心の傷を負って登米にきています。
モネは菅波とニコイチで「心の復興(洗濯)」を進めている
その登米シーンの最初に「洗濯機」の中からモネを見上げるカットから始まります(1話)。
洗濯機もまた水がぐるぐると回っている小さな「水の循環」の象徴です。
1話から登米でモネは心の傷を癒す「心の洗濯」を始めているようです。
同時に菅波もまた心の傷を抱えて登米にきており「心の洗濯」をします。
同じような傷を負う者がグループとなり、感情を共有しながら心の傷を癒していく治療を「自助グループ活動」といいます。
菅波・モネは偶然にも2人で「自助グループ活動」が成り立ち、トラウマ回復のニコイチとなり「心の洗濯」をしていたと言えます。
登米での菅波とモネの状況を整理すると次の通りとなります。
「心の洗濯(兼自分探し)の旅」として
・モネは亀島から登米に逃げてきてます。
・菅波先生も東京から登米に(中村先生に)送られてきてます。
・モネのトラウマは典型的な震災のPTSD。フラッシュバックを起こすキーは<水害>
・菅波のトラウマは医療判断ミスによる患者の人生剥奪。フラッシュバックを起こすキーは<あなたのおかげ>
(→モネのトラウマについて詳しくはこちらのnoteインデックス「モネのトラウマは「水害」)
(→菅波のトラウマについて詳しくはこちら)
登米でお互い心の洗濯始め、登米終盤には心のバランスが整い治療が進んでいることが読み取れました。
・モネは登米で心のバランスを取り戻すことができ、家族にも話せた。
・菅波先生も少しずつバランスを取り戻しつつあります。
実際、震災後のPTSD治療をまとめた資料でも自助グループ活動の有効性が書かれています。
PTSDの回復 過程を阻害するものは疎外である。PTSDの治療で自助グループ活動や集団療法が強調されているのは、そのためであろう。震災後のこころのケア活動でも疎外状況になりやすい仮 設住宅にふれあいの場を作る努力がされている。(資料2:PTSDからの回復過程)
これを登米で菅波先生とモネが偶然にも2人で実践することができていました。ある意味運命的です。
菅波とモネの優しい関係
2014年春、「心の傷」を抱えた状態で登米で出会った菅波とモネ。
そこから菅波とモネの2人は、お互いがお互いの傷に踏み込みすぎることはせず、お互いの傷を知らないからこそ気遣いすぎる事もなく、少しずつ吐き出していくことで、穏やかにゆっくりと心のバランスを取り戻していきます。
そして、登米後半から心のバランスが整い始め、お互いの悩みを知り、お互いの傷を知り、自分の傷を打ち明け知って共感を得ることで、熱伝導が起こり心の氷が溶けて「心の洗濯」「心の治療」が進んでいきます。
登米編と東京編で、
モネは菅波の力を借りて「心の復興」を進めています。
こうした偶然の出会いにより相互で治癒していく関係が成り立ったこの2人は、「心が復興」するまでの間お互いが欠かせない存在であり、それは運命的な優しい関係といえるのではないでしょうか。
ドラマ中「心の洗濯」の場面は、とても抽象的な表現で描かれています。
代表的なものが、東京での「心の洗濯」の舞台=コインランドリーです。
その他、抽象的ですがそれとわかる場面を次のnoteでピックアップしてまとめました。▼「おかえりモネ」〜「心の洗濯」の場面ピックアップ
「心の復興」〜トラウマを回復する力とは何か
「心の洗濯」の完了は、「心が復興」できたことを意味します。
では何をもって震災によるPTSD(トラウマ)を回復した状態になるというのか。
専門的には次の2つをさすようです。
<回復する力とは何か>
① トラウマを思い出して考える「心の自由」としまっておける「心の自由」の持ち合わせ《=傘》
②新たな自分を育くむ道のりを歩むこと(以前の自分に戻る事ではなく)
(資料1:東京大学大学院教育学研究科附属心理相談室公開講座資料「回復する力とは何か」)
モネと菅波もトラウマ回復プロセスを辿り、まずは①のトラウマを出し入れする自由を登米&東京編で手に入れていっているのではないでしょうか。気仙沼編では②かと。
この資料、モネだけでなく新次や亮などの立場を考えて、震災によるPTSDを頭の中で整理するのにとても役立ちました。ドラマから離れて現実でも日本全国で災害が多発する今、自分自身や自分の身近に何が起きるかわかりません。しっかり頭の中で整理しておけてよかったなと思っています。ページ数もさほど多くないので、ぜひ読んでみてください。
「菅波とモネ」と同様に「亮と未知」も「トラウマ回復のニコイチ」として「心の洗濯」をしています↓