間違えたくて間違えているわけじゃない
どの年齢のどのお子さんの学習相談を受けていても、必ずといっていいほど相談されることが多いのが「ケアレスミスの多さ」。
それは、見直しが十分でないから起こっている場合が多い。
最初に言っておくけれど、今日はちょっと長い。
塾講師時代、小学生のクラスで授業の中の小テストの点数があまり芳しくないクラスがあった。
忘れ物や宿題をやってこないことも日常茶飯事で、よくよく答案を見てみると、ケアレスミスによる減点が多い子ばかりだった。
しかも、生徒たちは意に介さず、というかすでに諦めモードで、ミナオシ?ナニソレオイシイノ?状態に近かったので、なんとかしなければと思った。
私はどちらかというと、言霊ってあると思っている。だから、
「今日は(クラス)全員で100点を取るよ!」
と生徒が来る前の教室の黒板に毎回書き続け、生徒が来てテストが始まる前に口で伝え、テスト中の見直しの時にも同じことをもう一度言うなど、「えー」「無理ー」「絶対出来ない」と口々に話す生徒たちを後目に、まるで呪文のように繰り返した。
今思い返しても本当にしつこい。
(ちなみに当時の同僚には「なんだかいつも授業の最初に生徒に圧をかけてるよね。」と笑われたこともある。)
でも、人間って不思議なもので、言い続けているとだんだん実現出来そうな気持ちになってくる。
しつこくしつこく言っているうちに、最初のうちはネガティブなことを言っていた子どもたちが、だんだん自身のケアレスミスで悔しがるようになってきた。
もちろん、言葉掛け以外でも取り組んだことはいくつかある。
テストのやり方も、たとえば解くのに10分かかりそうな小テストだとしたら、見直しの時間も8〜10分追加で取り、もう飽きるくらい見直しや解き直し、途中式や筆算の検証をさせた。
1時間の授業の中で進む単元はもちろん決まっていたが、新しい単元の学習にあてる時間を多少削ってでも、見直しをさせることの方に時間を割いた。
そして、テストの結果が満点でもそうでなくても、答案には1人ひとりにメッセージを書いて返却した。わからない問題は、生徒を居残りさせてでも自分でできるまでやらせた。
もちろん保護者の方の理解や協力があってこそできたこと。本当に本当にありがたかった…。
もう一つ、私が常々伝えていたことがある。
「一生懸命頑張って良い点数を取れたり、試験に合格できたりしたら嬉しいよね。おうちの人や他の先生も喜んでくれるかもしれないね。
反対に、せっかくこんなに頑張ってくれているのに、点数が悪かったり答えが間違っていたりしたら、くやしかったり悲しかったり、嫌な思いをすることが多くなるでしょう。
本当なら正解できる問題を正解できなかった時、一番くやしい思いをするのは誰?
私は、いつも頑張っているみんなにたくさんうれしい気持ちの方を感じてほしい。だから、しつこいってわかっているけれど、毎回きちんと見直しをするように伝えているんだよ。」
これは半分こじつけのようだけれど、私自身は本気でそう思っている。
人間らしく伝えること。これも結構大切かもしれない。
さて、これらの取り組みが功を奏してきたのは、始めてから2〜3ヶ月後のこと。最初は50点くらいだった平均点が徐々に上がり、先に書いた忘れ物や宿題の取り組みの状況が大幅に改善されてきた。
そして平均点が80〜90点台をうろうろしている時期を経て、ついに全員で100点を取ることが出来たのだ。
生徒たちも、「おお…すごい…」と、驚いたような信じられないような、なんとも言えない嬉しそうな、充実した顔をしていた。その顔を見た瞬間、私は涙をこらえきれなくなってしまった。
実はこれ以降、全員が100点を取ることが劇的に増えた、というわけではない。
でも、あの彼らの表情を見たら、もう彼らは自分の力でできる、大丈夫だと確信した。
そして、この1回で感じた気持ちが彼らの心の中に少しでも残ってくれていれば、それがいずれ彼らを助ける瞬間がやってくるかもしれない、と思った。
日頃の学習の中で大切にしたいなと思うステップはいくつかあるのだが、その中で私が特に大切にしたいと思っているのが、「見直し」だ。
ケアレスミスを防ぐには、次の3つのことが大切だと思う。
①モチベーションを上げること
②自分のケアレスミスをきちんと認めること
②見直しの経験を積んで、自分のくせを見つけること
だれも間違えたくて間違えているわけではない。
一方で、ケアレスミスをするのは癖になっているところもある。だから、粘り強く根気強くできるように声を掛け続けることが、子どものケアレスミスを減らす第一歩なのかもしれない。
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