「えんとつ町のプペル」を今見ることの意味
信じ抜くこと。
たとえ今は星が見えないとしても。。
元旦に希望に満ちた映画を観に行けて良かった。
キングコングの西野亮廣という一人の男の脳の中身を垣間見る。
彼の伝えたい熱いメッセージが満載でありながら、アニメーションとしてもさすがのスタジオ4℃という365度縦横無尽に駆け巡るスピード感に満ちている。
昔、スタジオ4℃と実写映画の劇中アニメーション制作をご一緒して何度もスタジオに通ったことがあるけど、高い技術とセンス溢れる熱いクリエイティブ集団だと思う。
だから西野×スタジオ4℃のコラボレーションというのがこの作品の勝ち目だったと思う。
全編に軽快さと疾走感があるのだけど、特に「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」のトロッコオマージュが最高でワクワクした✨
元々、絵本「えんとつ町のプペル」は読んでいなかったけど気にはなっていた。彼が絵本制作当初から映画化を考えていたのだから、その執念は凄い。
舞台は煙突だらけの「えんとつ町」で、煙があちらこちらで上がるその町は黒い煙に覆われ、住人たちは星が輝く夜空を知らない。
ハロウィンの夜に少年ルビッチ(芦田愛菜の声がいい!)の前にゴミ人間プペル(窪田正孝の声もいい!)が現れる。
2人は友だちになるのだけど、プペルは異端者として指名手配され追われる身。隠れながら二人は「あの煙の向こう側には何かある」と信じて、友情を育み、挑戦を止めない。
でもそんな2人を阻もうとする人々。特に星を見ようとする2人が憎くて仕方がない少年アントニオの心の変遷が肝だ。声は伊藤沙莉でうまい!他に声優としての藤森慎吾も良かった。
なぜ人はそうまでして異端を叩くのか。
それは、認めてしまえば自分が捨てた夢や価値観が間違っていたって実証されてしまうから。でも誰の心にも星を見る者を嫉妬するアントニオはいる。一方で星を見続けるルビッチもいる。
どっちの自分だって自分だ。
ふと思う。
夢を持てば笑われて発言すれば叩かれて、、そんな風潮のSNS社会でいかに夢や希望を持ち続けられるか。
自分の道を信じ続けられるか。
夢を捨てた大人たちが夢を未だに持ち続ける人を叩く。人を下げて安心する、相対的自己保全の哀しさが人間心理にはある。
それでも上を見上げて行動するには強さと優しさがいる。
その強さと優しさの根っこを体現する父ブルーノと息子ルビッチのエピソードもぐっとくる。
父ブルーノの台詞が心に響く。
他の誰も見ていなくてもいい。
黒い煙のその先に
お前が光を見たのなら行動しろ。
お前がその目で見たものが真実だ。
あの日、あの時、あの光を見た自分を信じろ。
信じ抜くんだ。
たとえ一人になっても。
そして全てが繋がるクライマックスが泣ける。
この作品は、何かがしたい、何かに挫折した、何かに悶えてる、でも諦めたくない人へのエールの物語だ。
一見、子どもが楽しいメルヘンな世界観に包んだ、実は大人を鼓舞する勇気溢れる物語だ。
そして、この物語の煙に包まれた街はそのままコロナウィルスに見舞われた今の世界に置き換えられる。
どこにも行けないような閉塞感の中で見えない星を掴もうとするハートってどんなものなのだろう。そのヒントを教えられたような気がした。
とにかく、刺さる人にはめちゃくちゃ刺さる映画だと思う。
少なくとも私には彼の伝えたいことが深く刺さった。
ピンとくる方は年初に劇場で観た方がいいと思う。
自分が本当に願う道に走り出す、ひとかけらの勇気が心に宿るはずだ。
世界に愛を届けるシネマエッセイストのクワン Q-Oneです。皆さまにとって、心に火が灯るような、ほっこりするような、ドキドキするような、勇気が出るような、そんな様々な色のシネマエッセイをこれからもお届けします。今年中に出版を目指しています。どうぞ末長くよろしくお願いします✨☺️✨