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月経のデザイン追記〜主観〜
エロくない下ネタシリーズ。
私は限界インハウスUIデザイナー。開発体験を上げるには、何を改善すれば良いかを考えたいたときに、月経の存在に思い至った。
ここまで、
月経が生産性に及ぼす影響と開発体験という考え方、月経を改善することによる社会全体の利益、標準化されていない月経に関する知識、ピル開発の歴史・ピルパニック、日本国内における認可・保険適用までの道のり、オンライン処方というガラパゴスビジネスについて見てきた。
ここまでネットで情報を拾い、なるべく客観的にまとめてきたが、今回は「追記」と題し、当事者として主観で月経について書きたい。
ピルが切れる些細な原因
私ははっきり言ってダメ人間だ。部屋は散らかり放題だし、仕事もダラダラと長時間やってしまう。しかし、生きていくために、最低限のことはできる。(レベルの低い話で恥ずかしいが)浪費して借金をしたり、仕事をサボって首になったり、公共料金を払い忘れてインフラを止められたりはしない。なぜ、そんなことができるのか?それはタスクが「習慣化」されているから。
毎月生活費が足りるのは、管理を習慣化しているから。毎朝仕事に行けるのは習慣化されているから。公共料金については自動引き落としにしているので、習慣にする必要すらない。繰り返しのタスクは難易度が低い。
ピルも同じだった。三ヶ月に一回、カレンダーに入れた日付に決まった病院へ行く。これだけなら簡単だ。何年も同じ病院に行っているので難易度はかなり低かった。しかし…
病院が移転してしまった。
それだけで、私はポンコツなのでタスクを完遂できなくなってしまった。結果から言えば、あと1シート分(28日)余裕を持って病院へ通っていれば、日程を調整して行き直すことができただろう。
(病院側だって、移転するならするって言ってくれたら良かったのに。と思ったけれど、移転の3ヶ月前から全患者にアナウンスするには、相当綿密に計画をしなければ難しいだろう。習慣化できていないのは病院側も同じだ。)
結局、ピルの補充は間に合わなかった。一日だってピルを飲まない日ができてしまうと意味がない。こうして、色々調べているうちにこの記事を書き、オンライン処方を試すことになった訳だが。
さて、再開するとしても、1回は自分の元来の月経を体験せざるを得ない。月経が終わってすぐにピルを再開することになるので、これは仕方がない。
数年ぶりの月経
数年ぶりの月経の感想は「こんなに、しんどかったっけ?」だった。もう何年もピルを飲んでおり、元々の自分の月経を忘れていた。
月経というと、肉体的な痛みがイメージされるかもしれないが、一番厄介なのは、精神状態が不安定になること。
分かりやすい例だと、月経が始まる数日前から、後輩が失敗した時の叱り方が感情的になってしまい、周りから「らしくない」と言われた。元々優しすぎると言われていたので丁度良いのかもしれないけど、感情的になって良いことはない。仕事以外でもナイーブになって、打たれ弱くなり、ちょっとしたことでストレスを感じる。そんな自分に一番イライラする。感情的な人間は嫌いだ。
そんな数日の最後に、手首と足首が急に冷え出す。幽霊でも取り憑いたのかってくらい激しい悪寒に苛まれる。(霊感はないし、幽霊なんてしらんけど)風邪引いたのか?とも思ったけど、他に症状はない。
そして、下痢。普段、どちらかといえば便秘気味なくらいで、最近はずっと快便だったのに、急に下痢。当然、セットで腹痛。丁度週末で休みだったので寝込んでいると…
急に、内臓を引きずり出される様な感覚がする。
あ〜こんなだった!
中学生の頃、世界の拷問を調べるのにハマった時期があったが(みんなもあるよね?)内臓を引き摺り出す系の拷問は、よく絵画に描かれているのもあって印象的だった。イメージはこれの下位互換。
下腹を定規の角でグリグリされるような痛み、その痛みがだんだん広がって、子宮の中から小人がアタタタタ!してるようなチクチクとした痛みに変わり、小人が溶けてしまったかのように、チクチクがジンジンとした広い痛みに変わり、骨盤が外れるような感覚がする。骨盤から下が別の物体になってしまったような感覚。骨盤、太もも、脛、足先に痛みが移動し、足が痺れた時のようにジンジンと下半身が痛む。
背筋にも痛みが伝わってきて、背骨がギシギシと痛む。乳房の中から小人がつねったような痛みがしたり、頭痛は当然のこと、肩こりが激しくなって、座っているのも辛い。横になりたい。
こうなると、精神状態は通常運転に戻るが、肉体的な痛みが激しすぎていつも通りの生活は不可能。痛み止めを飲んでも痛みがマシになるだけ。内臓を引きづり出されるような気持ち悪さは、しばらく軽減されない。
それと、おまけのようにやってくる血の感覚。確かに不快だが、その他の不快感や痛みが強すぎて、あくまで「おまけ」という感覚。個人的に、体外より体内、体内より精神を重視している。運動したり、立ち仕事が多い人だと、また違ってくるだろう。
これでも軽くなった
痛みを客観的に表現するのが難しいので、バロメーターとして経血の量を基準に考える。
内膜が剥がれ落ちる現象を月経というが、このときプロスタグランジンという物質が分泌され子宮の収縮を促す。このプロスタグランジンの分泌が増えすぎると収縮が強くなり、子宮の周囲の充血やうっ血に伴って痛みを感じる。詳しくは「月経のデザイン3」を参照。
経血が多い(剥がれる内膜の量が多い)ということは、子宮の収縮がたくさん必要ということで、痛みも強くなるという理屈に則ると、経血の量が多い程、痛みが強いと言える(?)。綺麗に比例するのかは、分からないけれど。
経血の量
□ 量が多いときでも、2時間に1度程度ナプキンを替えれば大丈夫 →正常
□ 量が多く、ナプキンが1時間ももたない →過多月経
□ 量が少なく、ナプキンが不要なくらい →過少月経
ピルを飲んでいない頃は、ナプキンが1時間もたないなんて日常茶飯事だった。上記のような肉体的な痛みが最低でも3日は続いた。そこから7日間は経血が止まらない。学生時代は苦労した。制服がスカートだと冷えが深刻だし、暖房設備も貧弱。カイロを貼りまくって、マフラーを腹巻きにしてやり過ごしていた。保護者の理解が得られないと病院にも行けない。
ピルを数年飲んだ今(加齢もあるかもしれないが)、小型のナプキンで3時間は余裕で耐えられる量になっていた。しかも、土日の2日で一番辛い悪寒がするような期間はほぼ終わっている。
あくまで主観だが、ピルを飲む前の経血の多い期間より、ピルを飲んだ後の経血が少なくなった今の方が、精神的にも肉体的にも楽になったと思う。つまり、障壁は取り除かれ開発体験は向上し、生産性は上がっている(はず。)
ピルへの感謝
今回、久々に月経を体験して、あらためてピルの有用性を実感した。はじめは避妊薬としてだったが、ピルの開発・普及に尽力したすべての人へ感謝したい。
避妊普及運動を主導したマーガレット・サンガー、研究への資金援助を行なったマコーミック、プロゲステロン合成の量産を成功させたラッセル・マーカー、ピルを完成させたグレゴリー・ピンカス、実用化のために尽力したジョン・ロック、
また、副作用を抑えた低容量ピルの開発をした1960年〜今までの研究者と、産業を支えてきた人々、そして、日本にピルを持ち込み、安全な形で患者の手元に届けてくれた製薬会社・医療関係者・政治を取り仕切った人々。
彼らがいなければ、今の私の人生はないと言っても過言ではない。(これは、過言ではない。)
この成功体験をネットには、このように書く。しかし、友人にはあまり話したりしない。
語ることは損でしかない
久々に月経を体験しながらこの記事を書いていて、体育の授業を月経の度に見学していたら男子に「女子は見学できていいよな〜」と揶揄われていたことを思い出した。反論する余裕もなく、顔面蒼白で床に横になっていた。「OK、あなたも内臓を引き摺り出してあげましょうか?」とは言わなかった。腹にマフラーを巻いてうずくまっている時に感じる視線も無視した。というか、理解されようと思わなかった。
また、月経について語ることは「恥ずかしいこと」であり、語れる機会がネット以外で与えられることがない。(子供時代は特に)下手に語ったら、「エロ」と混同されて面倒なことになる。当事者にとっては「生活」であり「障壁」だが、月経を「エロ」と捉える人もいる。
恥じらいがなかったとしても、月経について語って個人的に得なことがない。現に生理用品が買えないと言ったした人はネット上で叩かれている。その情報が嫌なのだとしたら、本人ではなくその情報を流したメディアを叩くべきではないか?と言っても、そうはならないのは目に見えているので、語るにはリスクを覚悟しなければならない。そのリスクに対して、個人的な利益は特にない。
ごく親しい間柄で利益を共有しており、既存の偏見より今後の利益を純粋に考えられ、口が硬く感情に流されない人とだけ、自分が月経に悩んでいた経験と、ピルという手段を使って、その障壁を突破したことを語ることができる。
私の場合、パートナーと、ごく親しい同僚、インターネット(趣味の範囲)のみで情報を公開するが、それ以外の友人・知人には言わない。「あいつはピルを飲んでいるらしい」という情報は、悪印象になることはあっても、好印象を与えることはないと思うからだ。
自分で情報を獲得し、自立した生活を営み、リスクを理解し自分で判断できる人だけが、この障壁を突破できる。嘆かわしいことに、こんなの怪しい情報商材の殺し文句のようではないか?
合理主義
この記事はあくまで私の主観について書いているので、あえて書くが個人的にフェミニストは嫌いだ。メディアで散々、感情的な挙動や既存の文化や産業を冒涜する姿を見せられて、好きになれる訳がない。
私に見えているフェミニストも、メディアに見せられているフェミニスト像でしかなく、フェミニストのごく一部だと思う。それは他の人にも共通する部分があると思うので、インターネットの隅っこ以外では喋りたくない。
ただ、フェミニスト・フェミニズムの好き嫌いも個人の感情でしかない。フェミニズム・フェミニストに対してどう感じるのか、女性や月経についてどう感じるのは個人の自由。そして、その感情はあくまで個人の感情だ。
感情も大事かもしれないが、合理的な思考も重要ではないか?私は、月経がある人の生産性について合理的に考えたい。
私はデザイナーであり、生産活動をしている。その活動には必ず人手、工数が欠かせない。この人は、誰でもいいわけではない。月経の有無でその人が動けるか動けないのかが左右されるのは、組織にとっても、本人にとっても、大袈裟に言えば社会にとってもマイナスだ。成果物も納税額も減る。
ピルを女性の権利を主張するシンボルにしたがる人もいるようだ。歴史的経緯を含めてセットで語られるのは、ある程度仕方ないとしても、現実的に考えて、社会に属する全員に利益がある切り口で話を進めた方が、受け入れてもらえる可能性は上がる。私はそれを「月経がある人間の労働力としての伸び代」を、社会に見出してもらうのが近道だと思う。
私は社会に受け入れてもらえないと生きていけない。月経のあるなしだけではない。経済活動に組み込んでもらわないといけないし、友達が0人になるときつい。だから、相手と共通の利益を見つけ、共通の目標を共有しなければ生きていけない。
ピルを普及させるために、女性の社会進出は助けにはなると思うが、ピルはあくまで薬・健康の話であって、イデオロギーとは切り離せるはずだ。私は何か権利を主張するのであれば、納得できる根拠を証明しなければならないと思っている。そのためにピルが必要だと考える。
ピルは権利そのものというより、月経がある人の生産力を上げ、チームの生産力を上げるための物だと考えている。ピル自体が報酬にはならない。その先に個人、組織、社会の目的がある。
ピルの販売経路を増やすと教育という課題は残されるが、例えば一年以内の血液検査・血圧検査の結果を見せればドラッグストアで買えるようにするとか、敷居を下げる方法は色々ある。
ゲームで例えよう
月経:デバフ(能力の弱体化)
ピル:デバフを解除するポーション
自分のチームに所属しているキャラがデバフを喰らっている。自分が許可すれば、そのキャラは自分でポーションを調達し、デバフを解除することができる。
許可しますか?
する/しない
自分のチームに新しい仲間を加えようとした所、デバフを喰らっていた。ポーションを使えば、デバフを解除できる。仲間にしないという選択肢もある。なお、ポーションはキャラ本人が調達し、勝手に自分に使うするものとする。プレイヤーはポーションの使用を許可するだけ。
許可しますか?
する/しない
実際は様々なリスクがあるので、こんなに単純ではないにせよ、社会が許可してくれれば、生産性・戦闘力がもっと上がるのに!という主張を例えてみた。
私はもうネットで買えるし、健康診断を定期的に受ける環境にあるので、個人的には来月からは困らないのだけど、より月経がある人々がアクセスしやすくしていけると良いなと密かに思った。
月経がくっっっっっっそ痛かったので、主観を書いてみた。
おわり。
参考