デザインの合意形成が進まないのは、話の「スケール」が揃ってないからさ。
最近、他のデザイナーに「どこまで頑張れば良いですか?」と聞かれた。限界まで頑張るのが当たり前だと思っていたので、その問いが出てくるのが目から鱗だった。頑張る度合いを調整できる位なら全力でやらんかい!!
ただ、自分も無意識に「どこまでこだわるか」つまり、事業要件・技術要件とトレードオフの関係になるとき、デザイン要件を優先させるのか?について、感覚で判断してしまっていたなと反省した。
今回はそれを理論立てて説明する試みである。
要件とは何だろう?
さて、まずは「要件」とは何かについて考えてみたい。
例えば、あるデザインパーツを「赤に塗って欲しい」と言われた。それは「仕様の指示」である。
オレンジに塗ってどんな機能・印象になれば良いのか、「他の要素より目立っていて欲しい」「我が社のブランドカラーは赤なのだ」「俺は共和党支持者だから、そのイメージにしたいんだ!」…表現・機能において、何が満たされていれば良いのか?これが「要件」である。
さて、この要件の背後には「要求」がある。
「他の要素より目立っていて欲しい」→なぜ目立たなくてはならないのか?目立たなかったら、どんなリスクがある?
「我が社のブランドカラーは赤なのだ」→ここでなぜブランドカラーを出したかった?
その要求が叶えられなければ、機能するデザインにはならない。ブランドカラーだけでなく、ロゴを入れた方が良さそうなど、より良い提案もできる。
要件はあくまで手段の説明であって、目的を説明するものではない。
要件で話が進まない場合、要求まで遡ることで、話を進めることができるかもしれない。また、要件の背景を確認しなければ、どこかで認識の齟齬が起きるだろう。赤ばかり使っていたら、赤が目立つとは限らない画面になるものだ。
要求のスケール
要求が同じなのに、大きく意見が食い違って合意形成が進まないこともあるだろう。それは、スケールが違うのだと思う。
時間のスケール、リターンのスケール、工数のスケール、影響範囲のスケール、デザインとしてやばいスケール、クレームのスケール…
例えば、「売上を上げたい!」という要求があるとする。
そこで、楽天みたいにバナーを貼りまくるのか、GoogleのようにUIを磨き込むのか、思想によって方針が分かれるだろう。
ユーザーが数分〜数秒のうちにCVするようなサービスであれば、バナーを貼りまくって、ボタンをぷよぷよ動かせば良いと思う。カウントダウンなんかも付けちゃったりして…推奨はされないが、これは一つの正解だろう。
一方、数日に渡りCVする場合は、「ほしいものリスト」を使いやすくしたり、レコメンド機能を拡充したりした方が良いかもしれない。バナーはノイズになるので削除した方が良いかもしれない。
さらに、数ヶ月使う場合、より機能的で使いやすいUIが必要だろう。情報を見ているうちに、もっと使いやすい他社サービスに乗り換えられては堪ったものではない。
話が噛み合わない相手は、どこまでのスケールで話をしているのか?売上を最大化するために、どのスケールが最適なのか?互いに認識を揃えることで、話が進むかもしれない。
工数対効果についてもそう。「ダメだったらリバートするので、このまま出してみましょう!」と言ってたのに、エンジニアに一言も相談していなかった、なんて事件があり…これには頭を抱えたものだ。
スケールを揃えましょう。以上。