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生きるとは、それだけで成功しているもの(#29)

2月14日はバレンタインデーです。
今年は昨年から続く新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、元々下火だった義理チョコも追討ちをかけられています。
それが良いのか悪いのかは分かりませんが、女性が義理立てる発想は些か古風な習慣なのは否めません。
ですが、こう考えてはいかがでしょうか。
”性別に関わらず誰かにプレゼントをするきっかけをくれた――”、
もしそうであれば一々目くじらを立てるようなことでもないでしょう。

さて、そんなコロナ禍の現在において以下のようなニュースがありました。

ビール業界から菓子業界へ参入しているというものです。
広い意味では同じ“食品業界”なのかもしれませんが、掛け合わせにより味もさることながら、個人的にはビール独特のボトリングやパッケージングによって洗練された商品が披露されることに期待感が膨らみます。

よくアルコールは“五感で楽しむもの”だといわれます。
「見て」、「嗅いで」、ときに「聴いて」、「触れて」、そして「味わう」――。
これまでもアルコール入りのチョコはありましたが、‟アルコールが入っている”という点で義理ではなく、想いの籠った贈り物になるかもしれません。
運転中には食べられません。
その意味でも、“自宅で味わう”という点で適しているのでしょう。

酒にまつわる神々

そんなアルコールには、洋の東西を問わず様々な酒の神々が存在しています。
その代表格でもあるのがギリシア神話の中に登場するディオニュソスです。
ちなみにバッカスという名称の方が有名かもしれませんが、実は同一の神です。ただ出処がローマ神話かギリシア神話かの違いで、名称が異なるだけです。
※ここでは触れませんが、実はもう少し同一で異なる名称の神がいます。
 もし御興味があれば調べてみるのも面白いかもしれません。

ところでこのディオニュソスが何の「酒」の神であるか御存じでしょうか?
答えは葡萄酒、ワインです。
やがてヨーロッパではそのワインを蒸留し始めます。
それをラテン語で「aqua vitae」と呼びました。
直訳すると「命の水」です。
これがヨーロッパ各地に伝播する形で広がり、ウイスキーやウオツカなど様々な蒸留酒へと派生していったといいます。
つまり、蒸留酒そのものが“命の水”となったのです。

元々蒸留技術は紀元前800年前後に海水から水を分離するために始まったといわれています。
人間の体は約60%を水分が占めているといわれていますから、たとえ嗜好品の名称由来であっても決して大袈裟とはいえないでしょう。

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日本における酒の神々は以下が有名です。

大物主大神(おおものぬしのおおかみ)
: 大神神社(奈良県桜井市)

少彦名神(すくなひこなのかみ)  
: 大神神社(奈良県桜井市)

酒解神(さけとけのかみ)      
: 梅宮大社(京都府京都市)

酒解子(さけとけのみこ)      
: 梅宮大社(京都府京都市)

大山咋神(おおやまくいのかみ)   
: 松尾大社(京都府京都市)

※参照:月桂冠(株)HPより

神々が“八百万”いるわけですから、酒の神が複数いても不思議ではありません。
ちなみに大神神社、梅宮大社、松尾大社では酒造りの守り神が祭られています。

養命酒は薬用酒かつ混成酒、ゆえにアルコールである

ところで日本で「命」と名の付く有名なアルコールで何を思い浮かべるでしょうか?
養命酒ではありませんか。
実はこの養命酒は法では薬用酒(医薬品)ですが、混成酒(※酒税法上)でもあります。
つまり文字通り、立派なアルコールなのです。

この酒の歴史はとても長く、なんと400年以上も起源を遡らなくてはなりません。
養命酒製造(株)HPによると、誕生はなんと1602年だそうです。
江戸幕府が開府したのは翌年1603年ですから、江戸時代よりも前に生まれたということになります。
徳川家康に養命酒を献上すると“天下御免万病養命酒”と免許され、その象徴として今なお用いられいる“飛龍”の使用することが許可されたといいます。

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※日本家庭薬協会 https://www.hmaj.com/mark/youmei/

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養命酒の逸話は、雪の中で老人を救ったことから始まります。
数年食客として養った後、その恩として薬酒の製法を伝授されたといい、その薬酒を山村の貧しい人々や体の弱いに分け与えていました。
この薬酒こと養命酒の原点であります。
当時は現代のように医療が充実しているわけではありません。
そうした背景もあり評判は日増しに高まっていきました。

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※写真<上下>:養命酒製造(株)HP
https://www.nttcom.co.jp/comzine/no065/long_seller/index.html

養命酒とCMの関係

明治以降の養命酒はCMの歴史といえます。
CMとは関心の的をみえる化させるものです。
交通機関と通信手段の発達によって人の移動や交流が活発になりました。
広告も今やその主流がインターネットになっていますが、理由は同じです。活発な交流機会にCMは効果を発揮する、つまり人の関心が集まっている場所にCMは現れるというわけです。

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その後、昭和に入った1940年代、日本は深刻な主食の米を中心とした食料不足に陥っていました。

理由は以下です。

①人員不足(働き盛りの若者が戦地へ)
②輸入米に依存していたが手に入らなくなった
 ( 凶作&輸送手段を戦争に優先させたため )
③需要過多

そのため、国により食料制限が状態が続きました。

養命酒はみりんに数種類の薬草を浸漬してできた混成酒(※酒税法上)です。
みりんには米がなくてはなりません。

太平洋戦争終戦後、そんな食料も儘ならない状態でしたので虚弱体質の子供が多かったといいます。
そんな中、養命酒は子供の健康促進を狙ってアルコール度数14%の“酒”を子供向けにCM展開していったそうです!
(今では考えられませんね。。。)

ですが、それがヒットし、再び息を吹き返したのです。

その後もメディアと時代背景を巧みに読んだCM戦略で、薬用酒の独占的な地位を築くことになりました。

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ただ、山村で分け与えていたときとスタンスは大きく変わっていません。
勿論、製品の高品質ありきですが、その点が今なお、支持されているのかもしれません。

生きるとは、それだけで成功

ここまで養命酒について簡単に説明しました。
養命酒は人々の健康をサポートすると同時に今日まで自らの伝統を継承し、生き続けています。
言い換えればその酒を通じた活動が評価され続けた結果ともいえます。

成功とは生き残ることです。

また、失敗は通過点でのみ、生き残れるともいえます。

ローマの諺にはこうあります。

バッカス(=酒の神、ディオニュソスと同義)はネプチューン(=海の神)よりも多くのものを溺死させた。


その一方、ユダヤの諺にはこんなものもあります。

ワインを飲んで切る時間を無駄な時間だと思うな。その時間はあなたの心は休養しているのだから

水は体内に吸収され、また排出され、入れ替わりを繰り返します。

体内の約60%の水はずっと同じものではありません。
“水”という名の許、我々を活かし続ける存在です。
だとしたら水とは養分であり、“新しい考え”なのかもしれません。

溺死するのか、養分とするのか。
養命酒はCM戦略を打ち出し、功を奏したように。
蒸留技術がアルコールへ応用されたように。

一杯のアルコールを口に通し、喉を通しながら、その過程、現状にゆっくり思い巡らせるのもいいかもしれません。
何かが掛け合わさり、新たな体内の水となり、生命に気力を漲らせる―、そのとき、その水は“命の水”となり我々の人生を進めてくれるのでしょう。

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≪小話≫
ドイツでは冷凍庫に瓶ごと入れたイエガーマイスター(35%)を薬用酒として愛飲されるそうです。
その味が養命酒とどことなく似ています
もし興味があれば比較してみてください。

<参考記事>


頂いたものは知識として還元したいので、アマゾンで書籍購入に費やすつもりです。😄