見出し画像

映画『新聞記者』レビュー

※ネタバレを含みます

こんにちは、小学生の時に両親が私のために朝日の小学生新聞を取ってくれていたのですが、新聞を読んで理解できないレベルのバカだった当時の私は漫画のページのみ読んでおり、最後にはそれがバレてひどく叱られ購読をやめました。皆さんは新聞読んでいますか?

4本目の映画は2019年公開の『新聞記者』です。

画像1

私の学部が情報系なので、去年この映画が公開された際に学部長の先生がぜひ観るようにと言っていたのですが、なんだかんだで結局観れていませんでした。当時は政治やマスメディアなどにあまり関心がなかったので。

観終わって一番最初に出てきた感想は『これを映画として公開できたのすごいな』です。確かにフィクション映画ではあるのですが、当時似たような問題が実際に内閣府関係で起こっていたこともありストップがかかってもおかしくなかったのではないかと言える内容でした。もっと早くに観ておけばよかった、アカデミー賞受賞も納得です。

内容

アメリカで日本人の父と韓国人の母の間に生まれた吉岡エリカは、日本の新聞社で記者をしています。そんな吉岡の元に匿名でファックスが届きます。一番最初のページには羊のイラストが、その後には政府の資金で医療系の大学を新潟県の特区に作り、その運営は民間企業に委託するという計画情報のリークが載っています。↓最初のページの羊

画像2

吉岡はその計画について内閣府を調べ始めるのですが、そんな時内閣府勤務の神崎という人が投身自殺します。神崎の死と大学建設計画が関わっているのではないかと考えた吉岡は内閣府の関係者に話を聞き始め、杉原拓海という人物と出会います。彼は以前外務省に在籍しており、そこで神崎の部下として仕事をしていましたが、現在では内閣情報調査室で内閣府にとって不利なニュースをコントロールする仕事をしており、本人は自分のしている仕事に疑念を抱いています。

情報調査室が自分の知らないところで投身自殺をした神崎をマークしていたことを知った杉原は、吉岡とともに大学建設計画について調べ始めます。そして神崎のデスクから吉岡の元に届いたものと同じ羊の絵と、ダグウェイ羊事件に関する本が見つかったことから、建設予定の大学が医療系ではなく、生物兵器などの軍事的な研究をするための施設であることを突き止めその内容を記事に書きます。

計画内容が漏れ新聞記事として世間に出回ってしまった内閣府は杉原が情報提供者であると勘付き、家族や杉原のキャリアを人質にこれ以上吉岡に協力しないように圧力をかけます。その直後に吉岡と杉原は横断歩道を挟んだ歩道で顔を合わせるのですが、圧力に負けてしまった杉原は吉岡に対し口の動きだけで『ごめん』と伝え、映画は終了します。

羊の考察、感想

柿崎が吉岡に対して送った羊の絵ですが、これは柿崎本人が描いたものですが、元は幼かった娘を喜ばせるために描いたものでした。柿崎の妻が吉岡に見せた元の羊の絵は目が笑っており、色を使って描かれていました。しかし吉岡に送られてきた絵は黒のみで描かれており、しかも目が塗りつぶされています。これは、厄介者、排斥の対象、という意味を持つ『black sheep(黒い羊)』を表し、柿崎が内閣府を裏切って情報を提供する人物であることを意味しているのだと思います。また羊は、キリスト教において『生け贄』という意味があり、柿崎が大学建設に関しての文書改ざんの責任を背負わされてしまったことも同時に意味していると考えられます。

情報提供者が内閣府の人間であることのヒントであり、また自分が1人で責任を負わなければならない生け贄的存在であることを吉岡に気づいて欲しかったのではないでしょうか。


去年ちょうど似たような事件がありました。内閣が国民のお金を使って学校を作り、その運営を首相の友人に委託してしまうという森友問題ですが、その文書改ざんの責任を1人で負わされた人物が手記を残して自殺しました。手記があったからこそ事実が明らかになりましたが、もし残っていなければあそこまで大々的に報道されなかったはずです。

形としてはフィクションでしたが、個人的にフィクションとは思えない内容でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?