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3/14 修士制作について

 持続可能な循環型社会への関心が国際的に高まる中、近年注目されているのが「土」である。土は植物、ヒト、あらゆる生命に結びつき、地球環境や生態系の回復に大きく寄与している。衣食住に関わるあらゆる産業の在り方を循環型へ転換する活動が「土」の再生を軸として世界中で始まっている。

 長野県内に目を向けると、中山間地域を中心に人口が減少し、耕作放棄地の増加が問題となっている。しかし使われず肥沃なままの土が豊富に余った状態であるとも捉えられ、土の再生を軸とした循環型社会のモデル構築に最適であると考えた。

 本制作では、中山間地域の地形・地質・土壌と、集落内での山林資源の扱いを調査・分析し、弱められた山林と人、建築の繋がりを再構築することで持続可能な循環型社会のモデルケースを提示する。
 私たちの真下にあり、ほとんどの場所で入手可能な「土」を資源と捉え、循環させる建築を計画することで、土を用いることが普遍的な手法として循環型社会実現の一助となるのではないか。

 
 フィールドとした長野市信州新町信級(以下、信級)は、約258〜553万年前に形成された砂岩層の上に存在する美しい集落だ。今も若い移住者が少しずつ増えており、炭焼き、林業、服飾、陶芸と生業は人それぞれである。
 どの方々も、自らが理想とする生き方に突き動かされてこの土地に集まっていると感じる。私は信級に通ううち、住民たちが一日一日をなんとか生き抜いているという印象を抱いた。彼らと自分とで時間の重さに大きな隔たりを感じ、苦しくなったことがあったのだ。そこまでしてこの集落に引き寄せられるのはなぜなのか…。
 土壌分布と地形分類から信級が比較的豊かな土地で水源も豊富であることは分かっても、それを暮らしと結びつけるにはただならぬ努力が必要であること。皆強い決意を持って信級で生活していること。これは非常に尊いものであり、目を背けてはいけないと思う。
 加えて、物事の選択には大きな責任が伴うが、その動機は「美しいから」「安らぐから」など、自分の内の単純な感情でも良いのだと学んだ。

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