知子ちゃんの引退
宮原知子選手の引退会見が終わった。宇野選手からの花束を受けている姿を見たときに、涙がこぼれてしまった。画面の中の二人は笑顔だというのに、何で私が泣くのだ。
本当に、選手を引退するんだなぁ。スポーツ選手だもの、仕方ないよねと思いつつも、やっぱり寂しい。誰が何と言おうとも、「今年はどんなプログラムを見せてくれるのだろう」と、ワクワクさせてくれる選手だった。ジャンプが決まらなくても、その指先からつま先まで、すべてに表現の意図が感じられる選手だった。
今になっては、本当に失礼な話なのだが、全日本に出てきた頃は、ワクワク感のない選手だと思っていた。村主選手、浅田選手、鈴木選手、村上選手のような華や個性が感じられなくって。小っちゃくって、か細くって、笑顔もなくって。
君は、本当にスケートが好き?
人前に出て表現することが好き?
偉そうにも、そんなことを感じていた。
しかし、2014年のフリー「ミス・サイゴン」でそれは覆された。驚かされた。そこにはまぎれもなく、「キム」がいた。「ミス・サイゴン」の世界観が表現されていた。その年は「ミス・サイゴン」というプログラムを楽しみにテレビで試合観戦をし続けたのだった。
小さな体を少しでも大きく、そして優雅に見せるために工夫された体使いは、唯一無二のものだった。そして、毎年それがバージョンアップされていくのが楽しみでならなかった。
心の中で引退を意識していたという、2021年は、SP「小雀に捧げる歌」、FP「トスカ」。オリンピック代表は叶わなかったが、四大陸選手権で世界中の人に、宮原知子のプログラムを観てもらう機会があることを楽しみにしていた。しかし、棄権となってしまった。最大の目標(多分)を失い、心と体が悲鳴を上げてしまったのかもしれない。勝手に世界中の人、見て見てって思って、期待しててごめんなさい。でも、それくらい今年のプログラムも大好きだった。
今後は、プロスケーターとして活動するとのこと。「表現力をより深め、磨きをかけていきたい」と『SOI』にコメントを寄せた知子ちゃん。今以上の表現力って。どこまでの高みに上ろうとしているのか。「採点」から解き放たれた宮原知子のプログラムは、期待しかありません。
選手としては、本当にお疲れ様でした。
プロスケーターとしては、今後のご活躍を、本当に、本当に、本当に楽しみにしています。
そして、新しい何かを掴んで、また、競技者に戻る世界もありますよ。
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