0220「12年目の鉱泉せんべいの夢」
昨夜は、人づての人づてに自分の悪口というか、そこそこ失礼なことを言われているのを耳にしたので、ついついFacebookでエアリプしてみた。エアリプというのは、届けたい相手にはあまり届かないものだけれど、珍しく届いたことは確認したので、まあ良かったんじゃないか。私はアスペだし、下げてる頭に指さして嗤われたらさすがに心の中の黒い石碑に名前彫って一生ネタにする程度にはがっつり根に持つ性格だが、同時に私自身そこそこ口の悪いところもあるので、発言には気をつけなくてはと思った。
まあ私には真摯に頭下げている人間に「ヘコヘコしてる」とか言って嗤うようなファンタジスタな技は使えんけどな。
先週末も、知人と友人の作家さんが同席するタイミングがあって、知人がトイレに行っている間に、私が冗談めかしてその方の仕事のスタイルを友人に向かってくさしたのだけれど、友人にパッと、「人がいないところでそういうこと言うもんじゃないよ!」と注意されたことがあって、ああ、こういうことをちゃんと言ってくれるこの人は本当に素晴らしいなと思った。人間関係の胸糞悪い体験には、良い友人のことを思い出すのが一番薬効がある。
今日は父親になって12年目の記念日というか長男の誕生日だった。
ニューヨークは午後から結構な雪になってしまって、彼の弟や妹がせっせと兄の誕生日を祝うために謎の飾り付けをしていた。彼が生まれた12年前の東京はちょっとみぞれ混じりの氷雨で、ヘビースモーカーだった私は妻が陣痛で苦しんでいるのにちょこちょこ氷雨の中外に出てハイライトを喫っていた。当時の私は北方謙三の水滸伝を陣痛室で読んでいて、物語の中で主要キャラクターの晁蓋が逝ったところで長男が生まれたので、感動しながら、「この子は晁蓋の生まれ変わりかもしれないな」などと言ったら、その後12年間ずっとそのことでいろいろ言われることになってしまった。
それでいうと他にもこの、妻の最初の出産のときに私が取った行動で顰蹙を買ったエピソードは枚挙に暇がなく、よく蒸し返されるのが、「陣痛で苦しんでいるのに魚肉ソーセージを食わされそうになった」というもので、当時の私は陣痛室で妻のお腹をさすっては、「触らないで!」と言われて落ち込んだりとか、やや手持ち無沙汰になってしまい、お腹が空いたりもしたのか、病院の売店で魚肉ソーセージを買ってきて、妻に「食う?」と言いつつ、それどころではない妻を横目に魚肉ソーセージを食っていたらしいのだが、これは全く覚えていない。
むしろ覚えているのは、長男が生まれた次の日の病室で、陣痛中に売店で見つけて購入してすっごくおいしかった「鉱泉せんべい」を買ってきて食い続けていたらそこそこ怒られた、という事件だ。あの頃の私はとにかく頑張る妻の横で自分の好きなものを食うという傾向があったらしい。あの日以来、「鉱泉せんべい」は食べていないというか売っているのを見たことがないのだが、これは本当に超おいしい食い物だった記憶がある。父親になって喜びに満ちつつ緊張していたことでバイアスが生まれていたのかも知れないが、あれはそれを超越するおいしさだったように思う。
アフィリエイトを貼ろうと思ってAmazonで調べたら、ちゃんと売っていた。「もしかしたら鉱泉せんべいって幻だったんじゃないかな」とかくらいに思っていたので、ちょっと驚いた。くそ、鉱泉せんべいめっちゃ食いたいのに、いま私はニューヨークだ。次東京に行くときは絶対に鉱泉せんべいをamazonで送っておくのを忘れないようにしよう。先月の出張前にこの鉱泉せんべいのことを思い出していたら、「長男の12歳の誕生日、干支が回ったその日に12年ぶりに鉱泉せんべいを味わう」という乙なことができたのに、ここに書くまで忘れていた。この日記というのは、概ねジャズのアドリブのように思いついたことをそのまま書いているので、数行前を書くときに思い出すまで鉱泉せんべいの存在を忘れていたのだ。
子供の誕生日なので、すっごく良いことを書いて、めっちゃ共感されようと思っていたのだが、息子のことよりも完全に頭の中が鉱泉せんべいでいっぱいになってしまった。別の記事も見つけた。そう。このゴーフレット感だ。これが鉱泉せんべいだ。やばいこれもうちょっとまじで鉱泉せんべい食いたい。いま食いたい。
※タイトル写真は、こちらから拝借しています。
というような、陣痛室で好き勝手に振る舞い、鉱泉せんべいをむさぼり食う12年前の私はシリアスに全く褒められることではなく、真摯に反省すべきだし、子育てはお母さんだけがするものではない、一緒に協力してコミットすべき、「Co育て」である。珍しく仕事を落とし所にしてしまうが、グリコが「Co育て」の理念から開発した夫婦間子育て専用メッセンジャー「こぺ」がリリースされているので、妊娠中・乳児の子育て中の皆様は是非インストールして頂ければと思う。
メッセンジャーでありながら、お子様の成長に応じて知っておくべき知識を教えてくれたり、家事分担のスタンプなんかも用意されている。育児ログなんかもつけられる。このアプリでコミュニケーションしていれば、決して奥さんが「夫が陣痛室で鉱泉せんべいばっかり食っています」みたいなことを発言小町に投稿するような状況にはならないはずだ。