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【映画評】大怪獣のあとしまつ <酷評されたものの、惜しい作品>

 「令和のデビルマン」とまで酷評された本作。酷評されすぎていたがゆえに、思いのほか楽しめた作品であった。「期待値コントロール」がいかに大切かを痛感させてくれる。

 面白いかどうか以前に、客層を選ぶ作品であることは間違いない。しかし、だから駄作といわけではなく、面白いと思える人には面白いのである。本作の最大の失敗は「ターゲットではない客層」を劇場に招いてしまったことであろう。豪華なキャスティングとCG。予告編は壮大かつシリアスなスペクタクルを想像させる。そういうものを期待して映画館に行ってしまうと見事に裏切られることになる。裏切られた人が「茶番劇」と酷評したくなるのも無理はない。老舗っぽいすし屋に入ったものの、カルフォルニアロールやら出鱈目な創作寿司が出てくるようなものか(カルフォルニアロール、ごめんね)。ただ、まずいかと言われればたぶん、どちらかと言うと美味い。

 レビューの中には「だって三木聡じゃん」というものもあった。三木聡作品を知っていれば、チープな茶番劇は予想できたようだ。私は三木聡作品は本作が初めてなので、今後、どれか過去の作品を見てみようと思っている。

ストーリーはよくできている

 ストーリーはよくできている。まず、怪獣退治後の後日譚、として始まるところから着想は新鮮だ。多くの怪獣映画を生み出しあ本邦において「戦いの後」を描いた作品はこれまでなかった。その発想の転換は、勇者たちの冒険の後を描いた「葬送のフリーレン」に通ずるものがある。
 次に、怪獣の死体処理をどこの省庁が所管するのかを議論するとこから面白い。死体が一級河川で横たわっているから国交省だの、生ごみだから環境省だの、思い出しただけでふふ、っと笑ってしまう。出てくる女性大臣「蓮佛」はどう考えても蓮舫で、あんなネタにして大丈夫だったのか?と心配になるほど(ところで、佛、はどこからきたのだろうか)。

 繰り広げらえるコミカルな政治風刺は、安っぽい茶番劇に見えるものの、政治の本質を突いている。大怪獣は「東日本大震災」+「コロナ」を象徴する存在である。怪獣を観光資源使おうとするくだりは、大震災後の復興方針が遅々として進まなかった実態を皮肉っている。それはほとんど「史実」である。しかもよくできているのは、怪獣を「観光資源として利用する」という制限が与えられることで、主人公たちは怪獣の死体を棄損することない手段を講じなけばならず、映画の展開を面白くしている。 

 ストーリーを展開させながら、上手に政治風刺を織り込んでいくスタイルは見事なものである。この政治風刺を楽しめるかどうかがそもそもこの作品を楽しめるかどうかを分けているだろう。その政治風刺を現実の政治と結びつけることができないと、ただのチープな茶番にしか見えないのかもしれない。

 余談だが、レビューの中で「政府のことを悪く描きすぎ」というものがあって、逆に驚いてしまった。コミカルに、風刺を交えて描くことが、何か政府、ひいては日本という国を傷つけられたと感じる人もいるようである。

ラストは突き放されてしまうが

 本作品が酷評されているもう一つの理由は、ラストのあっけなさではないかと思っている。私自身「ポカーン」であった。ただ、いろいろな人のレビューを見ていると、単にあっけない終わり方というものでもないらしい。このラストは、わかる人にはわかるヒントが前半で出ている。その辺は監督もヒントを出しているし、わかる人にはわかる面白さになっている。
 ラストにどう怪獣をしまつするのか。ラストを知ると、「最初っからそうすればよかったじゃん!」と誰もが思うと思う。しかし、ある理由で、そのラストは最初から実現することができない、という構造的な仕掛けが埋め込まれている。それは後でレビューを読んで知ったのだが、なるほど映画というのは奥が深いものだなと感心したのである。

怪獣映画への期待値

 怪獣映画は、日本が生んだ誇るべきコンテンツであろう。本作のレビューを色々眺めるなかで、いかに日本人の怪獣映画に対する期待が高いかを感じた。怪獣映画とはシリアスなものであり、社会派のメッセージが埋め込まれており、チープな茶番劇に貶めてはならない聖域だと考えている人が一定層いるのである。そういう人たちからすると、ウンコだゲロだ小学生のようなセリフや下ネタがちょくちょく出てくる本作は、少々許しがたいものがあったのかもしれない。

 コメディ調なのはよいのだが、かなりレベルの低いギャグも盛り込まれており、そこまでレベルを下げる必要はなかったのでは?と思わないこともない。が、それはこの三木聡という人の個性であり、芸風だと割り切るしかなかろう(興行的にはそれは失敗だろう)。

 仕上げ方によっては「名作」にもなりえたのでは、という気がしなくもない。キャストも豪華だし、怪獣のCGもなかなかに豪華である。監督の色を殺して、興行ウケにすりよれば、もう一段格の高い作品になれたのかもしれないなと思うと、やや残念な感はある。

それにしても土屋太鳳、知的な政治秘書を演じるが
美しいしエロイし、最高としかいいようがない。


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