【ウマ娘】根性ってどれくらい効果あるの?Part1/3 計算のやり方編
初めに
根性の約1/6がスピードに加算、400引いて1/3がスタミナに加算――これは、ツイッター上で話題になった数式です。初めて知ったという人も多かったかもしれませんが、実はこの式には正確性に疑問が呈される意見もあります。
計算式においては、大雑把な計算にも技術が必要です。そこで今回は、正しいけどムズカシイ計算式を大雑把だけど簡単な式に変えていく方法を解説し、上の式が本当に不正確なのか考えていきたいと思います。また、これらの数式はどこから来たのでしょうか?誰が言い出したかも合わせて調査してみました。
大雑把な計算ってどうやるの?
曲線を直線で表す
人間の頭は二乗したり√を取ったりという計算を簡単に行えるように出来ていません。$${x}$$と$${y}$$の関係を表したいとして$${x}$$が1増えたら$${y}$$がいくつ増えるといった関係で書けるのが理想です。 数式でいうと$${y=f(x)}$$($${f(x)}$$は√とか入っためっちゃムズカシイ関数)を$${y=ax+b}$$という関数で置き換えます。このような置き換えを線形近似とか一次近似といい、曲線のグラフを直線で置き換えることに相当します。
複雑な数式を直線で表すと聞くと↓のようにぐにゃぐにゃな曲線を数式で表すのを想像するかもですが、実際のゲームで用いられるような数式はゆるやかな曲線になっていることが多いです。
ぐにゃぐにゃに曲がりまくっている曲線でなければ、接線を引くことで線形近似を行うことができます。
接線の公式
$${ y =\frac{df}{dx}(x_0)(x-x_0)+y_0 }$$
つまり$${ y=ax+b}$$の$${a}$$は元の関数の微分、$${b}$$は接点の値とすれば近似できることがわかります。
こうして作られた計算式を使う上で注意点があります。あくまで接線なので接点に近い点では良い近似として使えますが、接点から離れると大雑把に概算するという目的すら果たせなくなってしまうことがしばしばあります。どこの点を接点にして作った計算式なのかということは意識しながら使わなければなりません。
なお、微分のところはグラフ書いて接線の傾きから計算することもあります。計算勢はそっちのやり方でやってる人の方が多いかもしれません。
ある変数を別の変数で表す
今回の問題をややこしくしてるのは近似により計算が大雑把になっているということの他に、根性によって直接増えてるのは速度上昇や体力消費軽減効果であるのにそれを「スピードやスタミナが増える」というようにスピードやスタミナの変化で表現をしているところにもあります。こちらについても考えてみましょう。
速度は根性とスピードによって増えるので、根性を増やしてある速度になった時、根性を増やさず代わりにスピードを増やすことでその速度にすることができます。同じ速度なので、根性を増やしたことによる速度増加をスピードが増えた場合で例えることで「根性でスピードが増えた」と言うことが出来そうです。
以上の話を数式で書きます。速度を$${y}$$、スピードを$${s}$$、根性を$${g}$$とするとスピードや根性をなにか難しい計算した結果として速度が得られるので、その難しい関数を$${f(s,g)}$$として次のように書けます。
$$
y=f(s,g)
$$
根性が$${dg}$$増えた時、同じ速度になるようなすなわち$${f(s+ds,g)=f(s,g+dg)}$$となるようなスピードの増加量$${ds}$$があるので、このような$${ds}$$と$${dg}$$に対し「根性を$${dg}$$増やすことでスピードが$${ds}$$増えた」と表現することにします。
前節の線形近似が成り立つとき$${f(s,g)=as+bg+c}$$のように書けるので次のように変形しスピードの増加量を求めることができます。
$$
f(s+ds,g)=f(s,g+dg)\\
as+ads+bg+c=as+bg+bdg+c\\
ads=bdg\\
ds=\frac{b}{a}dg
$$
根性の変化をスピードの増加として表すことができました。$${a,b}$$はそれぞれスピードと根性を横軸にしたときの接線の傾きなので、傾きの比が根性からスピードへの変換の倍率を決めていることになります。
これで$${\frac{b}{a}=\frac16}$$となっていれば「根性の1/6がスピードに加算される」ということになります。具体的な計算は次の記事で行います。
ここで再び注意点があります。数式の導出に線形近似を用いてるため、線形近似のところで注意したように接点から遠いところでは計算が成り立たなくなり、また接点が変わると接線の傾き$${a,b}$$が変わるため根性と何分の1がスピードになるかという数字が変わってきます。このような表現をする際は数式を出した時の接点(=基準としている根性やスピード)がどの程度の値になっているかは非常に重要です。
以上はスピードと速度を例に説明を行いましたが、同様にスピード→スタミナや速度→消費する体力、等適切に置き換えて計算すればスタミナと根性の変換も可能です。
問題の数式はどこから来たの?
スピード:根性の1/6
根性の1/6がスピードに加算されることについてはtwitterで検索すると1周年のアップデート当日から言われてることがわかります。
これらのツイートがどこから来ているかを探すと↓の掲示板のまとめでは「レースエミュレーターの作者」(=砂井裏鍵様)の動画がソースになっていることがわかります。
実際、動画内でスピードの1/6程度の寄与との言及があります。ちなみによくよく見ると、伝わるうちにスピードの1/6の効果→スピードが1/6増える とニュアンスが微妙に変化してたりします。
他に1/6という数字を出してる調査がないこと、アプデ当日という非常に早いタイミングなことから1/6という数字の大元はここであることは確定で良いと思います。
スタミナ:根性から400引いて1/3
こちらについてはマイセン様のブログ以外に使ってる人を見つけられませんでした。直接ブログの方に質問させてもらったところ初期のころの解析との回答だったこと、必要な根性として400を引いてることから、400前後の根性を想定して作られた数式であると推測されます。
まとめ
微分などを用いて接線を引くことで速度や消費体力を計算する複雑な関数を直線で表すことができる。
その後接線の傾きの比を取ることで根性による利益をスピードやスタミナが上がったものとして計算できる。
ただし以上の計算は接点の近くでしか成り立たず、どの程度の根性を想定して作られた数式であるかが大切。
話題の数式が作られたのはアオハルの終わり際かそれ以前と古く根性が低い時期。
以上から「根性の1/nがスピード・スタミナに加算」という表現自体は可能だが、現在のウマ娘に適用するには細かい数字の部分のアップデートが必要。
あとがき
いかがでしたか?
大雑把計算大好きマンなので、大雑把計算が本来成立しない範囲で使われていたり、それが原因で近似計算そのものがやってはいけないでたらめなことみたいに言われるのは悲しいのです。今回に限らず度々この手の議論は起こるため、思い切って近似計算のやり方そのものにスポットライトを当てて記事を書いてみました。
大雑把な計算式にもやり方があるんだよ~ということと、その説明を通して、使える範囲には気をつけなきゃいけないんだよ~ということを伝えられたらいいなと思います。
今回は計算のやり方等、概念的な話が主だったため、具体的に根性の何分の1をスピードやスタミナにすればいいのよ?という話には一切手を付けませんでした。多分そっちの方が需要のある話かと思うので至急計算を進めようと思います。
では次回でお会いしましょう。
次回↓
次々回↓
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