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これがニーチェだ(永井均)

Twitterで部分的に紹介されていたある疑問とニーチェの答えによってこの本を買いたいと思った。紹介されていたのは一節だけだったが、

その疑問に「なぜ人を殺してはいけないのか」という、質問を抱いた人の人間性にすら疑問を抱いてしまうような疑問があった。

この質問をされたら多くの人は困り、少し考えてから「だってあなたも殺されたくないし、愛する人も殺されたくはないでしょう」と答えるそうだ。

確かに私もそう思う。たぶん想像力の乏しい子供でさえこの理論は理解ができる。しかし、これでは人を殺してはいけないという直接的な理由にはなっていないのだ。逆説を考えると、「私には愛する人もいないし、自分のことも愛していない」という人が現れた時にこの理論は崩壊してしまう。ほとんどの殺人を犯す人はこんな気持ちなのだろうか。この理論はいかなる説明も無効化してしまう恐ろしい理由付けである。これに対してニーチェはとにかく自分の生を肯定することが倫理の基盤だという。むしろ自分の生を肯定することが初めて他人を殺めない理由になるのだ。

「なぜ人を殺してはいけないのか」という疑問に対してニーチェは直接的にも答えている。それは究極的なもので、「重罰になる可能性を考慮に入れて、どうしても殺したければやむを得ない」だそうだ。しかしこれは殺される人のことは一切考慮に入れず、ただ己のことだけを考えた際の究極的かつ最終的な意見である。例えばこころのむなしい人が人を殺したその瞬間だけ救われるのならば仕方が無いという。

私はこの本の冒頭の数ページで今までの道徳や倫理観というものをひっ繰り返された。もちろん「人を殺してもいいのだ」と思ったわけではない。ニーチェという人はものの考え方が一方的ではないのだと感じたのだ。一方的でないが、閉鎖的でもある。

とにかく、この文章を読んでわけがわからなくなった人はぜひ読んでみてほしい。「これがニーチェだ」 著 永井均

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000146862

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