朝鮮民族の急襲
韓国で舞台俳優をやっている、友人のユン・ドンソンさんが世界で話題のイカゲームに出ていた。彼の役は119号。第3話で脱落するのだが、最後のシーンは北野武を思わせる印象深い演技だった。
ソウルの大学路。旧京城帝大の跡地には小劇場が並ぶ。演劇と芸術の街だ。ぼくはソウルに行くと必ず1日は大学路で過ごす。ここで舞台やコントを数本観て、合間に「學林」という名曲喫茶でブラームスを聴く。
ユンさんと会ったのはここの舞台でのことだ。観客と俳優として。「あ、これはいい劇」という予感が見事に当たり、パンフレットにサインをしてもらった。翌年、ユンさんと去年見た劇で共演していた女優さんに挟まれて劇を見た。楽しんだ主演俳優と女優に囲まれて劇を見る。ここまでの僥倖、人生でなかなかない。
数年後、ユンさんから連絡が入った。「今どこにいる?東京?大阪?」「自宅は東京ですけど」と答えると「よぅし明日から東京行くわ。家族旅行。妻と高校生の息子と中学生の娘と、未就学の息子の総勢5人。よろしく!」。
こういうむちゃなことをする韓国人の友人がぼくには何人もいる。せめて1週間くれ。仕事も調整するし、美味しい店も探すし。
ところで韓国語では美味しいを맛있다(マシッタ)、美味しくないを 맛없다(マソプタ)という。直訳すると、味がある、味がないとなる。味のあるなしが彼らにとっては重要なことらしい。
突然の連絡からまだ24時間経っていないその時、ぼくとユンさん一家は「世界の山ちゃん」に戸惑いを浮かべながらいた。なぜに世界の山ちゃんか。韓国人にはこってこてで味が濃い名古屋めしがあたるのである。
こしょうの味が濃い手羽先。どて煮。刺身もある(あんまり美味しくないけど)。
ビールはアルコールが高めのものを飲ませる。韓国のビール、例えばHITEのアルコール濃度は4.5度。日本のビールより1度低い。これに喜ぶ。
ユンさん一家は大喜びで、帰国後「あの店の名前を教えて」と連絡が来た。そして何よりごちそうするこちらの財布にも優しい。時間が欲しいのは予算折衝の問題もあるのだ。頼むよ韓国の友人たち。
さて、北朝鮮から友人が来ることを夢想する。あるいは仕事相手が来る。在日コリアンの人たちは自ら経営する焼肉屋(東川口のKという店が有名だ)に招き、キムチと焼き肉で歓待するというが、逆を考えてみて欲しい。
日本から北朝鮮に行って、すしが食いたいか?金正日の料理人が平壌で「たかはし」という店をやっているがバカ高いと聞く。そもそも平壌は海に面していないので海産物の味は少し落ちるのだ。せっかく北朝鮮に行くなら、北朝鮮ならではの料理を味わってみたいと思うだろう。
警備の都合もある。たぶん公安はとぐろをまいて追跡してくる。それを差っ引いて「どこかで日本の美味しい料理を食べたい」「日本らしさを感じる店はないか」と言われたら。連れて行くなら世界の山ちゃんしかない。日本の誇る居酒屋文化の猥雑さと安っぽさを、存分に味わってほしい。
和民に連れて行って、渡邉美樹のブラック経営者ぶりを話して「Oh!資本主義って恐ろしいですねぇ」と社会主義の優位性を再確認させるのも一興かも知れないが、そこまでおもねる必要はあるまい。
コロナ真っ盛りの今ではバカな想像かも知れないが、そんな日は来る。南の友人たちを見ていると、北の友人たちもきっと来るときは突然なのだ。朝鮮民族の急襲に、世界の山ちゃんと共にぼくは備えている。
■ 北のHow to その129
10年ほど前なら日本に来た韓国人を連れて行くなら、ラーメン屋で間違いなしでした。韓国の食堂のラーメンはいわゆる辛ラーメンばかり、いわゆる生めんのラーメンを食べさせる店は、2000年ごろにはほとんどソウルにはありませんでしたから。
今やソウルのあちこちに、日本風のラーメンを食べさせる店がたくさん出来ています。
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