奈良出張記(1)
生まれが三重県だから何度か経由しかすったことはある。けれどしっかり奈良をちゃんと目的地として訪問するのは実は小学校の遠足以来で35年ぶりのこと。
内外情勢調査会講師として「遠くて近い国から 近くて遥かな国へ 世界から離隔する北朝鮮」というテーマで講演をして来ました。
講師の出張は朝早いのが特徴。7時代の新幹線で東京駅発。いつも会社行くより早いよ~とあくびを噛み殺しつつ新幹線に乗りこむ。新幹線のデッキは少し暗い。この瞬間がいい。トイレに行ってスーツケースを網棚に乗っけてリクライニングを最大に傾けて足をぎゅんと伸ばす。
やがて新幹線が発車して、品川と新横浜で人の出入りがあってからは落ち着く。新幹線に乗るならスゴクカタイアイスを食べたいのだけど、炭酸水を飲んで車内販売が来る前に熟睡。気がつけば乗換駅の京都へ。
それにしても旅に飢えていた。帰省で何度か新幹線は乗ったけどそれ以外は基本どこにも行かなかったここ数年。京都駅には修学旅行生がいっぱいいた。小田原から来ていたらしい。
ここから近鉄に乗り換え奈良へ。急行で。しかし近鉄の車両は変わり映えしないな。シートモケットは変わっているけど、車内風景はぼくの子どものころと同じ。
車内は修学旅行生が鈴なりでそこにスーツ着てスーツケース引きずるおっさん、ぼくがひとり。
喧騒の中でどうしてこんなところにいるんだろうなと思う。先祖の墓のある駅を電車は通過する。切符はクライアントが用意してくれているのだが、なぜぼくは奈良に向かっているのだろうと田んぼを見ながら思った。違和感はあるが悪い感情ではない。なぜかふつふつと笑いがこみあげてくる。おっさんの人生めちゃくちゃ面白い。
少々文体が鼻につくが、石原慎太郎の「わが人生の時の人々」を想う。癖のある文士たちの講演旅行のドタバタのくだりが実に興味深い。ぼくの講演は基本ひとり。同行の士はいないけれど、自分も文士旅をしている気分になる。こういう旅が子どものころからあこがれだったのだ。
奈良駅で電車を降りて指令書(本当にそう書いてある)を見ると、タクシーを自分で捕まえよと書いてある。行先は奈良ホテル。
タクシーなんて普段乗らない。酒を呑まないので終電を逃すことがないのだ。このあたりから少しテンションを変えていく。先生モードに切り替えるのだ。さあこれから壇上で1時間半話すのだぞと気合を入れる。
さあ、仕事の始まりです。
■ 北のHow to その148
今まで勤めた会社が、ほとんど出張がなく、あっても日帰りか都内限定というレベルなので、ウキウキします。
なお東京駅お勧めの駅弁は「貝づくし」です。あと、スゴクカタイアイス。スジャータ製のあのアイスを食べると「旅しているなぁ」と思います。