東の街にキムチを買いに
「どこか韓国料理の美味しい店に連れて行ってくださいよ」。
韓国と北朝鮮にある程度知識があることを期待され、そう聞かれる。以前、むかつく人間は無条件に犬肉料理店に連れて行くという、ぼくの狂犬ぶりについて書いたが、無礼を働くことがないなら普段のぼくは基本紳士である。
少し迷う。いわゆる韓国、朝鮮料理にはニューカマーの韓国人が営業している店と、在日コリアンがやっている店がある。
大雑把に言って、東京の西側の池袋や新大久保辺りにはニューカマーの店が多い。いわゆる韓流ドラマが好きな層には、西側の店に連れて行くとウケがよい。
少しディープな話をしたいなら、特に北朝鮮の話をするなら東側。上野日暮里三河島に赴く。
個人的に東側に多い在日コリアンの店が好きだ。正直辛い料理は苦手、胃腸が弱いので在日コリアンの店の方が、味が日本風にアレンジされていて優しく、やっぱり口に合うのだ。
そして独特な料理が多い。ぼくがひいきにする三河島の店ではコブクロの刺身が食べられる。キュウリの千切りと辛いソースが和えてあって美味しい。テール蒸し、センマイ刺し、そういう珍しい料理が好きなぼくにはたまらないエリア。
キムチも同じだ。コロナの影響もあって最近は量は少なくなったのかも知れないが「韓国直輸入」のキムチはぼくは避けている。ソウルで食べるキムチは美味しいのだが(中国製が多いという話は本当だろうか)、日本に来た時点で既に時間が経ち酸っぱくなり始めているのだ。酸っぱくなったキムチは豚肉と炒めて豚キムチにしてしまえばいいのだが、やっぱり白米と食べたい。白米に合うのは日本製のキムチなのだ。醤油の味がご飯にはやはり合う。
在日コリアンの友人はどこでキムチを買っているのだろう。キムジャン、のように自分で漬けている人はなかなかいない。
聞くと町屋や日暮里の店の名前が出てくる。そこで買っているというのだ。やっぱり東京の東側。
だが本当に美味しいキムチは、東京の東でも西でも売っていない。本当に美味しいキムチは、朝鮮学校で売られているキムチだ。
朝鮮学校の公開授業や、バザーなどで学校のお母さんが作るキムチ。売ったお金は学校に還元されるのだがこれが実に美味しい。作り立てなので、まだ白菜と辛味が上手く混ざっていない時がある。数日置いてから食べると辛味が染みてちょうどよい。飯が進む。
この手のイベントにはたまに民族派団体が現れ、カウンターデモを行う団体も現れ、学校周辺は騒々しくなることがあるのだが、政治的主張は一旦収めてキムチ食って、炭火焼肉食べて、白飯食べればいいのになーと思う。
朝鮮学校のイベントで食べる焼肉。キムチ。白飯。他。この組み合わせは本当にヤバい。何度取材を忘れ仕事に穴を空けそうになったことか。
■ 北のHow to その104
日本国内で美味しいキムチを追い求めると、朝鮮学校のバザーにたどり着きます。だいたいワンコイン(500円)でワンパック。夫婦ふたりで1週間で消えます。作り立てのキムチは味がまだ混ざらず発酵が足りないので、数日寝かすのがポイントです。
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サポートいただけたら、また現地に行って面白い小ネタを拾ってこようと思います。よろしくお願いいたします。