三河島Deep!華花
朝鮮舞踊をやっていた女性は年齢関係なく凛としている。芸能人でいうなら女優の菜々緒さんや天海祐希さんのような。年齢がわからない。そして本当にきれいなのだ。
中島らもの「今夜すべてのバーで」に、バーテンダーがすっと足を引いた構えからボクシング歴を見破った一節があるがこれと同じだ。見てすぐにわかる。
背筋と存在感がスッとしているのだ。そして年齢関係なく痩身。太っちょの安禄山は踊りがうまかったというがそれとは違う。
三河島の華花のママさんも朝鮮舞踊歴を感じさせる雰囲気で、トイレには朝鮮舞踊のポスターが必ず貼ってあった。かつて、あるいは今も踊っているのかも知れない。
この店で美味しいのはコブクロ刺とセンマイ刺し。コブクロ刺は辛味を混ぜて酢味噌にきゅうりを和えて食べる。こりこりとした歯ごたえが小気味よくこれだけで3人前くらいかきこみたくなる。時々お手製の梅ジュース、梅サイダーが手書きのメニューに並んだ。
ランチメニューが安かったのだが、あいにく平日昼間に三河島に行く用事はなかった。
この店を教えてくれたのは在日コリアンの友人。北朝鮮の話を存分にしたいと行ったら教えてくれた。
この店の何がいいって、ウナギの寝床状で入口入ってすぐにカウンターがあり奥に座敷がある。密談するにはもってこいの店なのだ。ママさんひとりで回しているからなかなか注文の品が来ないのもむしろいい。
「客も在日ばっかりですから、公安が入ってきても一発で分かるんですよ」。友人はにやりと笑った。
この店は識者の度肝を抜くには存分の効果があって、何度も感謝された。ディープな三河島の中でもディープなお店。
そしてカムジャタン。〆は麺で。一度無粋な友人のせいでスケジュールをめちゃくちゃにされ麺を食べ損ねた。もうひとりの友人に最後、麺まで食べてもらいたかったのだが。無粋な彼はもう誘わない。
もう誘えなくなってしまった。どうもこのお店は閉店したらしい。密談の場所をぼくはひとつ失った。
コリコリのコブクロ刺をもう一度食べたかった。
※ 今回の店はこちら
■ 北のHow to その158
焼肉でコブクロを食べたことは何度もあるけど、刺しはこの店のみ。三河島には未知のロマンがあふれているのです。