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エリカの暴露 第4話 「頂点」



 一週間後、その客はまたやって来た。



「よく会いに来てくれて嬉しいけど、お金は大変じゃない?」



 エリカは懐事情を探るために、気を使うようにして聞いた。




「あまり給料高くないから大変だけど、エリカちゃんのためなら」



 客は詰まったような声で言った。



「嬉しい。ありがとう」



 エリカはそう言って、キスできるくらいまで顔を近づけたが、相手が唇を寄せてきたところを上手く避けた。



「今日はさせてくれる?」



 客は欲しそうな目を向けてきた。



「どうしようかな。もうちょっと仲良くなってから」



 エリカは子どもをあやすように言った。

 こういう薄給の客はおいしい思いをすることだけしか考えておらず、一度体を許したら、もう来なくなるだろう。

 それよりも、本気にさせて出来るだけ通わせた方が金になると、エリカの感が働いた。


 まだ三回目だが、エリカがしたくないという意思を汲み取れていない。

 これは、この客が余程頭が悪いか、エリカに恋に落ち始めていて、まともな判断が下せないかのどちらかだ。


 どちらにしても、しばらくは通ってくれそうである。




 実際にそれからも、何かと理由を付けて断り続けているのに、彼はその言葉を信じ続けた。


 もう彼の頭の中では「したい」という目的よりも、思い通りにいかない悔しさのようなものが渦巻いていて、執念になっているのかもしれない。






 この男のような客が他にも何人も増えた。

 皆、適当にあしらっているのに、次こそはおいしい思いが出来ると信じて何度も通ってくる。

 中には2回目でエリカの言うことが嘘だと気が付く者もいて、爆サイに『エリカとやった』と腹いせまじりに書き込みをするような者も出てきたが、かえって火に油を注ぐようなもので、さらにそういう目的のカモが多くやって来るようになって万々歳だった。






 萩原がエリカにセルフプロデュースを教えたのは掲示板の利用だけではない。


「ツイッターをうまく使え」とも言われた。


 萩原と出会う前までは、エリカは店の指示でツイッターでの宣伝をしていたが、めんどくさいと思い、偶に顔を隠した自撮りを載せるくらいしかしていなかった。


 だが、萩原がどういう写真を載せれば多くの人が喰いつくか、どういう文章が行きたいと思わせるのかなど、様々なことを教えてくれた。


 また、ツイッターで予約開始がいつからかを告知したり、告知後は1日以内に枠が埋まったと報告ツイートをするように言われた。


 常に枠が埋まっている予約困難なセラピストに見せるコツとして、まず予約が埋まらない日は出勤時間を短くしたり休んだりする。



 これが一番功を奏した。


 一度爆発的な人気を演出できれば、もうそんな小細工をする必要もなかった。


 最初から、「本番なんてするわけないでしょ!」と叱りつけて客をしょんぼり、もしくは怒らせて帰らせても、次から次へと新規の客がやって来る。


 しかも、萩原も知り合いなどにエリカに入るように働きかけてくれて、予約が埋まらない日などなくなった。






 エリカはサービス面でも改善をした。



「今日は疲れているからマッサージしないでいいよね?」



 などと前までは客にも平然と言っていたが、今はマッサージを少し覚えた。

 もちろん、大して金にならない客と思ったら、今までのように適当にマッサージをし、ヌキなどもしない。


 それでも、こっちが人気が出て来ると、客の方が自分が金を持っていないからだとか、年を取っているからだとか、イケメンじゃないからなど、あれこれ軽くあしらわれた理由を考えて諦めてくれる。


 ただ、あまりにも口だけだと、そのうち本当に客が来なくなるかもしれないのと、もっと稼ぎたい気持ちもあり、あまり面倒そうじゃなく、見た目がそこまで嫌でない客には5万円をもらってヌキをしてあげることにした。



 だから、掲示板や口コミサイトなどでも、エリカに抜いてもらったと書き込む人もいる。




 それと、店外デートもするようになった。


 最初は3万円に設定したが、皆があっさり払ってくれるので、今では10万にまで跳ね上げた。


 もちろん、食事だけだ。


 ホテル行きたいなら、もっと貰う。
 


 それでも、金を払う人はまあまあいた。



(まあ、私と一緒に外を歩けるんだから、10万でも安いんじゃないかな)



 エリカは本気でそう思っている。


 だが、デートはセックスと違って面倒だ。

 食事に2時間くらいかかるし、その間つまらない話を聞かされるのが、嫌でたまらない。

 セックスなら早く終わらせれば、相手もそれで満足だ。


 メンズエステで出会い、食事したり、セックスしたりするような関係の人が5、6人くらい出来た。


 一番頻繁に会う人で週に一度だが、月に一度の人もいれば、2週間に1回の人もいる。


 いわゆるパパ活のようなものだ。


 だが、エリカはパパたちがいるからといって、メンズエステを辞めることはなかった。


 メンズエステでは月に100万以上稼いで、パパたちには家賃を払ってもらったり、バッグや洋服などを買ってもらっている。

 男たちの欲を満たしてあげなければならないが、比較的に気軽に稼げる。



 ただ、男はブサイクでも、新しい女の方が好きだ。


 だから、エリカはどんどん新しいパパを探さなくてはならない。


 そのため、パパになりそうな人をいつもメンズエステで探している。


 友だちのパパ活をしている子から聞いたところ、現在パパ活の相場はセックス込みで1.5万円だという。


 エリカだから10万円でも支払うということもあるが、やはり、人気メンエス嬢ってだけで、金を弾むのだろう。





 男は本当に馬鹿だ。


 だが、その馬鹿さのおかげでエリカの財布は潤っているので、何も文句はなかった。


 エリカは日々、メンズエステに、パパ活に、彼氏にと、色々とこなさなければならないので忙しかった。


 エリカが有名になってからも、萩原との付き合いはずっと続いている。

 メンズエステのルームで週1回会って、 週2回は外で遊ぶ。


 もちろん、エリカの彼氏には内緒でだ。


 萩原とはセックスフレンドであるが、それ以上に彼女のビジネス上のメンターでもあった。


 萩原が店に来るときは、いつも違った種類の大人のおもちゃを持ってきて、それをエリカに試すのだ。


 エリカも相手が萩原ならと、それに付き合って、色々と変態的な行為をしていた。




 そのうちに、エリカのツイッターのフォロワー数は4000人を超え、5000人にも迫ろうとしていた。

 これは、メンズエステのセラピストではトップクラスである。


 そして、同じ店のあいりのように出勤予定をツイッターで公表するだけで、速攻で2週間分の予約が埋まるほどまでになった。

 なによりもツイッターでの人気や業界での認知度は、あいりを遥かに超えた。

 メンズエステ業界でエリカのことを知らない者はほとんどいないほどだ。

 


 いわば、エリカは業界の頂点に行き着いたのだ。

 続く.....

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