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エリカの暴露 第3話 「ステマ大作戦」



 エリカと萩原が事に及んだあと........



 まだ時間が余っていたので、マットの上で萩原に引っ付きながら話をしていると、



「エリカって、もっと人気出ていいと思うんだよね」



 萩原が天井を見ながらぽつりと漏らした。



「私もそう思います」



 エリカは笑顔で言い返した。



「エリカなら、都内で一番予約が取れないくらいのセラピストになれるよ」



 萩原がまじまじとエリカを見て、自信に満ちた口ぶりで言ってくる。



「どうすればなれますか?」



 エリカはきいた。



「俺に任せてくれたら」



 萩原は答えた。



「お願いします」



 過去に一度たりとも誰かに心から頭を下げたことのないエリカだったが、この時ばかりは本気で願い出た。

 すると、萩原がむくりと上体を起こし、胡座をかいたので、エリカも体を起こして向かい合った。



「まず、掲示板をうまく使うこと」



 萩原が重たい声で言う。



「掲示板?あんなの誰が見るんですか?」



 掲示板に載っている情報は大抵いい加減だし、妬みや僻みを持っているセラピストが気に食わない他のセラピストを中傷しているか、店のオーナーやスタッフが他店の悪口を書き込んでいるかのどちらかとしか思っていなかった。



「あそこに載ってる情報は八割はいい加減だけど、中には本当のこともある。書き込みしてない人でも、情報を参考にしてる。たとえば、Aっていう女の子には同じ店の気に食わないBっていうセラピストがいるとするでしょ。Aが嫌がらせのために「Bは本番してる」と書き込んだとしよう。すると、その情報を完全に信じないものの、どうなんだろうと確かめに来る人たちがいるわけ。Bには体目当ての客ばかりやって来るけど、客の数は増える。そして、Bは予約困難なセラピストになる。Aは嫌がらせしたつもりが、結果的にBを人気嬢にしてしまったわけだ。まぁ例えがわかりづらかったかもしれないけど、これは本当にあった話で、何が言いたいかというと、常に予約満了にするなんて、こっちのやり方次第で出来るってこと。一度予約の取れない人気セラピストだって名前が広まったら、あとはそんなセコいことしなくても勝手に客はやって来るよ」



 萩原は淡々と説明してから続けた。



「とりあえず、「エリカは本番させてくれる」と掲示板に書き込んだ方がいい」



「えっ?」



「すぐに客はいっぱい来る。大丈夫、本当に本番させる必要はないんだから」



「でも、無理矢理襲ってきたら?」



「どうせメンズエステに来るような奴らだ。責めるより責められる方が好きだろ」



「でも……」



「カメラが付いてるからとか、スタッフが部屋の外にいるとか、いくらでも脅し文句はある」



 萩原は当たり前のように言った。







 さっそく、その日の出勤が終わってから、エリカは萩原に教えられた爆サイという掲示板に店のスレッドとエリカ専用のスレッドを立てて、エリカがいかに綺麗か、マッサージが上手かなどをたくさん書き込んだ。


 もちろん、いい噂だけではなく、本番が出来るなどということも紛らせた。



 全て萩原のアイデアである。


 良い噂、悪い噂に限らず、エリカに関しての情報が多ければ多いほど、掲示板を見ている者たちはエリカが人気セラピストだと思う。大抵の客は人気セラピストなら、何か良い思いができるのではと勘ぐる。


 荻原とエリカは、そこを狙ったのだ。




 掲示板の反応は早かった。

 一番多く反応が寄せられたのは、本番ができるということだった。

『そんなことあるはずない』とか、『いくらで出来るの?』など様々な投稿が飛び交った。

 エリカは具体的なことには答えないで、


『とにかく、入ってみたほうがいい。絶対にヤレるから」


 と、念を押した。







 そして、爆サイに色々書き込んで数日経ったある日。


 たまたま事前予約でキャンセルした枠が出てきたが、初めての客が予約をしてくれた。その客は40代半ばくらいの大きなお腹の脂ぎった男で、一応大企業の営業をしていると言っていたが、それもどうか怪しいような安いスーツを来ていた。



 施術の終盤になり、



「ヤラせて」



 客が言って来た。


 今までのエリカであれば、好みでもなく、大して金もなさそうなこの客の顔を引っ叩いていたが、



「私とヤレると思ったんですか?」



 と、意味ありげな含み笑いをした。

 すると、客は脂肪で覆われた短い首をこくりと頷かせた。



「どうしてですか?」



 エリカはさらに優しい口調で追求した。



「ちょっと、そういう噂を聞いたから」



 客は少し戸惑いながらも正直に答える。



「もしかして、掲示板とかで?」



「そう……」



 客は再び小さく頷いた。



(やっぱり、あの効果はあったんだ)



「ヤラせてくれないの?」



 客は不満そうに口にした。もう客の男性器は萎えていた。



「次来たら、いいことしてあげる」


 エリカはそう言って、彼の男性器を軽く握った。すると、客は「わかった」と呟いて、その場は収まった。





 その客はその数日後にまた戻ってきた。


「今日はヤラせてくれるよね?」


 と、また要求してくる。



「ごめんね、生理なの。今日は大人しくしていてね」



 エリカはまた客の股間に手を置いて言った。

 客はあからさまに残念そうな顔をしていたが、無理やり襲ってくるようなことはなかった。



 続く……

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