#ELLEDecember2021 インタビュー (後編)2021/12/15

2021年12月15日発売のELLE 2021年12月号のインタビュー記事の後編です。

前編はこちら


テーさんの言葉が続きます。

(泰→日)
 実生活でも新しいドラマの中でもテーは繊細な人物だが、か弱いわけではない。自分自身に様々なことを経験させることで、彼の心はしっかりと動じないものになった。「会社にいた若い頃も僕はエンジョイしていましたよ。会社の先輩と仲が良かったから。いまでもお喋りしています。最初の映画(※1)をやるときに僕は仕事を辞めました。腰を据えて考えました。もしやらなかったら後悔しないだろうか?それまでにチャンスはたくさんあったけれど、僕は自分自身にチャンスを与えてこなかった。できっこないと思った。ただ、演技を止めなければならなかった話もあったりします。僕はそれでレストランを続けてきましたし、いまも開店しています」テーは黙って考えた。「僕は読書が好きです。哲学の本を読んでいると、ある一冊に20、30代は模索の時期だと書いてありました。それで僕は模索するし何でも試してみるんです」彼は再び黙った。「僕は自分に自信がないのかも知れませんね。色々なことに挑戦したいんです」

 継続した演技の仕事がなかった、2moonsシリーズを演じる前の時期とは違う。その時期を経て、テーは自分自身の演技の道を徐々にこのように固めていったのだろう。「何だか好きなことがあることに気が付き始めました。演技です。自分にはできっこないと思っていたことが、できるようになった」 テーは言う。「演技は、音楽の演奏に似ています。ポイントを掴むことができて自分自身のflowが見つかってきたら、それを続けることができる。でも一つ前々から変わらないことは、僕はずっと自分のことを普通の人だと思っているということです。人気は一時的なものです。美しい世界(※2)のようなことを言うことはできないですよ。僕は、自分が予想していなかったような状況をたくさん経験してきました。色々なことがありました。たくさんの困難を乗り越えてきました。執着しなければ、あまり痛みを感じません。僕は何であっても流行というのは一時的なものにすぎないと知っています。タイミングが合えば上がる、でも落ちるタイミングでは下のほうにいるものです。僕が落ちて行くんじゃない。僕は、僕がいつもいる場所にいるんですよ。それに僕は図に乗っているときの自分は好きじゃない。褒めてくれる人がたくさんいると、浮かれちゃう。でも僕は隠遁生活が好きな人間っていう感じ。それで自分自身をしっかり見つめ直したんです」

 ビデオクリップの撮影中、不運にもカメラが熱くなるので断続的に休止しなければならなかった。シントーは検証的な目でカメラを見つめた。彼は使用履歴を詳しく尋ねた。一方のテーはこちらを振り返って言う。「ドラマの中で、僕とシントーのキャラクターの性格は全然違うんですよ。彼はカンペキな人間です。勤勉な億の若者(※3)。僕はというと芸術家気質のアーティストでトラブルメーカー。片方に足りないものを、もう片方が持っているんです」 実生活でテーとシントーの二人に何か似たところはあるかと訊くと、二人がほとんど同時に答えた。「隠遁生活が好き」 続けてシントーが説明する。「チームのP’たちが不平を言ってくることがあるんです。仕事続きで疲れているのに、どうして寝ないんだって。何でまだゲームをしてシリーズを見て本を読んでるんだって。だけど僕はこれが僕の休息なんだと思ってるんです。一人でいるときにすることですね。でもP’テーほどじゃない。P’テーは一ヶ月何も投稿しないこともあるんですよ」 シントーは告げ口した。

 より背の高い人は言い訳はしなかったが、長々と説明した。「実際、僕は密かに罪悪感を感じています。個人的なことをシェアするのがあまり好きじゃない僕の性格のせい。でもファンたちが僕を待っていることは分かっています。僕に何かニュースをアップデートしてほしい。これは僕が改善しないといけないことです。僕は一度に一つのことにしかフォーカスできない。シリーズを撮っている間は、僕はキャラクターと共にいる。携帯を触らない。同時にたくさんのことができない人間なんです。僕は集中力を失いやすい。それは長所でもあり、短所でもあります。一か月SNSを使わなかったことも。どこかでぼんやりしていたわけじゃなくて、ただ別のことをしていただけです。新作があると、ファンたちはテーが森から出て外の世界に来たと言うんですよ。シントーのファンたちにも言われました。『P’テー、森に引きずり込んで行かないでね』って。シントーにも同じように隠遁生活をする傾向があるから」

 二人のピーノーンのもう一つの共通点は、『夢中になること』だ。シントーはカメラとレンズに夢中で、何バーツも資金を費やして購入してきた。写真を撮る時間はそれほど持てないとしても、彼はよく心の中で『でも持っているだけでいいんだ』と反論する。「チャンスはいつやって来るか分からない」とシントーは自分を庇った。「僕は前に知り合いの先輩アーティストのコンサートでカメラマンをしたことがあります。cameramanの札を下げて写真を撮らせてと頼んで。インターンシップ中に『เทยเที่ยวไทย(※4)』と『School Rangers(※5)』の現場にカメラチームとして行かせてと頼んだこともあります。僕はいつも裏方で働く方法を探しています。高いポストである必要はありません。ただチームの一員になりたい。SOTUSの後、Y分野には新世代の後輩の俳優たちがたくさん参入してきています。思うに、新人たちがたくさん入ってきてお互いに助け合い成長していく。将来的には新世代の俳優たちの裏方として働くのもいい」

 テーはシントーの一言一言に共感しながら聞いていた。ごく幼い頃からミュージシャンになりたいと夢見ていた彼には『パッション』という言葉の意味が誰よりもよく分かる。「僕はギターがとても好きなんです」と、テーは彼が夢中であるものを明かした。「中高生の頃は、エフェクターを持っている人がいたらカッコイイなって。でも僕がお小遣いを貯めるより先に、家族がギターを買ってくれた。高価なものですよね。大きくなって自分で稼げるようになってから買い揃えました。毎日エフェクターを見に行って、空き時間にはユーチューブで神ギタリストたちを見る。彼らはどんなギターやエフェクターを使っているのか、それでそれに倣って買いました」 彼は十にも上る所有のギターを笑った。

 「でも僕が歩んできた道は、音楽とは程遠いものでした」 そう言う彼の瞳は少し憂いを帯びていた。しかし彼はもう気持ちを断ち切っているのだ。彼は落ち着いた口調で続けた。「それは残念ですけどね。パッションと現実を区別しないといけないこともあります。今は、僕は音楽を趣味として捉えている。職業としてやればきっとストレスで苦しむことになるかも知れない。だから僕は音楽を人生の幸せのままにしておきたいんです。それに、色々なことをする内に分かったんです。やっていることを好きになることで、人生もきっと良いものになっていく」

 「ただ、でも」シントーは、似たお兄さんに続けて、演技がテーの現在のパッションなんだと代わりに説明したいと言った。「炎があれば仕事はより良くなります。ウキウキと取り組める仕事がある、すごく一生懸命にやろうと思う仕事がある、僕はそれがパッションという言葉だと思う。もし僕たちにパッションがなければ、きっと最初からこの職業には就いていないし、あるいはそれを長く続けることなんてできないでしょう?」

以上です。

注釈

(※1)
2016年の映画 『Midnight University มหาลัยเที่ยงคืน』を指す。他のインタビューによると撮影時期はもっと前だったようです。

(※2)
ここでは楽観的な考えのこと。

(※3)
อายุน้อยร้อยล้าน 若くして億万長者になった人を取り上げるテレビ番組のタイトルから。
(参考 番組プレイリスト)

(※4)
テレビ番組『เทยเที่ยวไทย The Route』EP.418

(※5)
テレビ番組『รถโรงเรียน School Rangers』EP.120,121


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