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伝説のCDシリーズ『プロレスQ』の軌跡を辿る
約13000文字あります。
解説
プロレスQとは
『プロレスQ』はキングレコードから発売されたプロレスに特化した企画アルバムのシリーズ。
1990年代後半、今以上にプロレスのテーマ曲を集めることが困難だった時代に、レコード会社の壁を飛び越えて貴重なプロレス音源を多数収録したプロレスQの登場は業界内外で大きな反響を呼んだ。その結果、1998年から2002年までの間に11作品がリリースされるロング・シリーズに発展した。
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2002年に一旦シリーズは長い休眠に入るも2012年に復活。2022年に同時リリースされた「プロレスQ JACK」「プロレスQ QUEEN」が現時点での最新作となっている。
プロレスQシリーズの大きな特徴は
・1. クイズ形式を謳い、誰のテーマ曲かは明記されていない点
・2. アナログ・オンリー、未商品化などの貴重な音源を初CD化している点
1.のように、ただのプロレス・オムニバスには留まらず、ライナーノーツのヒントをもとに使用選手を解き明かすというのがプロレスQならではの楽しみ方。”選手名の表記されないプロレステーマ曲CD”という異名もこのコンセプトに由来する。
ただし、4半世紀前のマニアックな情報が元になっていることもあり、全体的にクイズの難易度はかなり高く、プロレスファンでも全問正解は至難の業だ。
2.の貴重な音源の発掘に関して、代表的な例を挙げれば、70s'邦ディスコ・ファンクのキラーチューン「阿修羅」、上田馬之助のテーマ曲「地獄に落ちろ!」、Netflix『極悪女王』でも取り上げられた「Black Devil」、ブルーザー・ブロディの全日版「移民の歌」、カルト歌謡「マッチョドラゴン」、SWSの各選手テーマ曲・・・などなど枚挙にいとまがない。
企画の仕掛け人は、キングレコードの大槻プロデューサーと週刊プロレスの小島記者。大槻Pは1990年代前半から「プロレス・インディペンデント・ファイターズ」をはじめ、「W★ING」「みちのくプロレス」など数多くのプロレス・テーマ曲CD制作に携わっていた。小島記者も大槻Pとタッグを組みCDにライナーノーツを寄稿していた。
キングレコードさんのスタジオでデビュー曲「みちしるべ」のレコーディングでした!
— 田口隆祐(いわぬまPR大使) (@taguchiryusuke) June 15, 2016
キングレコード大槻さん
ありがとうございます☆
プロレスQシリーズファンだった私!
大槻さんとお仕事できるなんて光栄なこと☆ pic.twitter.com/uoNQJZqhjJ
大槻Pと小島記者が90年代半ばにあるプロレス興行で再会し、新たなテーマ曲CD制作の話題が持ち上がった。その際、大槻Pの念願だった上田馬之助のテーマ「地獄へ堕ちろ!」のCD化実現も兼ねて誕生したのが「プロレスQ」のはじまりだという。
このような制作経緯に関しては、清野茂樹アナによる本『1000のプロレスレコードを持つ男』(2017, 立東舎)における清野アナと大槻P&小島記者の対談が詳しい。
当時のこぼれ話や、シリーズのキーマンでもある上田馬之助に対するリスペクト等、貴重な証言が語られている。
収録曲について
初期はキングレコードの自社音源を中心に、有名どころからマニアックな楽曲まで収録。当初の選曲は、ネタ的要素やクイズの問題として成立するかを重視していたという。
「2」以降は反響に応える形で、当時入手困難だったレア音源の発掘にシフト。2000年頃、週刊プロレス別冊「ケンファー kampfer」の誌上において「幻のプロレステーマ曲発掘プロジェクト」として収録曲のリクエストを募ったところ、予想を上回るハガキが殺到した。
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その後、『”夢のCD” リクエスト・ベストテン』と題して結果が発表され、ランクインした楽曲の多数が収録実現を果たした。収録CDの解説文には権利関係の交渉に奔走した苦労が語られている。
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発売当時存在していた「プロレスQ」公式HP内のサイト掲示板でも収録リクエスト楽曲を募集しており、後に収録される「プリンス・トンガのテーマ」(「Q10」収録)「ブッチャー・ザ・グレイテスト」(「Q11」収録)がリクエストされていた。
リクエスト曲以外では「全女レトロ復刻版」と題し、LP『女子プロレス スーパー・ファイターのテーマ』を中心とした全日本女子プロレスの未CD化音源の収録も定番であった。
また「プロレスQ」〜「4」まではW★INGの関連楽曲が必ず収録されていた。かつて大槻P&小島記者が団体のテーマ曲CD制作に携わった経緯もあり、近作の「JACK」では当時の団体スタッフだった大宝リングアナを呼び、新録楽曲を収録するなど、W★ING魂健在をアピールした。
クイズ要素
「プロレスQ」のコンセプトの1つは『クイズ』。ライナーノーツには収録曲ごとに”この曲は誰の入場テーマか?”といったクイズが設けられている。そのためシリーズを通してCDには選手名・団体名が記載されていなかった。
CDにはアンケート用と兼ねた解答用のハガキが封入されており、全問正解者の中から抽選でスタッフ秘蔵のレア・グッズを贈呈するプレゼント・キャンペーンを行っていた。
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プレゼントの内容は、CDにもハガキにも記載されていないため、謎に包まれている。ただし第1弾「プロレスQ」に関しては、当時の公式HPにプレゼントの内容が記載されていた。以下はその抜粋である。
・藤波・橋本サイン入り夫婦湯呑
・スティング・フェイスマスク
・復活W★INGプレス・パス
・宇宙パワー覆面(応援用)
・ピラタ・モルガンのシール
・C奥津セット(JWPパンフ、タイガー・ドリーム非売品カード)
クイズの内容に関して、曲名に使用選手の入場テーマ曲を冠しているケースや、有名すぎて使用者が明確な場合には、更に捻ったマニアック・クイズが用意された。以下はその例である。
「ジャッキー(佐藤)が紅白歌合戦に出たのは昭和何年?」
Q.「ダイナミック・ジャガーのリーダーって誰?」
Q.「この曲が主題歌となったアニメ番組の関東地方での放送日時は何曜日の何時からだった?」
クイズの正式な解答は、CD発売後に当時の「プロレスQ」公式HP上で掲載された。そのため当時は答え合わせが可能だったが、それも20年以上前の話。2025年時点で公式HPのURLはデッドリンクとなっており、クイズの正式な解答を確認することが出来なくなっているのだ。
もし今から「プロレスQ」シリーズを入手したとして、誰のテーマ曲か気になったら最後、答えを探すためにはインターネットで根気良く調べるほかないのだ。ちなみにChatGPTといったAIではまだ難しい。
・参考(ChatGPT)
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余談だが、シリーズ近作の「JACK」「QUEEN」では、解説文からクイズが無くなり、今まで記載されていなかった選手名・団体の名前が明記されるようになった。
理由は不明だが、シリーズ後半の「プロレスQ 11PM」以降、選手名や団体名がタイトルに入ってる楽曲が多くなった事も関係しているかもしれない。
『#プロレスQ』といえば、選手名の表示されていない入場曲CDです。もちろん今回もそれは踏襲しています。ですが、Queenに収録した曲には、選手名がそのまま曲名というのがたくさんありまして…。 pic.twitter.com/7Qc0CQx0dI
— キングレコード プロレス PRO-WRESTLING (@king_fop) May 17, 2022
関連商品・関連作品
「プロレスQ4」~「プロレスQ9」の発売時には不定期刊行のフリーペーパーが発行され、プロレス会場などで配布されていたという。vol.4まで確認されている。
2000年の暮れにはオリジナルグッズとして「プロレスQ」オリジナルTシャツの通信販売行われた。色は『プロレスQ』『プロレスQ2』のジャケット・カラーに合わせて、赤・青の2種類が用意された。
「JACK」「QUEEN」 発売の際には初回購入特典として特製トートバッグがプレゼントされた。
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CDではナンバリング以外に「プロレスQ SERIES」と銘打たれて、2001~2005年の間、当時新興団体だった『大阪プロレス』『KAIENTAI-DOJO』の入場テーマ曲CDがキングレコードからリリースされた。
ただし2006年以降の発表したCDに関しては、「プロレスQ」シリーズの名前は無くなっている。
・大阪プロレス
「大阪プロレス」(KICS-2350)
「大阪プロレス物語」(KICS-2399)
「大阪プロレス The 3rd.IMPACT!」(KICS-2463)
・KAIENTAI-DOJO
「KAIENTAI-DOJO」( KICS-2400)
「KAIENTAI-DOJO 2」( KICS-2465)
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またシリーズとは直接の関連はないものの、2002年以降のシリーズ休眠期間中、VAPから「J~プロ・格探偵団」(2003)、ユニバーサル・ミュージックから『レッスルヒッツ』シリーズ(2005~2006)というプロレス・コンピレーションアルバムが発表された。
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「J~プロ・格探偵団」は鈴木宏昌率いるザ・プレイヤーズによる「J」オリジナル・バージョンをはじめ、VAPならではの貴重音源を収録。「レッスルヒッツ」は選手名を明記せず、洋楽系のプロレス・テーマ曲音源をこれでもかと収録。両者とも各社ならではの強みを出したプロレス・コンピとなっていた。
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これらがプロレスQにインスパイアされて発表されたかどうかは真相は不明だが、プロレスQシリーズに飢えていた当時のプロレス・ファンにとって、救世主のようなアルバムだったかもしれない。
シリーズ紹介
格闘音楽大全 プロレスQ(KICS-2282/3)
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記念すべき第一弾。シリーズを通して、唯一の2枚組となっている。
DISC1
1. 阿修羅 ★
2. FREDDY KRUGGER
3. 刺客のうた
4. FIGHT FOR YOUR LIFE
5. WAR GAME
6. BEAUTIFUL CHALLENGERS ★
7. ウェスタン・ラリアート
8. パワー・ホール
9. ビューティフル・フライト
10. LEATHER FACE
11. ONE WAY TO THE WORLD
12. バックランド・ストレート
13. MUTA
14. THE RED SPECTACLES
15. LOST AND FOUND
DISC2
1. FIRST ATTACK
2. DANGER ZONE
3. SEPARADOS
4. SHARP DRESSED MAN
5. BLACK SOLDIER
6. ストロング・ハッグ
7. サーベル・タイガー
8. アメリカン・ドリーム
9. UWFプロレス・メインテーマ
10. ジャイアント・プレス
11. ドラゴン・スープレックス
12. みちのくプロレスのテーマ
13. チャイニーズ・カンフー
14. ストロング・マシーン We are No.1
15. 地獄へ堕ちろ! ★
過去にキングレコードから発売されたプロレスCDから、選りすぐりのテーマ曲をこれでもかと集めており、最初にしてベスト盤的ラインナップとなっている。シリーズ初期ということも有り、キングの自社音源が多数占めていることも特徴。
初CD化となった「阿修羅」「地獄へ堕ちろ!」に関しては、企画の出発点となったことや、”未CD化音源の収録”という後続シリーズの路線を決定付けたこともあり、シリーズにおいて重要な位置付けとなっている。
格闘音楽大全 プロレスQ2(KICS-2289)
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第1弾の反響受けすぐ制作決定された第2弾。このアルバムよりレア音源の発掘シリーズとしての要素が色濃くなる。
1. 燃えろ!吠えろ!タイガーマスク ★
2. タイガーマスクのテーマ ★
3. ローリング・ドリーマー ★
4. MARCH OF S.O.D.
5. 阿修羅PART2 ★
6. CASH ON DELIVERY ★
7. スナイパー・フロム・ザ・ダークネス ★
8. The Monster ★
9. I Believe Me ★
10. AUTUMN LORDS
11. W★INGER
12. 燃えよ荒鷲
13. チャンピオン ★
1. 2. とタイガーマスク関連の音源が待望のCD化。1.については誰が歌っているか?がクイズとなっている。6.は小島記者イチオシにして超難問。
コレ、プロレスラーじゃなくて某関係者のテーマ曲、なんだよね(でもカッコいい佳曲)。ボクのワガママでCD化しちゃいました。
本作の「全女レトロ復刻版」枠は8, 9。「W★ING」枠は4, 10, 11。
格闘音楽大全 プロレスQ3D(KICS-2314)
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前作からわずか2ヶ月弱で発表された第3弾。
1. ワールドプロレスリングのテーマ
2. テレビ朝日スポーツ・テーマ
3. ダンバインとぶ
4. Destiny Light
5. Red Phoenix ★
6. Black Devil ★
7. WILD&MILD ★
8. Main Title Of Tales From The Crypt
9. The Judges ★
10. Satisfaction
11. スピニング・トーホールド
12. ギャラクシー・エキスプレス ★
新日本系の楽曲、全日本女子プロレスのレア音源を中心に収録。
一番の目玉は初CD化となる12.で、先述のkampfer誌上で募集された「”夢のCD"リクエスト・ベストテン」において1位に輝いたファン待望の1曲だった。発売当時は小川直也がPRIDE初参戦の入場テーマ曲として使用したことで再注目されていた背景がある。
ちなみに初出は日本語版『スターウォーズ(歌:子門真人)』のEP盤。
本作の「全女レトロ復刻版」枠は5~7。「W★ING」枠は8, 10。
格闘音楽大全 プロレスQ4ever(KICS-2315)
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当初はシリーズ最終作として想定されていた1枚。タイトルの4ever(Forever)は、テリー・ファンクの引退セレモニーのマイクではなくn.W.oが由来。
1. 軍艦行進曲
2. 移民の歌 ★
3. おまえは虎になれ ★
4. バーニング・タイガー
5. DESTRUCTION2
6. ATLANTIC CROSSING
7. Jackie ★
8. Shoot it ’95
9. LIFE FORCE
10. クシコス・ポスト
11. BLACK-RIDER ★
12. Mr. BD
13. WILD THING(ニタ・バージョン)
14. WINGED MESSENGER
ファンからの要望が非常に高かった2. ロック・メッセンジャー版「移民の歌」、や11.「BLACK RIDER」、会場限定販売のカセットテープに収録されていたという13.「Wild Thing」を収録する快挙を成し遂げるなど、資料価値の高い内容となっている。また今回の「W★ING」枠となる9.はシリーズ初の新録音源。既存の楽曲にある選手のボイスを追加収録したもので、当時の週プロにその様子が掲載されている。
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本作の「全女レトロ復刻版」枠は7。
格闘音楽大全 プロレスQ第五回プロレス紅白(KICS-2316)
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本作はクイズ形式から離れ、プロレスラーの歌モノで紅白歌合戦をやってみたという番外編にして、シリーズ存続を決定付けた重要な1作。
●OP
1. 乾杯の歌
●第1部 紅組先攻
2. 闘え!ファイヤージェッツ
3. ローリング・ドリーマー ★
4. 颱風前夜
5. ウルトラ・バズーカ
6. (CHANCE)[↑]3
7. マッチョドラゴン ★
8. 極悪 ★
9. 星空のグラス ★
●応援
10. 男は馬之助
●第2部 白組先攻
11. ゆき子 ★
12. 炎の叫び ★
13. 俺は闘犬 ★
14. 炎の聖書
15. 明日の誓い ★
16. かけめぐる青春
●ED
17. 蛍の光
今尚燦然と輝く7.「マッチョドラゴン」をはじめ、歌入り3.「ローリング・ドリーマー」など貴重音源が初CD化された1枚。近年Netflixのドラマ『極悪女王』で再注目された8.「極悪」も収録。
本作の制作中、実際に入場曲として使われた「マッチョ・ドラゴン」のインスト版が現存していることが判明し、プロレスQシリーズの存続に繋がった。
(「プロレスQ5紅白」についての話題)
小島「楽しかったですよ。本当にやりたかったのは、これかもしれない!!と思うくらいに。」
大槻「『5』に収録されたマッチョ・ドラゴンの問い合わせがすごくてね」
ちなみに紅組は2, 4, 6, 8, 12, 14, 16。白組は3, 5, 7, 9, 11, 13, 15といった扱いになっている。
格闘音楽大全 プロレスQ6 Peach(KICS-2317)
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女子プロレスをコンセプトにした1枚。サブタイトル「Peach」と関連して、発売日も桃の節句となっている。
1. KINGDOM(今井バージョン) ☆
2. BEAUTIFUL CHALLENGERS
3. BLACK SOLDIER
4. STAND IN THE SHADOW ★
5. STAR LADY ★
6. Neo
7. DIGITAL BAT
8. STAGE FIGHT
9. YOU BE SO WRONG
10. DEEP SHOT
11. 選手権試合宣言
12. BLACK DEVIL
13. ROLLING SABOT Theme of Crush Gals
14. エンディングテーマ
1, 11は既存の楽曲に全日本女子プロレスの氏家・今井リングアナと松永会長による新録ボイスを加えた本CD特製バージョン。
5.はプロレスQシリーズ休止後にデビューしたSTARDOMのコグマ選手のテーマ曲としても使用された。6. は過去にCDやカセットで発売されていたかが不明の1曲。
格闘音楽大全 プロレスQ777DX(KICS-2318)
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当時の公式HPによるとタイトルの読み方は「ぷろれすきゅうななななななでぃーえっくす」(原文ママ)とのこと。
1. カクトウギのテーマ
2. チャイニーズ・カンフー
3. SNIPER
4. J
5. SPEED KILLS
6. WILD WIND
7. ダイナミイク・ジャガーのテーマ ★
8. その六・翔リ ★
9. OASIS
10. マッチョ・ドラゴン ★
11. フライング・ボディ・プレス ★
12. Grand Punk Railroad~WARオープニング・テーマ
発売直前にジャンボ鶴田が急逝。その為追悼の意を込め、入場テーマ曲の「J」と「チャイニーズ・カンフー」が収録された。
1. は言わずと知れた坂本龍一が手がけた名曲。多くがサブスク視聴困難となっているプロレスQの収録曲では珍しく公式視聴できる楽曲の一つ。
10.は『プロレスQ5』から経て、待望の初商品化を果たしたインスト版。2025年現在、メディア化されているのはこの『7』のみ。
格闘音楽大全 プロレスQ8時だヨ!全員集合(KICS-2319)
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ライオンマークの某大手プロレス団体をテーマとした選曲で構成された1枚。団体名は1問目の解答にもなっている。
1. 朝日に栄光あれ(テレビ朝日スポーツ・テーマ) ☆
2. タイガーマスク2世
3. 怒りの獣神
4. 荒野の砂塵 ★
5. URBAN SUNRISE ★
6. 望~継げし者たち
7. QUICK AS LIGHTNING!
8. 超闘王のテーマ
9. HOLD OUT
10. 爆勝宣言
11. RISING
12. 炎のファイター
目玉は1。別テイクも存在しているが、実際にプロレス番組で使用されたバージョンを初CD化。
3,をはじめ所謂”メジャーな楽曲”が多い中、このアルバムでしかCD化されていない貴重な楽曲(4. 5.)も収録されている。ちなみに9~11は有名曲ながらも、発売当時は収録CDが廃盤だったため、入手が難しかったという。
格闘音楽大全 プロレスQ第九(KICS-2320)
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前作と比較し、王道系の某大手プロレス団体に関する楽曲が多く占めている。
1. Introduction~雷鳴
2. Thunder Storm
3. ハリケーンズ・バム ★
4. スーパー・マッスル ★
5. MOTION
6. SUNRISE
7. WHO COMES IN ANGER ★
8. YANKEE STATION ★
9. YAMATO PART 1
10. アトミック・ボンバー ★
11. BLOODY KILLER
12. SPARTAN X
ライナーノーツにも書かれているように”素材集”としての側面も強い1枚。実際、1, 5, 7, は合体テーマ曲のSEやイントロ部分の原曲。その他、1980年代に多くのTV/映画で活躍しながら、殆どが未CD化となっている作曲家・木森敏之のサントラ曲を収録している(7, 8)点も見逃せない。
目玉は2。平沢進が別名義で作曲したことでも知られるテーマ曲で、プロレス楽曲では珍しく徳間ジャパンの作品だったこともあってか、シリーズ初期から収録希望は高かったものの、権利関係から中々実現に漕ぎ着けなかった曰くつきの1曲だった。シリーズ9作目にしてCD化が実現したことはスタッフにとっても大きなポイントだったという。
大槻「いよいよネタがなくなって困ったので、『9』ではスタン・ハンセンの編集パーツを入れたりして」
小島「この『9』で、ようやく「ハリケーンズ・バム」の収録許可が出たんで、この盤が僕的には2度目のゴールだったかなと」
格闘音楽大全 プロレスQ10番勝負(KICS-2380)
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1年以上のブランクを経て発表された10作目。
1. Sunrise
2. Revolution ☆
3. パライストラ ☆
4. 道場・檄 ☆
5. プリンス・トンガのテーマ ★
6. YAMATO Part.4
7. 魅魔 THE SENSATION
8. 汚れた英雄
9. 傷だらけの栄光
10. ザ・ブッチャー ★
目玉はなんと言っても門外不出だったSWSのテーマ曲音源(2, 3, 4)。実際にディレクターがSWSを運営していたメガネスーパーに掛け合って収録が実現した事がライナーノーツに記載されている。
1.は前作「プロレスQ9」収録された同名曲のアルバムver。会場で実際に使用された8分バージョンの長尺音源である(「Q9」に収録されたのは短いシングルver)。
7.は久々の「全女レトロ復刻版」枠。
格闘音楽大全 プロレスQ11PM(KICS-2381)
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シリーズ11作目。このアルバムを最後にプロレスQシリーズは一旦幕を閉じる。
1. ブッチャー・ザ・グレイテスト ★
2. スリーパー・ホールド ★
3. TERRIBLE GIFT
4. Ready To Fight?
5. SWS天龍源一郎のテーマ ☆
6. SWS佐野直喜のテーマ ☆
7. SWSジョージ高野のテーマ ☆
8. SWSザ・グレート・カブキのテーマ ☆
9. SWS谷津嘉章のテーマ ☆
10. SWS維新力のテーマ ☆
11. 一番星ブルース
前作に引き続き初商品化となる、SWS関連の入場テーマ曲が目玉。曲目の通り、既にタイトル名でネタバレされているものが多く、クイズ要素は薄くなっている(実際、ライナーノーツにも明記されている)。またライナーノーツにはSWSのテーマ曲に関するコンセプト資料の存在が明かされている。
本作の「全女レトロ復刻版」は4。
格闘音楽大全 プロレスQ KING(KICS-1792)
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10年ぶりに復活したプロレスQ。タイトルの「KING」はキングレコードが由来の一つだという。ジャケットにもキングレコードのロゴマークが。
1. UWFプロレス・メインテーマ
2. BEAUTIFUL CHALLENGERS
3. DANGER ZONE
4. チーム“FMW"
5. みちのくプロレスのテーマ
6. 大阪プロレスのテーマ
7. KAIENTAI DOJOオープニング・テーマ
8. Future and dream 沖縄プロレスのテーマ
9. FIRST ATTACK
10. Grand Punk Railroad
11. BJWメインテーマ
12. アブノーマル・パラダイス?海援隊☆DXテーマ曲
13. ONE WAY TO THE WORLD
14. 冬木弘道・愛のテーマ
15. 地獄へ堕ちろ!
団体テーマ曲を中心に構成されており、ベスト盤「プロレスQ」といった趣きとなっている。その他シリーズに縁のある選手の関連曲も収録。
15. は前年に逝去した上田馬之助のテーマ曲で第1弾「プロレスQ」からの再録。シリーズにおいて上田馬之助の存在は大きく、「地獄へ堕ちろ!」の収録は、”貴重音源の発掘”というシリーズ全体のコンセプトにも影響を与えた。そのため、「KING」は上田の追悼アルバムとしての意味合いが大きく、ジャケットにもその要素が含まれている。
格闘音楽大全 プロレスQ リターンズJack(KICS-4062)
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「KING」発売より10年経って復活した最新作。後述の「QUEEN」との同時発売となった。
ライナーノーツによるとシリーズ再開のキッカケは、小島記者が『W★ING流れ星伝説 星屑たちのプロレス純情青春録』を上梓した際に大宝リングアナとの再会を果たした事。
その縁で1, 12,は大宝リングアナが新録で参加。その他にも関連音源が収録されており、W★ING魂が爆発したアルバムとなった。
ジャケットはW★INGの名物選手だったジェイソン・ザ・テリブルを模したもの。
1. DANGER ZONE(W★ING入場式バージョン) ☆
2. ぶっちぎりの青春(川口オートレース テーマソング)
3. タイガー・マスク
4. GO ON BOARD AGAIN ☆
5. Go for broke(プロトタイプ) ☆
6. KEEP DREAMING ☆
7. Muy bien ☆
8. 「タイトル未定」 ☆
9. KAITO ☆
10. Resurrection
11. SATISFACTION
<ボーナストラック>
12. DANGER ZONE(W★ING名選手&スタッフ紹介バージョン) ☆
13. W★INGスクランブルバンクハウス6人タッグデスマッチ ☆
目玉は未商品化音源だった鈴木軍時代(2015~2017年)における箱舟団体のテーマ曲。8.の「タイトル未定」は、当時の週刊プロレスの選手名鑑によると、該当選手のテーマ曲覧に『Killing Machine』というタイトルで記載されている。
また3.は演奏者の寺内タケシ追悼として収録された。
「#プロレスQ リターンズJack」には、二代目 #タイガーマスク の入場曲を再録。プロレスQでは、基本的に同じ曲は一度しか採用しませんが、演奏している寺内タケシさんが昨年逝去されたことを受け、特別に収録しました。寺内さんの命日と三沢さんの誕生日が同じ6月18日なのも、何かのご縁でしょうか。
— キングレコード プロレス PRO-WRESTLING (@king_fop) May 22, 2022
格闘音楽大全 プロレスQ リターンズQueen(KICS-4063)
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先述の「JACK」と同時発売となった本作。「プロレスQ6 Peach」ぶりに女子プロレスをテーマを中心に選曲された。
1. 入場式のテーマ“KINGDOM”今井バージョン#2
2. 選手権試合宣言(氏家リングアナ&松永会長)
3. 横田利美のテーマ ★
4. 北村智子のテーマ ★
5. 大森ゆかりのテーマ ★
6. マミ熊野のテーマ ★
7. ナンシー久美のテーマ ★
8. ルーシー加山のテーマ ★
9. 奥村ひとみのテーマ ★
10. 池下ユミのテーマ ★
11. Last Voyager ~Strong Storm version~
12. Premian♡Girl
13. Drama ~Queens Quest version~
14. THEME OF Jd’
15. HAPPY♡HAPPY
16. ワン・ウェイ・ハート
1, 2は「Peach」からの再録。1,は一部台詞(「プロレスQ "
PEACH"」の部分など)がカットされているためか、#2となっている。
目玉は3~10のLP『女子プロレス スーパー・ファイターのテーマ』に収録された未CD化音源。今後全曲CD化できるか不透明だったという理由で、8曲分を一挙まとめて収録という大盤振る舞い。この件についてライナーノーツで小島記者は「これはもう文化遺産である」(原文ママ)と綴った。
11, 13はSTARDOMの会場限定CDのみ収録されていた貴重なテイク。
あとがき
4版世紀にわたり長い歴史を紡いできたプロレスQ。
大槻Pは制作職を離れたものの、2024年に旗揚げされた新興団体「マリーゴールド」の入場テーマ曲に携わり健在ぶりを示している。
小島記者はフリーライターとして、近年もプロレスに関する著書を出版している。
『プロレスQ』の新作については残念ながら2025年現在、動くような様子はない。
残念ながら #プロレスQ 25周年企画での商品リリースはございません。この場で、25年間を支えてくださった皆様に御礼申し上げます。
— キングレコード プロレス PRO-WRESTLING (@king_fop) October 13, 2023
「11」(2002年)、「KING」(2012年)、「JACK」&「QUEEN」(2022年)と10年間隔で発表されている「プロレスQ」シリーズ。このままいくと次作は2032年となってしまうが、そもそも本当にリリースされるのかどうか、それは誰にもわからない。もし新作が実現したら、その時はどんな選曲になるのだろうか・・・
プロレスQの問いは、今もまだ続いている。
・参考文献
清野茂樹 (1999) 「1000のプロレスレコードを持つ男 清野茂樹のプロレス音楽館」立東舎
小島和宏 (1999) 「プロレス基礎講座⑥音楽~入場テーマ曲~」,『週刊プロレス別冊 Kampfer ケンファー』初夏号, p.38, ベースボールマガジン社
小島和宏 (1999) 「プロレス・ガイド⑥音楽~プロレス入場テーマ曲~」,『週刊プロレス別冊 Kampfer ケンファー』盛夏号 vol.2, p.36-p.37, ベースボールマガジン社
・参考資料
小島和宏「格闘音楽大全 プロレスQ8時だヨ!全員集合」KING RECORDS(2000) 全曲解説
小島和宏「格闘音楽大全 プロレスQ第九」KING RECORDS(2000) 全曲解説
小島和宏「格闘音楽大全 プロレスQ10番勝負」KING RECORDS(2002) 全曲解説
小島和宏「格闘音楽大全 プロレスQ11PM」KING RECORDS(2002) 全曲解説
大槻淳「格闘音楽大全 プロレスQ KING」KING RECORDS(2012) 全曲解説
小島和宏「格闘音楽大全 プロレスQ リターンズJack」KING RECORDS(2022) 全曲解説
小島和宏「格闘音楽大全 プロレスQ リターンズQueen」KING RECORDS(2022) 全曲解説
「プロレスQ」公式HP ウェイバックマシン2001年4月13日分 https://web.archive.org/web/20010413091652/http://www.kingrecords.co.jp/kodawari/pro-wrestling/index.html(参照 2025-01-25)