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二胡をめぐる不思議な出会い

今日も不思議な出会いがあった。

時々二胡を弾きに行く河原で、ケースを開けて二胡を取り出し、調弦をしていると。

小柄な男性がニコニコしながら話しかけてきた。
年は60代から70代くらいだろうか。

「それ二胡ですよね?一曲弾いてくれませんか」

一目見てこの楽器が二胡だとわかる方は珍しい。

「よくご存知ですね」

そう言って返事をすると、その方は自分はオカリナを吹いていて、以前、二胡と合わせたことがある、という話をしてくれた。

オカリナ。
これまた、私のツボを押さえるキーワード。

実は、オカリナも、持っている。
大学生の時に先輩がチャペルで吹いていたオカリナの音色に心奪われて、真っ赤なアケタオカリーナを買った。
学生にしては奮発した覚えがある。

しかしながらちゃんと吹いたことはなく、なんとなく聖歌を2-3曲練習したくらいで、ずっと仕舞い込んでいた。

そして不思議なことに、今日、久しぶりに真っ赤なオカリナを手に取ったばかりだった。

練習に行く少し前に、なぜかこれ見よがしにケースが床に落ちていて、なんとなく蓋を開けた。
一瞬、オカリナも持って行こうかな、と迷ったが、やっぱり今日は二胡の気分、と、オカリナはお留守番。

そこにきて、オカリナを吹く男性の登場。
なんだこれは。

ひとまず調弦を終えて、「上を向いて歩こう」のさわりを弾くと、その男性はじっと聞き入り、

「いいですね」

と少し微笑みながらうなずいた。

色々お話を伺うと、小学校の図工の先生として長らく勤務し、絵描きさんでもあるらしい。
そしてオカリナは自作だと言うから驚いた。

ギリシャやイタリアを周り、絵を描いているという。
ふと彼の絵を見てみたくなり、個展はやっていますか?と聞いてみたところ、先日終了したばかりとのこと。
次の個展は秋だと言う。

残念。

その想いを素直に彼に告げると、よかったら家に絵を見にきませんか、とお誘いいただいた。
彼の吹くオカリナにも興味があったので、図々しくもお邪魔することに。

彼の車の後を着いていくと、10分ほどで自宅に到着。
2階のアトリエへ通された。

壁に飾られたグランブルーの世界のような、地中海の街を描いた風景画や、美しい色遣いの版画、無造作に置かれた陶芸作品、糸のこや木材も散らばっていて、まさに芸術家のアトリエと呼ぶにふさわしいお部屋。

コーヒーをいただきながら、音楽の話、絵画の話に花が咲く。

そしてまた、彼の奏でるオカリナの音色が実に素晴らしいのだ。
もともとオカリナの音色は大好きなのだが、間近で聞く彼のビブラートには、音と一緒に心が震えた。

もののけ姫を吹いてくださったので、「私も二胡で弾けます!」と、勢いにのってセッション。
楽しい。
私の音は相変わらずギコギコしているが、呼吸が合う瞬間がたまらない。

久しぶりに人と音を合わせる楽しさを思い出す。

そして彼は、自作の1本の白いオカリナを私に手渡し、どうぞ吹いてみてください、とおっしゃる。

えー。
まじか。
や、やっちゃう?

戸惑いは一瞬。
彼に教わりながら、D調の音階をなぞり、辿々しくエーデルワイスを吹く。

た、たのしい…

自分の唇から吐き出す息の量や、ちょっと唇をすぼめる動作で、音程が変わる。
打楽器や弦楽器ではありえない現象。

別れ際に、白いオカリナと美しい月の版画をいただいた。
今度は一緒に練習しましょう、と約束し、電話番号を交わす。

二胡をめぐる不思議な出会い。
キミはいったい、私をどこへ連れて行ってくれるのだろうか。







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パーソナルライターおくやま・ふみ
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