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じぶんものがたり〜自伝作成の現場から〜

そのお客様との出会いは、とあるカフェ。
お互い、カフェ巡りやアウトドアが好きだったこともあり、歳は少し離れていたが、色々なお話をするようになり。

本を読むのが好きな彼は、私がライターの仕事を始めたことに興味を持ってくださって、自伝作成をお手伝いすることになった。

インタビューを始めてみると、普段の当たり障りない会話の中では見えなかった彼の人柄や、若かりし頃の武勇伝がどんどんと溢れ出し、彼のストーリーに惹き込まれていった。

彼からの依頼は「自分の人生を、一つの小説として書いて欲しい」との内容だった。

この依頼を受けた時、正直に言うと私の頭の中では「面白そう!」という思いと、「私に書けるだろうか」という思いが交錯していた。

小説を書くのは好きだけれど、それは自分の心が動いた時に書くものであり、どちらかと言えば一人よがりな部分も多い。

第一、文章のタッチには好みがあり、沢山本を読んでいる方ほど「自分好みの文章」という感覚はしっかりとしているものだ。

とまぁ、色々不安はあったが、「面白そう!」が先立ち、依頼をお受けした。

まずは学生時代前編、ということで、2時間ほどのインタビューを3回。

小説として書くにあたっては、当時の時代背景を調べたり、実際の写真も見せていただいたりしながら、インタビュー録音を聞き返し、自分の中で物語を膨らませていく。

彼の場合は、小さな出来事一つ一つを鮮明に覚えており、セリフにも臨場感があったので、その部分はなるべくそのまま残した。

プラス、私の中で湧いてきた遊び心を、ほんの少し付け足して、7000文字弱の物語が完成。

ドキドキしながら第一稿をお送りすると、思いの外喜んで下さり、修正もなく一発OK。
ほっと胸を撫で下ろした瞬間である。

兎にも角にも、第一稿に対するお客さまの反応というのは、返ってくるまで落ち着かない。
時間をかけ、その方を想いながらの渾身の一作であるがゆえに、返答をいただくまでは毎回ドキドキするのだ。

彼とは今、第二作目が進行中である。
今度はただの自伝と言うよりは、メッセージ性が高い内容であり、どんな形に仕上がるのが楽しみでもある。


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