太陽光発電設備の廃棄に関するガイドライン
太陽光パネルの廃棄に際しては、一般の産業廃棄物として法令に基づき処分が義務付けられていると、以前の記事で紹介しました。
さらに太陽光発電設備の廃棄に関して各種ガイドラインが関係省庁から公表されており、発電事業者等にはこれらのガイドラインへの準拠が求められます。
今回は太陽光パネルの廃棄に関してのガイドラインを紹介していきます。
環境省によるガイドライン
環境省は使用済太陽光パネルの適正なリユース、リサイクル・処分の確保のため、『太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)』を公表しています。
環境省では固定買取価格制度が開始された後の2015年に適正処分に関する検討を進めていました。
それに引き続き、前述のガイドライン「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)」が平成28年3月に公表されています。
その後、総務省勧告(平成29年9月)や近年多発する災害等を踏まえ、埋立処分方法や有害物質に関する情報伝達、災害対応策についての内容を見直しが行われています。
本ガイドラインでは、太陽光パネルのリサイクルを実施するにあたっての事業者の責務や注意点などが規定されています。
太陽光発電設備のリサイクルの全体像
基本的な用語や太陽光パネル(太陽電池モジュール)の構造
発電事業終了後における設備の解体、廃棄に関する注意事項
準拠すべき法規等、産業廃棄物としての取扱いに関する説明
太陽光パネルのリサイクルの具体的事例
太陽光パネルのリユースに関する事項
その他関連するデータ等
また使用済太陽光パネルの有効利用としてリユースの推進が期待されていますが、リユースと称して海外への不適切な輸出の可能性や、リユース可能でも処分されるケースもあるといった問題が指摘されていました。
環境省では適切なリユースを促進するためのガイドラインを策定し、2022年5月に「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」が公表されています。
本ガイドラインでは、リユース品として流通させる場合の条件や対処すべき内容、不適正な輸出を防止などの事項が記載されています。
経済産業省(資源エネルギー庁)による法制化の動き
資源エネルギー庁においても、太陽光発電設備の計画時における「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」が公表されています。平成29年3月に初版が策定された後に改定が加えられ、現在は2022年4月に最新版が改定されています。
本ガイドラインは太陽光発電設備の企画立案から、設計・施工、運用・管理、地域との関係、そして撤去・処分に至る、設備のライフサイクル全体に関してのガイドラインとなっています。
ガイドラインの第2章第5節に、太陽光発電設備の撤去・廃棄に関して以下の内容に関して以下に定められています。
再生可能エネルギー発電設備の解体等に要する費用積立て
出力10kW以上の太陽光発電設備における、火災保険や地震保険等に加入努力義務
出力10kW未満の太陽光発電設備における、FIT後の売電計画や適切な撤去計画(必要費用)
発電設備撤去時の関係法令の遵守、廃掃法に基づく処分
前述の環境省ガイドラインの参照
自治体や地域住民との合意事項への対応
また将来に廃棄・リサイクルが実際に行われるか懸念(特に費用面)があることから、経済産業省において廃棄等費用の積立制度の議論が進み、2022年4月1日に改正の『改正再エネ特措法施行規則(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則、平成24年経済産業省令第46号)』に基づき、廃棄費用の積立制度が開始されました。
積立てに関する業務を実施に際しては、資源エネルギー庁から『廃棄等費用積立てガイドライン』が公表されています。
なお廃棄費用の外部積立制度の関しては、後日概要を紹介したいと思います。
太陽光発電協会(JPEA)による情報公開
太陽光発電に関わる事業者による業界団体である『一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)』では、太陽光発電設備を撤去・廃棄する発電事業者へ向けて、以下の情報を提供しています。
上記ガイドラインに基づき自社ウェブサイトにおいて情報提供しているとの連絡が当協会宛てにあった企業一覧
JPEAでは、廃掃法に基づき太陽光パネルを処分する際に処理業者に含有化学物質の情報提供が必要となる場合があり、パネルメーカーに対しての情報開示を推奨しています。本ガイドラインに基づき情報提供しているメーカーを確認することができます。
また太陽光パネルの適正処理が可能な産業廃棄物中間処理業者の公表もされています。
なお太陽光パネルリサイクルに関する情報サイト『PVリサイクル.com』においても、各社ホームページの確認や独自調査により太陽光パネルのリサイクルを実施している事業者を紹介しています。
最近の動向
の開発・運営を含めた課題は多く、特に地方との共生という面でも課題を抱えています。
こうした状況において、政府では2022年4月から『再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会』が開催され、現在の課題と将来への取組みが議論された後に提言案として纏められています。
引き続き『再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ』として議論が進んでおり(2022年11月時点)、廃棄やリサイクルに関しても実際の取組みに期する議論が期待されます。
地方自治体でも太陽光発電を積極的に進めるのと合わせて、廃棄・撤去時における注意喚起や独自で条例を制定するなどの動きもあります。発電事業者においては、それぞれの自治体での規制やガイドラインの確認・遵守が求められます。
東京都では戸建て住宅への太陽光パネル設置義務化と合せて撤去・廃棄の課題が議論されるなど、地域・自治体での取組みも今後進むと期待されます。
まとめ
太陽光発電設備の撤去・廃棄に関する問題意識はFIT制度が始まった後の早い段階で指摘されていました。しかし実際のガイドラインの周知が不十分だったことや廃棄費用の積立が行われていないなど、多くの課題も浮き彫りになっていました。
中間処理を行う事業者による技術開発やリサイクルシステムの構築が望まれる一方で、今後は発電事業者側も排出者責任が厳しくなると考えられます。
太陽光発電に関する制度が大きく変わる中、持続可能なシステム実現のためにはライフサイクル全体での経済性や環境負荷も考慮し、地域との共生する長期持続可能な事業運営が強く求められます。
太陽光発電事業に関わる全ての事業者が、関連法規やガイドラインを遵守することは勿論、環境や地域社会との調和が求められます。
その他の太陽光パネルのリサイクルに関する各種情報やニュースが、こちらからご覧いただけます。
参考資料
環境省:使用済再生可能エネルギー設備の検討概要
環境省:「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」について
環境省:太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドラインの策定及び意見募集(パブリックコメント)結果について
資源エネルギー庁:事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)
資源エネルギー庁:廃棄等費用積立ガイドライン(220401更新)
総務省:太陽光発電設備の廃棄処分等に関する実態調査<結果に基づく勧告>
太陽光発電協会(JPEA):適正処理・リサイクル関連情報