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地域新電力の普及がもたらす未来~浜松新電力の挑戦~

はじめに

皆さんは「地域新電力」という言葉を聞いたことがありますか?これは、地域の自治体や企業が出資して運営する電力会社のことを指します。特に再生可能エネルギー(再エネ)を主な電源とすることで、地域の脱炭素化や産業活性化を目指す取り組みとして注目を集めています。

このような取り組みの先駆けとして、浜松市にある「浜松新電力」があります。彼らの活動は、地域のエネルギー自給を目指す「地産地消」のモデルとして、他の地域にも広がる可能性を秘めています。
今回は、この浜松新電力の取り組みを通して、地域新電力の普及の必要性やそのメリットについて詳しく説明していきたいと思います。


1、浜松新電力とは?

浜松新電力は、2015年に浜松市が設立した電力会社で、全国でも政令指定都市として初の「自治体新電力」です。この会社は浜松市と地元の民間企業が共同で出資し、地域のエネルギー供給を支えるために運営されています。

電源の主力は、市内の太陽光発電所や清掃工場でのバイオマス発電(廃棄物を利用したエネルギー)です。2023年度には、約3万9000メガワット時の電力を供給しており、2030年度には約2倍の7万8000メガワット時を目指しています。このエネルギーの多くが再生可能エネルギーであることが、浜松新電力の大きな特徴です。

2、地域新電力の目指す「地産地消」とは?

地域新電力の中でも、浜松新電力は「地産地消」を強く意識しています。これは、地域内で発電された電力を地域内で消費する仕組みを指します。この取り組みにより、電力の供給と需要のバランスを地域内で完結させるだけでなく、エネルギーにかかる資金が地域から外に流出せず、地域経済の活性化にもつながります。

さらに、再生可能エネルギーを地元で生産・消費することで、脱炭素化が進むのも大きな利点です。これにより、地域全体で温室効果ガスの排出を抑え、持続可能なエネルギー体制を構築できるのです。

3、中小企業への電力供給を強化 カーボンニュートラルを支援

これまで、浜松新電力は主に公共施設向けに電力を供給してきました。2023年度の約520件の契約のうち、9割が小中学校などの公共施設です。しかし、今後は民間企業、特に中小企業への供給を拡大しようとしています。

再生可能エネルギーを活用することで、企業もカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標)に貢献できます。浜松新電力の北村武之事業部長は「カーボンニュートラルに意欲的な中小企業を中心に需要を喚起したい」と語っています。公共施設だけでなく、民間企業も巻き込んで事業を拡大し、地域経済の循環をさらに促進しようとしているのです。

4、地域新電力普及の課題と対策

しかし、地域新電力の普及には課題もあります。特に中小企業の多くは、電力コストに対してシビアです。再生可能エネルギーは通常、化石燃料由来の電力に比べて割高なため、コスト削減を重視する企業にとっては導入が難しいとされています。

そこで、浜松新電力は一般の電力会社よりも安価な料金設定を目指しています。再エネを導入することで脱炭素化を推し進めつつ、経済的な負担を軽減する工夫を進めています。北村事業部長は「より安い価格で再生可能エネルギーを提供することで、企業が持続可能なエネルギーを選びやすくなる」と語っています。

5、行政と地域の連携で脱炭素化を加速

浜松市は、市民や企業が一体となって脱炭素化を進めるために、官民連携で体制を整えてきました。これには、「知る」「測る」「減らす」という3つの段階があります。脱炭素の意義やメリットを「知る」、温暖化ガス排出量を「測る」、そして最終的に浜松新電力を通じて再エネを導入し「減らす」ことが重要です。

浜松新電力が果たす役割は、この「減らす」段階にあり、再エネを地域内で提供することで、企業や市民がカーボンニュートラルを実現するための最後のピースとなります。浜松市の鈴木久仁厚副本部長は「行政としても、地域全体の脱炭素に向けてしっかり支援していく」と述べ、地域一体となった取り組みを進めています。

6、浜松モデルの全国展開に期待

浜松新電力の取り組みは、全国的に見ても珍しい「パッケージ型の脱炭素経営支援体制」です。多くの自治体には新電力が存在せず、一気通貫で地域全体の脱炭素を支援できる体制が整っているところは少ないのが現状です。

そのため、浜松市が取り組んでいるこのモデルは「浜松モデル」として注目されています。地域新電力の普及と再エネ導入が、今後他の地域にも広がれば、日本全体での脱炭素化が一層加速するでしょう。地域でエネルギーを生産し消費するという自立的なシステムが、今後の持続可能な社会に向けた大きなステップとなることは間違いありません。

7、地域新電力を普及させるために

地域新電力の普及は、地域の持続可能な未来を実現するための鍵です。浜松新電力が示すように、再生可能エネルギーを地域で生産し、消費することで、エネルギー資金が地域内で循環し、脱炭素化が進むという大きなメリットがあります。

その一方で、コストや導入の難しさといった課題もありますが、自治体や企業、住民が一体となり協力することで、これらの課題を乗り越えていくことが可能です。地域新電力が普及し、地域のエネルギー自給率が高まれば、日本全体のエネルギー問題や環境問題の解決に向けた大きな一歩となるでしょう。

私たち一人一人も、このような取り組みに関心を持ち、地域のエネルギー選択に目を向けることが、未来を創るための大切なアクションになるはずです。


浜松新電力、中小に再エネ由来電力 地産地消で脱炭素 -
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC09C7B0Z01C24A0000000/

#地域新電力 #再生可能エネルギー #脱炭素化 #カーボンニュートラル #地産地消 #浜松モデル #中小企業支援

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