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NTT、再生可能エネルギー活用で新たな成長戦略へ

NTTが新たな経営戦略として、再生可能エネルギー(再エネ)を活用した配電事業に参入することを発表しました。この動きは、同社の主要事業である通信業が成熟期に入り、収益の拡大が難しくなっている中、新たな成長分野を模索する取り組みの一環です。2025年度を目途に全国7000カ所の通信施設を活用し、再エネの効果的な利用を目指すこの戦略について詳しく見ていきましょう。


1. 配電事業への参入とその背景

NTTはこれまで、通信インフラを軸に事業を展開してきましたが、ここ数年、通信事業は市場の成熟と競争激化により、利益率の低下が進んでいます。このような状況を背景に、NTTは通信インフラを有効活用しつつ、電力事業への参入を図っています。

2025年度には、配電事業に本格参入する計画を立てており、すでに全国に展開している約7000カ所の通信施設を活用し、蓄電池を設置していく予定です。この施設は、再生可能エネルギーの電力を貯蔵し、必要に応じて供給できる拠点として機能します。

NTTが配電事業に参入するための背景には、2022年に始まった「配電網のライセンス制度」があります。これは、電力大手が所有する配電網を異業種にも解放する制度であり、NTTは実証実験を経て、これに基づいて配電事業に進出する見通しです。認可が得られれば、NTTはこの制度の第一号事業者となります。

2. 通信施設の活用と再生エネルギーの供給拠点化

NTTが強みとしているのは、全国に広がる7000カ所の通信施設です。これらの施設は、市町村の数の約4倍に相当するほど広範囲に展開しており、山間部や過疎地にも設置されています。これらの施設を再エネ供給の拠点として活用し、地域ごとの電力需要に応じた柔軟な供給が可能となります。

蓄電池を順次設置することで、太陽光発電などの再エネを効率的に蓄電し、必要に応じて電力を供給することができます。また、災害時にも迅速な電力供給が可能となり、停電からの早期復旧を目指すことができます。特に、電力網が被災した際にNTTのシステムと蓄電池、地域の太陽光発電が連携し、電力供給を継続することができる点が注目されています。

3. 災害対策としての新たな電力供給モデル

NTTが目指すのは、災害時における電力供給の強靭化です。日本は地震や台風などの自然災害が頻発する国であり、電力供給の途絶が大きな問題となっています。2024年1月に能登半島で発生した地震では、広範囲にわたって電力が長期間途絶え、多くの家庭や施設が影響を受けました。このような状況下で、NTTは蓄電池と再エネを活用し、早期の電力復旧を可能とするモデルを構築しようとしています。

具体的には、電力会社の配電網が被災した場合に、NTTの施設で蓄えた再エネを家庭に供給し、停電の影響を最小限に抑えることができる仕組みを作ります。これにより、災害時でも安定した電力供給が可能となり、電力供給の強靭性が大幅に向上します。

4. 電力データ管理システムとスマートメーターの活用

NTTは、電力データの管理システムを大崎電気工業、NEC、三菱電機と共同で開発し、これを再エネ活用における重要な要素として位置付けています。このシステムは、新型スマートメーターを通じて電気使用量や電圧、電流をリアルタイムで見える化し、効率的な電力供給をサポートします。

たとえば、晴天時の昼間に太陽光発電の供給量が増え、配電網の容量を超える恐れがある場合、このシステムが電圧や電流の変化を予測し、余剰電力を蓄電池に充電することで、電力の無駄を抑えます。また、必要に応じて蓄電池の電力を家庭に供給することで、安定した電力供給が可能となります。

5. 電力会社へのメリットとコスト削減効果

NTTの配電事業参入は、電力会社にとっても大きなメリットをもたらします。これまで、電力会社は電力供給のために膨大なコストをかけて配電網を整備してきましたが、NTTの再エネ活用システムを導入することで、配電網の強化にかかるコストを削減できます。

たとえば、配電網の新設や強化には、数十億円という莫大な費用がかかるとされていますが、NTTの蓄電池とデータ管理システムを活用することで、その投資を抑えつつ、再エネの利用を拡大することが可能です。結果的に、これにより消費者への電気料金の転嫁が抑制され、電気代の低減にもつながると期待されています。

6. 再エネ事業への1兆円投資と中期経営計画

NTTは、再エネ事業を今後の成長分野の一つに位置付けており、2027年度までに約1兆円をこの分野に投資する計画を立てています。これは、通信事業が頭打ちとなる中で、再エネを活用した新たな事業モデルの確立を目指すものです。

NTTは、今後ますます再生可能エネルギーの需要が高まると予測しており、その分野での技術力やインフラを活用し、電力会社や自治体とも協力しながら、持続可能な社会の実現に貢献していく方針です。これにより、同社の収益基盤の多角化が図られ、安定的な成長が期待されています。

まとめ

NTTが進める再生可能エネルギーを活用した配電事業は、同社にとって新たな成長の柱となる可能性を秘めています。全国7000カ所の通信施設を活用し、蓄電池や電力データ管理システムを駆使して、地域ごとの再エネ供給を実現するこの取り組みは、災害時の電力供給の強靭化や、電気料金の抑制といった社会的課題の解決にも貢献するものです。

NTTは今後、再生可能エネルギー事業に積極的に投資を行い、通信分野に加えてエネルギー分野でも存在感を高めることが予想されます。この戦略的な取り組みが、どのように社会に影響を与えるのか、今後の展開が注目されます。

NTT、全国7000施設を再エネ蓄電拠点に 家庭に安定配電 - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC174X00X10C24A7000000/

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