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エネルギー安全保障の重要性と多様化するリスクについて考える。

日本エネルギー経済研究所専務理事である小山堅氏が述べるように、エネルギー安全保障は現代社会において極めて重要な課題となっています。近年、特に2022年のウクライナ戦争以降、国際エネルギー情勢は大きく変わり、エネルギーの安定供給確保の必要性がかつてないほど強く意識されています。

小山氏の意見をもとに、エネルギー安全保障の重要性と、そのリスクの多様化・複雑化について詳しく解説します。今後の日本や世界が直面するエネルギー問題について理解を深めるために、エネルギー転換の課題や各種リスク要因を確認していきましょう。

エネルギー安全保障の背景

エネルギー安全保障とは、エネルギーを必要な量と価格で安定的に供給することを意味します。私たちの日常生活や経済活動には、電気やガスなどのエネルギーが欠かせません。しかし、通常はその供給が当然のものとみなされ、あまり意識されないことが多いです。

ところが、エネルギー供給に危機が迫ると、その重要性が一気に表面化します。例えば、大規模な自然災害や地政学的な紛争が発生した際にエネルギー供給が不安定になると、その影響は瞬時に生活や経済に広がります。このように、エネルギーの安定供給が脅かされるリスクは常に存在しており、そのリスクが多様化しているという点が今日のエネルギー安全保障の大きな課題です。

脱炭素化とエネルギー安全保障の両立

2021年までのエネルギーに関する議論は、主に脱炭素化に集中していました。脱炭素化とは、地球温暖化対策としてCO2排出量を削減し、持続可能なエネルギー供給システムを構築することを目指すものです。再生可能エネルギーへの転換や、化石燃料からの脱却がその中心的なテーマでした。

しかし、2022年のウクライナ戦争の勃発をきっかけに、エネルギー問題は再び「安定供給」という観点で見直されることになりました。これは、戦争によるエネルギー供給の混乱や、国際的なエネルギー市場の不安定化が原因です。今後、脱炭素化とエネルギー安全保障をどのように両立させていくかが、極めて重要な課題となります。

多様化するエネルギーリスク

地政学リスク

エネルギー安全保障における最も伝統的なリスクの一つは、地政学リスクです。特に、日本はエネルギーの大部分を中東から輸入しており、中東の政治的な不安定さは日本のエネルギー供給に直接的な影響を及ぼします。中東情勢やウクライナの紛争など、国際的な紛争や不安定な地域は、日本にとって今後も引き続き大きなリスク要因となるでしょう。

自然災害と異常気象

近年、異常気象の頻発や激甚災害の増加もエネルギー供給に影響を与えています。地震、台風、豪雨などの自然災害は、電力やガスの供給網に甚大な被害をもたらす可能性があります。さらに、気候変動に伴う異常気象も供給網に影響を及ぼし、これまで以上にリスク管理が求められています。

サイバー攻撃

現代のエネルギー供給は高度にデジタル化されており、そのシステムに対するサイバー攻撃も大きなリスクとして浮上しています。サイバー攻撃によって、エネルギー供給網に大規模な障害が発生する可能性があり、これもエネルギー安全保障を脅かす要因の一つです。インフラのデジタル化が進む中で、こうしたリスクに対する備えが今後ますます重要となるでしょう。

国家政策の変更

エネルギー市場は各国の政策に大きく左右されるため、突発的な国家政策の変更もエネルギーリスクの一つです。特に、エネルギー資源の輸出国が突然方針を変更することで、国際市場に影響を及ぼすケースがあります。アメリカの大統領選挙なども、エネルギー市場の安定性に影響を与える可能性があります。

エネルギー転換のプロセスとリスク

エネルギー安全保障に関連する長期的な課題として、エネルギー転換のプロセスがあります。脱炭素化を進めるためには、再生可能エネルギーや原子力といった代替エネルギー源への移行が不可欠ですが、その過程で新たなリスクが生じる可能性があります。

化石燃料への投資不足

エネルギー転換の過程では、化石燃料への投資が減少することが予想されます。しかし、脱炭素化が進む一方で、化石燃料の需要が急に減少するわけではなく、必要な投資が行われないことで、需給が逼迫し、価格が高騰するリスクがあります。この「投資不足」のリスクは、短期的なエネルギー供給に悪影響を与える可能性があるため、慎重な対応が必要です。

重要鉱物の供給リスク

再生可能エネルギーや電気自動車の普及には、リチウムやコバルト、ニッケルなどの重要鉱物が欠かせません。これらの鉱物は一部の国に集中しており、特に中国に対する依存が高まっている状況です。特定国への依存はエネルギー安全保障のリスクを高める要因であり、将来的な供給不足や価格上昇のリスクも考慮する必要があります。

日本に求められるエネルギー戦略

現在、日本ではエネルギー基本計画の見直しが進んでいますが、エネルギー安全保障の観点からは、複雑化・多様化するリスクに対応した新しい総合的な戦略が求められています。エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立を目指しつつ、多様なリスクに備えるための対策を講じることが必要です。

例えば、再生可能エネルギーの導入促進や、サイバー攻撃に対する対策強化、重要鉱物の供給源多様化といった具体的な施策が考えられます。また、エネルギーインフラの耐災害性向上や、新しい技術の導入による電力供給の安定化も重要な課題となります。

まとめ

エネルギー安全保障は、今後の世界や日本にとって極めて重要な課題であり、そのリスクは多様化・複雑化しています。小山堅氏が指摘するように、私たちはこれまでの地政学リスクや自然災害、サイバー攻撃、国家政策の変更など、多岐にわたるリスクに対処しながら、脱炭素化との両立を図っていく必要があります。

今後のエネルギー転換の成否は、安定供給と持続可能な発展の両立にかかっており、日本においても新しいエネルギー戦略の策定が求められます。私たち一人ひとりがエネルギー問題に対する理解を深め、持続可能な未来を目指すために、これからの取り組みに注目していくことが重要です。

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エネルギー安全保障、リスクが多様化 小山堅氏 - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD022100S4A900C2000000/

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