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ハーブキャンディーとポップコーンの事例から学ぶ!中小企業や農家が取り組む商品開発のヒントとは

中小企業や農家が商品開発に成功するためには、どのようなアプローチが必要でしょうか?ここでは、日本の中小企業や農家がニッチ市場で成功を収めた2つの事例を紹介し、それぞれの商品開発の過程から学べるポイントを考察します。大企業と異なるアプローチで、限られたリソースを活用して独自の商品を生み出し、消費者に新たな価値を提供する方法に注目していきます。


1. 中小企業の強みを活かしたハーブキャンディーの開発

国産原料にこだわった商品づくり

岐阜県大垣市の菓子メーカー、栄光堂ファクトリーは、国産のハーブを使ったキャンディーを開発し、成功を収めました。栄光堂ホールディングスの鈴木伝CEOは、「国産の原料には限りがあるので大量生産はできないが、だからこそ中小企業にチャンスがある」と語っています。つまり、大手が取り組みにくいニッチな市場で競争力を発揮するためには、国産の希少な素材を活用することが一つの鍵となるのです。

栄光堂ファクトリーが開発したのは、ローズマリーとレモングラスを原料にしたハーブキャンディー。それぞれのハーブには「リフレッシュ」と「リラックス」のコンセプトが込められており、消費者に癒しや爽快感を提供する商品として市場に出されました。

商品開発の苦労と試行錯誤

ハーブキャンディーの開発は簡単なものではありませんでした。まず、ハーブから精油を抽出し、それをキャンディーに適した形で使用するという工程に多くの課題がありました。蒸留器を使ってハーブから精油を抽出する際、味と香りがしっかりとキャンディーに残るようにするために、多くの試作品を作成する必要がありました。

その結果、ローズマリーとレモングラスという2つのハーブが、最適な風味と香りをもたらすことが判明しました。しかし、10キロのハーブを蒸留しても、わずか20〜30グラムしか精油が取れないという非常に効率の悪いプロセスです。それでも、中小企業ならではの柔軟性を活かして少量生産に特化し、国産の希少な素材を使った商品として差別化を図りました。

国産素材へのさらなるこだわり

栄光堂は商品開発の過程で、ハーブだけでなく、砂糖や水あめといった他の原料も国産に切り替えることに挑戦しました。砂糖は北海道のテンサイ、水あめは鹿児島のサツマイモと北海道のジャガイモを使用しています。これは、取引先のバイヤーから「すべて国産なら買いたい」という提案を受けての決断でした。ここからも、中小企業が持つ「柔軟な対応力」が重要な要素であることがわかります。

2. 農家発のポップコーン開発

6次産業化の成功例としての前田農産食品

次に紹介するのは、北海道十勝地方の農家、前田農産食品が手がけるポップコーンです。6次産業化が叫ばれる中で、成功事例は少ないと言われていますが、前田農産食品はその数少ない成功例のひとつです。前田農産は、トウモロコシの「爆裂種」というポップコーン用の品種を栽培し、家庭で簡単に作れるポップコーン商品を開発しました。

失敗と挑戦から生まれたポップコーン

ポップコーンの開発には多くの困難が伴いました。1年目にはトウモロコシがうまく育たず、翌年には栽培は成功したものの、加工段階でサクサクとした食感が得られませんでした。この問題は、トウモロコシの乾燥方法を改良することで克服されました。さらに、ポップコーン製造用の機械がうまく動作しなかったため、米国から技術者を呼び、設定を調整してもらうという対応を行いました。

商品の独自性を追求

ポップコーンの味付けにも大きな工夫がありました。うま塩味を開発する際、全国各地から塩を取り寄せ、試作を重ねました。その結果、まろやかで優しい味わいを持つ塩を採用し、消費者に受け入れられる商品が完成しました。また、2023年には新たにキャラメル味を発売しましたが、この開発でも焦げ付きの問題を解決するために多くの試行錯誤がありました。大学との共同研究により、原料の種類や配分を最適化し、キャラメル味も商品化に成功しました。

独自ブランドを築くための努力

前田農産食品は、単に原料を売るだけでなく、最終製品まで自社で製造することで、独自のブランドを築いています。農家としての強みを活かし、消費者に直接商品を届けることで、高い付加価値を提供しています。特に、家庭で簡単に作れるという利便性や、北海道の自然の恵みを活かした原材料へのこだわりが、消費者から高い評価を得ています。

3. 成功のためのポイントとは?

ニッチ市場への特化

これらの事例から、中小企業や農家が成功するためには、ニッチ市場への特化が重要であることがわかります。大手企業が手を出しにくい、希少な原料や地域特有の素材を活用することで、他にはない商品を開発できるのです。

柔軟な対応力

もう一つの成功要因は、柔軟な対応力です。市場の声を素早く取り入れ、消費者や取引先の要望に応じた商品開発を行うことで、独自の強みを発揮することができます。栄光堂の例でも、バイヤーの提案に応じて全て国産素材に切り替える決断が成功を後押ししました。

品質へのこだわりと試行錯誤

また、品質への徹底的なこだわりも大切です。前田農産食品のポップコーン開発においても、塩の選定や焦げ付き防止の工夫など、商品が完成するまでに多くの試行錯誤がありました。このように、最終的な品質を高めるためには、多くの時間と労力をかけて課題を克服する必要があります。

4. おわりに

中小企業や農家が商品開発で成功するためには、大手と異なるアプローチで独自の市場を開拓し、消費者に新たな価値を提供することが求められます。ニッチ市場への特化、柔軟な対応力、そして品質へのこだわりが、その成功を支える重要な要素です。

ここで紹介した2つの事例は、限られたリソースを活かしながらも、試行錯誤を繰り返し、高品質な商品を生み出した好例です。中小企業や農家にとって、このようなアプローチは、自社の強みを最大限に活かし、競争力を保ちながら成長するための有効な手段となるでしょう。

国産原料ハーブキャンディー、中小が支える菓子の多様さ -
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH2713M0X20C24A9000000/


農家が開発したポップコーン、試作重ねたキャラメル味 編集委員 吉田 忠則 -
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH188DV0Y4A910C2000000/


#商品開発 #中小企業 #農業 #国産素材 #6次産業化

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