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再生可能エネルギーの鍵を握る!資源エネルギー庁が検討する系統用蓄電池の収益性と未来
再生可能エネルギーの普及が進む中、その安定的な利用を支える重要な技術である「蓄電システム」。今回は、資源エネルギー庁が開催する「定置用蓄電システム普及拡大検討会」で議論された内容に基づき、特に系統用蓄電池とその収益性に焦点を当てた深掘りを行います。蓄電池が果たすべき役割と今後の可能性について、一緒に考えてみましょう。
蓄電システムが求められる理由
再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入が進む一方で、太陽光や風力といった変動性の高い電源は、発電量が天候や季節に左右されるという課題を抱えています。再エネの大量導入により電力需給のバランス調整が難しくなる中、調整力の確保が電力システムの安定性を保つ上で重要なテーマとなっています。
その調整力を提供する鍵として、蓄電池は火力発電や揚水発電に代わる新たな選択肢として注目されています。特に系統用蓄電池は、需要のピーク時や供給過剰時に電力を貯蔵・放出し、電力の需給バランスを維持する重要な役割を担います。
資源エネルギー庁が主導する取り組み
2024年度に開催された第4回「定置用蓄電システム普及拡大検討会」では、系統用蓄電システムの需給調整市場での役割や収益性が議論されました。この検討会は、蓄電システムの普及拡大を目指し、その技術的・経済的課題を明らかにし、解決策を模索する場として設けられています。
需給調整市場における系統用蓄電池の現状
需給調整市場は、電力の需要と供給をリアルタイムで調整するための市場です。この市場において、系統用蓄電池は以下の3つの役割を果たします。
供給力の提供
蓄電池は電力供給が不足した場合に放電を行い、供給力として機能します。調整力の提供
再エネの出力変動を緩和するため、電力の充放電を繰り返します。需給緩和
電力需要が高まる時間帯を避けて充電し、需要の分散を図ります。
これらの役割を果たす中で、蓄電池の導入量は急増しています。2024年9月時点で、接続検討が進む蓄電池は8,800万kW、接続契約済みが620万kWと、需要の増加が顕著です。
系統用蓄電池の収益性分析
検討会で示された収益性試算では、蓄電池の収益性は以下の要因に大きく左右されるとされています。
応札価格
需給調整市場における応札価格が高いほど収益性は向上します。特に現時点では、蓄電池の応札価格は火力発電よりも高い水準(28~39円/ΔkW・h)で推移しており、高収益が期待されています。建設費用(CAPEX)
収益性向上のためには、蓄電池の建設コストを低く抑えることが求められます。現状では1ブロック/日あたりの運用で収益を確保するために、建設コストを3万円/kWh以下に抑える必要があると試算されています。運用条件
1日の応札ブロック数(充放電の回数)や落札率などが収益性に大きく影響します。
家庭用・産業用蓄電池との比較
家庭用や産業用の蓄電池もまた、再エネの普及を支える重要な役割を果たしています。それぞれのコスト構造や導入目的を以下に示します。
家庭用蓄電池
屋根置き太陽光発電との併用が主流で、電気料金の削減が目的。2023年度のコストは11.1万円/kWh。産業用蓄電池
工場などでのピークカットや自家消費の最大化が目的。2023年度のコストは9.2万円/kWhで、系統用に比べ低コストだが、容量が小規模。
新たな可能性、長期エネルギー貯蔵技術(LDES)
LDESは、系統用蓄電池を補完する技術として期待されています。この技術は、より低コストで長時間の電力貯蔵を可能にします。例えば、圧縮空気や液化空気を利用したシステムは、資源制約が小さく、耐用年数が長いという利点があります。
2030年を見据えた試算では、LDESはリチウムイオン電池に比べ、長時間放電でのコスト競争力が高いとされています。日本国内では、これらの技術の商業化に向けた検討が進められています。
今後の課題と展望
蓄電システムの普及には、技術革新や市場環境の整備が不可欠です。特に以下の課題が挙げられます。
制度の見直し
需給調整市場の仕組みを改善し、蓄電池がより活躍できる場を広げる。コスト削減
建設費用や運用コストをさらに引き下げる技術開発。長時間運転の推進
LDESなどの新技術を活用し、より安定的なエネルギー供給を実現。
資源エネルギー庁や関係機関が主導するこうした取り組みが、脱炭素社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。
皆さまのご意見やコメントをお待ちしています。一緒に未来を支える蓄電システムの可能性を考えていきましょう!
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