見出し画像

7 妻の体調不良が許せない

 妊娠10か月に入った頃のことです。ある日「どうしてもついてきてほしい」ということで、夫の用事に電車で同行することになりました。電車は満員で、吊革につかまって立っていると、突然息ができないほどの痛みがおなかと背中に走り、うずくまりそうになりました。

妊婦の体調よりも周囲の視線を気にする

 吐き気もし、背中を丸めて耐えました。普通は「大丈夫?」と声をかけてもおかしくない状況です。しかし夫は何も言いません。倒れる前にこのまま床に座ろうか、やばい・・・と考えていると夫が私に言いました。

モラ夫「その姿勢はずかしいよ。まっすぐ立ってよ」
「お腹が…」
モラ夫「だからまっすぐ立ってって言ってるやろ」
「倒れそう。助けて…」
モラ夫「はーっ(ため息)こんなところで言われても。大丈夫やって家で言ってたやろ」
「もう無理、立てない…降りる」

 停車駅でよろよろとホームに降り、ベンチに座りこみました。血の気が引いて吐き気がし、猫背になって深く息をして耐えました。すると不機嫌そうな声がしました。顔を見なくても、眉間に皺を寄せているのがわかります。

モラ夫「こんなんじゃ行けるわけない。どうするん?帰ろっか?」
「…」
苦しくて判断も返事もできるわけがありません。電車を3本ほど見送ったところで徐々に息ができるようになり、声を絞り出しました。


「あなた一人で行ってくれる?ごめんね。私ひとりで帰る」
モラ夫「はぁー(大きくため息)。連れて行くって約束したのになんなん。帰るなら全部キャンセルだ。あーあ」


 そして結局、私が「大丈夫。良くなったから行こう」と言うまで、「じゃあどうするの?お前のせいで遅刻決定。行くのか、行かないのか、どっち?」を繰り返すだけでした。どうするのか聞いている割には、「行く」と言うまで繰り返すのです。帰るという選択肢はないようでした。

 急に体調不良になるのが妊婦ではないのか。心配という言葉を知らないのか。だいたい用事に同行して欲しがったのは夫の方だ。と言いたいことはありましたが、反論する元気はなく(具合悪いので当然です)、しばらく休んで、同行しました。
 赤ちゃんに何ごともなくて本当に良かったです。具合悪そうにしたり、元気なさそうにすることを元夫は本当に嫌いました。例え本当に具合が悪くても例外はありません。

数年後、命の危険を感じる 

 体調不良の妻を心配できない、という特徴は危険です。モラハラ被害者の多くが経験しているくらい、よくあることです。私は仕事復帰後も、フルタイムで働き、家事育児もほぼ夫の協力を得られない日々の中、年2,3回は腹痛と貧血とで気を失って倒れました。特に仕事が忙しい時期に、急に意識を失うことが多かったように思います。その度に元夫は私に酷い言葉をかけました。倒れるときの大きな音から気づかないはずはないのに、放置されすぎて命の危険を感じたこともあります。それも何度も。

 気を失っていたのか、気づいたら床に倒れている時がありました。幸いその時は、子どもたちが異変に気付いてくれて、遊びに来ている義母(遊びに来ているのに夫は何にも言わないのです)に「おばあちゃん!ママが!トイレで倒れてる!」と大騒ぎして、夫がようやく様子を見に来る、ということがありました。

 普段は小さな物音でも「うるさい」と別室から注意するような人が、気づかないわけはないのです。今では、あれは意図的に放置したのだと確信しています。貧血(おそらく)だからよかったものの、脳卒中だったら、心筋梗塞だったら?と思うと殺意まで感じます。また後日、その時の詳細について触れる予定です。

友人の前では上機嫌

 新居には、よく夫の友人たちが訪ねてきました。私は産休に入り、一人で一日中家にいたので、久しぶりに大人たちと話ができるのを楽しみにしていました。夫の大切な人は私の大切な人でもあります。夫は、友人たちの前では、上機嫌です。家では聞いたこともないような明るい声で笑います。満面の笑みを浮かべて楽しそうに話をします。二人でいる時は、どちらかというと無口な方なので落差に驚きましたが、機嫌がいい夫を見るのが単純に嬉しかったのです。
 これは、モラハラ加害者にある外面の良さの典型です。その後、友人とは大声で電話をしたり、あひゃひゃひゃ!とハイテンションな声で笑ったりするのに、私や子どもたちが物音を立てると「うるさい、近所迷惑やからやめて」と注意してきました。かるた遊びをしていても、「そんなん床に響くからやめとき」と不機嫌そうに言い、「パパも一緒に遊ぼうよ」と子どもたちが誘っても絶対に参加しませんでした。そういう風に少しずつエスカレートしていきました。

次回に続きます
 


いいなと思ったら応援しよう!

ぷうぷうちゃん
よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは出版費用に当てたいと思います。すこしでも世の中のモラルハラスメント 被害者の参考になれば嬉しいです!