企画開発サプリ #4
こんばんは。このマガジンも何とか4+1まで続けてこれて嬉しいです。引き続き、今回も誰かの役に立つような記事が書ければと思います。
そんな訳で今回はより実践的な部分についてお話出来ればと思います。
キャラクターライセンスとは???
玩具開発において、醍醐味であり同時に避けて通ることは難しいこの「キャラクターライセンス」について、皆さんはご存じでしょうか?
カップラーメンのパッケージや書籍などで見かける「〇〇が監修!」的な謳い文句があると思います。
これは一体どういうことなのでしょうか?
監修とはブランドの責任を負うという事
メーカーは自社の商品に魅力を追加するため、外部の会社、ブランド、商品とコラボレーションすることは、このマガジンを読まれている方ならご理解いただけると思います。その際、ブランドを提供(貸出)し、その対価としてロイヤルティを得る事がライセンスビジネスの簡単な仕組みです。
その際に「元あるブランドやキャラクターのイメージ、価値、デザインなどを正確に、ポジティブに伝える事が出来ているか」をチェックする事が、監修の主な目的です。
つまり、監修をしているということはその商品を作ったメーカーだけではなく、監修した会社(及び個人)にもその責任があるという事です。
消費者としては「知らない会社の知らない商品」を買うよりも「有名な誰かがちゃんとチェックした太鼓判の押された商品」を求めることは必然ですよね。私自身も消費者としては、多くの場合後者を選ぶでしょう。
まとめると、メーカー及び監修者がその責任において消費者との信頼を約束することが「監修」です。
キャラクターライセンスの1,2,3
それではキャラクタービジネスにおいてのライセンス、監修とはどういった事なのでしょうか?実際の業務の流れに合わせて解説していきたいと思います。
まずはこのイラストをご覧ください。
ご存じピカチュウが2体並んでいます。ただし、どうやら右のピカチュウは怪しそうですね。さて、監修としてはどのような部分がチェックされるのでしょうか?上記のイラストでは3か所、間違いがあります。
いかがでしょうか?
それでは答え合わせです。
①キャラクターの色が違う
これは誰でも分かりやすいのですが、右のピカチュウは赤みが強いですね。パッと見で分かるのですが、商品を生産するメーカー側としてはとても気を付けるところです。フィギュアなどの商品開発においては色見本となるサンプルに合わせて調色、彩色、印刷をしていくのですが、生産工場の調色の技術、使う素材などに合わせて、100%合わせることは意外と難しいのです。しかし、監修する側としてはとても重要なポイントなので、納得出来るレベルになるまで、何度でも修正と確認が行われます。
②縮尺が違う
これも比較的分かりやすく加工してみましたが、いかがでしょうか?右のピカチュウもどきは「少し縦に長い」ことにお気づきでしょうか?これも、紙製品への印刷であれば比較的調整がしやすいですが、フィギュアの場合は素材となるPVCの収縮率の調整など、作る側も監修する側も見落とし易い部分です。
③左右が反転している
最後のこのポイントですが、消費者目線ではかなり気付き難い違いですが、キャラクターとしては大きな違いです。キャラクターの商品化用イラストというのは、基本的には左右反転はNGです。「反転したほうが、自社商品のPKGの形に合っているんだけど…」などの考えが浮かびますが、例えば以下のイラストを見てみましょう。
一見、どちらもミニオンズのボブに見えます。しかし、左右反転することで大きな違いが生まれてしまいます。ボブにおいてそれは「目の色」です。
このキャラクターは愛らしいフォルムの他に「オッドアイ」(左右で目の色が違う)という特徴を持っています。ですので左右反転してしまった場合はボブに良く似た違うキャラクターになってしまいます。キャラクターを大切に育てている監修元、またキャラクターを愛しているファンとしては大変な間違いですね。この「左右反転」は作る側においては十分に注意すべき点であり、監修においては比較的早い段階で指摘されることが多いですが、稀に全てのチェックをスルーしてしまい、そのまま商品になっていることもあるので心掛けておくと良いでしょう。
ピカチュウにおいてもしっぽの模様や目の光沢など、左右反転してしまいデザインが崩れることは変わりません。
このようにイラスト一つを扱うにしても、様々にチェックするポイントがあります。しかし、全てのメーカーが同じイラストで商品を作ってしまったのでは面白くありませんね。ですので、各メーカーは決められた制限の中で新しいコンセプトやポーズを監修者に提案し、監修を行い、両者(両社)の合意の元で新しい商品を作っていくことになります。
監修は思っているより大変!
上記で、イラストやフィギュアの監修の主な目的はご理解いただけたでしょうか?ただ、商品がこの世に生まれるまではまだまだ沢山の工程があります。ざっと書き出してみると…
①企画提案
②版権交渉
③商品化権許諾契約
④商品化用素材の受け渡し
⑤商品デザインの監修
⑥パッケージデザインの監修
⑦生産サンプルの監修
⑧輸入許諾書の作成
⑨商品受注書、商談資料の作成
⑩広告などプロモーション内容の監修
なんて業務があります。1商品につきこれだけの業務が監修者との間に発生することは是非覚えていただければ幸いです。そして同時にメーカーとしては工場との調整業務も数多く発生することになります。
商品開発は生みの苦しみ
会社の規模にもよりますがカプセルトイにおいては上記のようなタスクを同時に10商品分動かす時もあります。時間配分をしっかり行わないと、とてもこなせる業務量ではありませんね。ですので以前にも少し書きましたが企画開発の仕事を行う上でマルチタスクのスキルはとても重要となります。時には起きている時間全てを企画開発に捧げるようなこともありますが、やはり商品が消費者の手元に届いた時の喜びは、営業職や経理職よりも大きいと私は思いますので、是非頑張っていただきたいです。
今回は、監修についてお話させていただきました。
次回は、課題解決についてお話出来ればと思います。
ありがとうございました。