邪心 三
私は彼女に
感謝してもしきれない程の
『恩』を受けていた
一生かかっても返し切れない程の
『恩』…
私を縛り付ける『恩』
『恩』は『怨』へと変わり『鬼』と化す
恩
怨
鬼
人の心の冷酷さを
自分自信で思い知るとは…
再開からずいぶん時は経ち
彼女への思いは
薄れたように感じていた
ただ
彼女からの連絡は以前より増え
そのたびに
鬼は私の中で
密かに成長していた
私は鬼の成長を恐れ
彼女との連絡を断つ
それが彼女のためだと
彼女を守る唯一の方法だと
知っているから
だが
彼女は私に近付こうとする
私の中に
諦めという言葉がちらつき出した
私に気付かれぬように
ひっそりと鳴りを潜め
鬼は密やかに成長を続ける
鬼が増幅している事に
気付かぬはずもなく
鬼が時を待っている事も
伝わっていた
恐らくは
最悪の結果が待っている
『時』
その時は
呆気なく訪れる