よく分からんけど好きなモノシリーズその1

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Two4 / John Cage

普段音楽を聴いていると、音楽にはウンザリだけど音楽が聴きたいという訳の分からない状態へと落ち入る時がある。そういう時は大抵ヘンな音楽に落ち着くというのが自分のパターンで、このケージ晩年のナンバーピースであるTwo4はなかなかにヘンな音楽で、大変落ち着く。

このナンバーピースのシリーズは作曲のバリエーションが色々とあり、演奏盤もそこそこリリースされており、私が持っている上記mode盤による一連のシリーズはユニオンの現代音楽のコーナーとかを見ればたぶん見つかるんじゃなかろうか、他にもたぶんwergo盤とか。

このTwo4は2人の演奏者のための4番目の作曲作品らしく(まぁ、詳しいことはググってくれ...)、バイオリンと笙(orピアノ)の為の作品で、このアルバムも1トラックがバイオリンと笙、2トラックがバイオリンとピアノで、それぞれが30分程の演奏時間になっている。

内容はというと、バイオリンの弦に弓がただ擦れてるとしか思えない静謐な音が断続的にドローンのように流れる中で、トラック1では笙の垂直的な音が、トラック2ではピアノの点描的な音が浮かび上がり消えていく、としか説明のしようがない、というか実際それ以外に特に何も起こらない、好意的な言い方をすれば非常にストイックな内容になっている。演奏というよりかはどこか作業的で即物的な印象が強い。ギターの弦を摘んで弾いたら音がした、ぐらいに原始的で初源的なものに感じてしまうのは私がトーシローだからなのかな。

実際のところ、私はケージの音楽が大好きって訳でもないのだけど、この作品に関しては万感の思いを込めて大好きと言っていいアルバムで、繰り返しになるが「音楽が必要だけど音楽はいらない」というアンビバレンツな心理状態になった時によく聴く。

人間にウンザリしているときに良かれと思ってるとおぼしき他人がベタベタと接して来た時ほど、鬱陶しいことはないが、そうではない何かとてもささやかで押し付けがましさのない思いやりみたいなものはいたく心に染み入る。なんとなく、そういうものと似たような作用なのかなと思ったりもする。

特に私はこれを深夜、敢えて音量を絞って寝る時にかける。気持ちいいとかそういう単純なことではないけど、特に言葉語らずとも気まずい雰囲気にならない友達といる時のなんとなく安心感のある空間のような、例えるならばそんな感じだろうか。

なお、ケージが作曲に笙を用いた作品は他にもTwo3などがあり、そちらも秀逸。特にwergoから出ている、アコーディオンと笙の組み合わせによる演奏盤は音同士のぶつかり合いがダブにも似た空間の歪みを生み出しており絶品である。しかし、こちらはチトうるさいかな。

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