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【サウナ】なぜ高い位置に排気口が設置されている施設が多いのか

以前、サウナの換気計画について解説しましたが、日本とフィンランドでの排気口の位置に違いがあることに気づき、ずっと疑問を感じていました。フィンランド式サウナでは「排気口はベンチ下に設置」が基本ですが、日本の多くのサウナ施設では排気口が壁面の高い位置にあります。どちらが正しいのか、そしてその理由について考察してみました。


正しい排気口の設置はどこ?

「日本のサウナの考え方」を確認する上で参考になるのは日本サウナ・スパ協会の「サウナ・スパプロフェッショナル」資格の公式テキストになります。こちらを確認したところ、実は排気口の位置はベンチ下が推奨されています。てっきり、高い位置に設置することを推奨していて、その考え方について記載があると思っていたのですが、意外なことにフィンランド式サウナの考え方と一致していました。しかしなぜ日本のサウナ施設では高い位置に排気口が設置されているケースが多いのでしょうか?

高い位置に排気口を設けるとどうなるか

排気口が高い位置にあると、せっかくの新鮮な空気が天井付近を流れ、排出されてしまいます。また、室内の汚れた空気が循環し、空気が清浄化されないまま滞留します。公式テキストにも「汚染された空気が排出されず、清浄化が進まない」と書かれており、適切な換気が行われないことで湿度や匂いに影響を及ぼす可能性があると指摘されています。

高い位置に排気口を設ける理由の推察

これだけ高い位置に排気口を設置している施設が多いと、あたかもそれが正しいかのように勘違いしてしまいそうです。謎は深まるばかりですが、テキストの中で少しだけそれに触れている部分がありましたので引用させていただきます。

現状はサウナストーンに水をかけないサウナが多いようですおそらく、サウナ室の管理の問題からと思われますが、換気量が不足する場合には、排気口の位置をある程度高くしなければいけません。給気口はストーブの裏側に床上20〜30cm、排気口は給気口の対面に床上170〜190cmくらいの高さに設け自然換気しているサウナが多く見られます

サウナ・スパプロフェッショナル 公式テキスト

具体的な数値の記載がありますが、これは「こういう位置に設置している施設が多い」という話をしているだけで基準値を示しているわけではありません。また、「換気量が不足しないように高くしている」というのは一般的な居室における考え方です。最終的にはこういったサウナが「多く見受けられます」と締めくくっていることから、客観的に推察しているだけだということが太字の部分から読み取ることができます。

これらを要約しますと、日本では排気口を高い位置に設置している施設が多いですが「汚染空気が排出されなかったり、せっかく温められた空気がそのまま排出されてしまうというデメリットがあります」ということになります。

なぜ誤解が広まったのか?

以下は私の推測ですが、なぜこんなにも誤った考え?がなぜ普及してしまったのかを考えてみました。

一般的な換気の考え方が応用された

一般的な居室における換気計画では「給気は下、排気は上」という考え方があります。第一次サウナブームでサウナ施設が一気に増えた時、換気をどのようにするのがベストなのかがわからず、居室と同じ考え方がサウナにも適用された可能性があります。

今までこれでやってきたから

これまでのやり方に疑問も持たずに前例を踏襲していったということも大いに考えられます。既存の設計がそのまま引き継がれたとも考えられます。
いかにも日本らしい理由ですね(実際のところは分かりませんが)。他の施設ではこうだったから。今までずっとこれでやってきたから。それで問題になってないから。そしてそのやり方が多くを占めることで、それが「正解」になってしまったとも考えられます。

低い位置につけることができなかった

日本ではベンチにスカート(垂直部分のカバー的な仕上げ)を設置することが多いです。サウナ室でどこにデザインを表現するか?という意味では壁や天井、サウナストーブの他、ベンチというのは一つの大きな要素です。ベンチ下が丸見えになっているのは意匠的にイマイチと思い、スカートを設置して意匠性を高めることは多々あります。

フィンランド式サウナの書籍を読むと、そのほとんどがスカート無しです。なぜなら、メンテナンスや空気の循環など、機能面が優先されるからです。掃除がしやすいし、古くなったら交換もしやすい。ベンチ下の空間を空けるのはもちろんのこと、壁とベンチとの間にも通気層を設けることが推奨されています。それくらい空気の循環と清潔感(メンテナンス性)が重要視されています。

話を戻すと、スカートを設置すると空気が通りません。意匠性を優先し、壁面の高い位置に排気口を設置する。こういう考えもあるかもしれませんが、きっとそこまで考えて排気口の位置を検討する人は稀でしょう。

低い位置に設置するのが良いということが後からわかった

時系列まで確認は取れなかったのですが、「ベンチ下に設置した方が良い」ということがわかったのが、サウナ施設が普及したずっと後だった。これが一番腑に落ちるかもしれません。
サウナを作る上での必読書「サウナを作ろう」(著・沼尻良)にも、「多くのサウナにおいて、排気口を天井近くにもってくるという誤りが見かけけられます」という記載があります。出版された1992年当時からすでに「誤りである」ことが指摘されていたにもかかわらず、いまだにそれが正しい考え方に覆らないのも不思議な話です。

まとめ

今回は「排気口の位置」について考察して、ベンチ下に設置することが正しいということがはっきりしました。こうして記事にまとめることで、ずっとモヤモヤしていた疑問も明確にすることができました。排気口はベンチ下、これ一択です。

参考文献

サウナ・スパプロフェッショナル公式テキスト/公益社団法人 日本サウナ・スパ協会
( https://sauna.or.jp/professional/ )


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