LOCUS GEARのKhufuは山岳テント足り得るのか その3<耐候編>
続きものだよ。
<その1>で挙げた疑問点のうち、今回は太字2つについてです。
「岩岩のテン場でちゃんと固定できるか心配」「風が強い時はどうするの…」「強い雨の時はどうなっちゃうの…」「冬山って寒くないの…?」
「風が強い時はどうするの…」
Khufuは<スカート>なるものが存在しないため、基本的に隙間風ビュービューです。
台風一過の北アルプス。濡れ物を乾かすためにわざと背高めに設営して、隙間を多く取っている。
夏の北アルプスの稜線。標高が高いからさぞ涼しい……いや暑いです。遮蔽物が全くない稜線テン場の場合『標高を上げた分、太陽に近づいている』ので、直射日光を食らえばトンデモナイ暑さになります。
そのような場合、通気性の高いKhufuは比較的快適に過ごすことが可能です。言ってしまえば<大きな日傘>のような物ですからね。
でも問題は風がビュービュー吹いている時です。問題点は2つ。1つはそもそも<強風に耐えられるのか>、2つは<幕内に風が入り込まないのか>です。
<強風に耐えられるのか>
夏山の稜線で想定される<風>というのは、強くて10-20 m/s程度でしょうか。
ではそれ相当の風が吹いていた時の動画をご紹介します。2019年7月20日。場所は白馬岳の稜線にある白馬岳頂上宿舎のテン場です。
ご覧の通り、しっかりと張られたKhufuは微動だにしておりません。他のドームテントはフライシートをバタバタさせ、青いダンロップなんかは今にも飛んでしまいそうです。
<強風に耐えられるのか>という疑問に対しては『張綱含めてしっかり確保したKhufuは、一般的なドームテント以上の耐風性を有する』という回答になります。
しかもコチラの白馬岳頂上宿舎は<その1>で「最もKhufuが張りにくかったテン場」として紹介しています。
この時は設営時から強風だったので、尚更しっかり確保するために手間取った点もあります。一方で石やらなんやらを駆使してガッチリ確保したKhufuは、極めて強い耐風性を発揮してくれました。
<幕内に風が入り込まないのか>
幕体が風に耐えられるといっても、中の人が風に耐えられなければ意味がありません。
コチラの写真は👆の動画から抜粋したものです。
設営時から既に強風だったので、最初からKhufuを地面スレスレに設営しています。また風上側の隙間にはそこら辺の小石を集めて、なるべく隙間風が入り込まないようにしました。
Khufuのポールは主にトレッキングポールを用いますが、長さ調整が容易なのでこのように隙間を最低限にして設営することが可能です。
この日の気温は約10℃。この風は結局夜明けまで吹き続けています。途中、風と共に横殴りの雨を叩きつけられた時間もありました。
そんな中で睡眠道具はペラペラタイベックシート+ペラペラマット+ペラペラ化繊シュラフ。
で、結局一度も目覚めることなく熟睡できました。
<幕体に風が入り込まないのか>という疑問に対しては、『設営の工夫次第で風の影響は最低限にすることが可能』という回答になります。
Khufuは最適解か
ここまで『ちゃんと張れば風にめっちゃ強い』『工夫次第で風は凌げる』とKhufuを絶賛してきました。
上記では白馬岳頂上宿舎での事例を主に挙げましたが、その他の悪天候下でKhufuを設営してきた経験を総合しても、概ね同じ結論に至ります。
ではKhufuは悪天候時のテントとして最適解と言えるのでしょうか。
答えは『No』です。
山岳地帯において悪天候時の安全性を重視するのであれば、重厚な生地を有するダブルウォールテントが最適解です。具体的にはMSR、エスパース(カモシカのテント)、ヒルバーグなどの<堅牢性>をウリにしているテントです。
これらのテントは重量や構造的な結露問題といった課題はあるものの、<堅牢性>という観点からは何より安心感があります。
一方でKhufuの主たる所は<超軽量><シンプル構造>であり、そこに<堅牢性>が付属している、と捉えるのが良いと思います。
つまりグリーンシーズンにおけるKhufuは『多様な環境に耐えうるポテンシャルを有する、超軽量山岳テント』という表現が適切であると感じます。
次回予告
さて、残る項目はあと一つ。
「岩岩のテン場でちゃんと固定できるか心配」「風が強い時はどうするの…」「強い雨の時はどうなっちゃうの…」「冬山って寒くないの…?」
冬山におけるKhufuの活用についてです。
冬山は少し特殊で「寒くないの…?」以外にも、Khufuーというよりフロアレス特有の諸々があります。次回はその辺りをじっくり語りたいと思います。